3年生のHKゼミナールは、1週間1時間半2コマ、半年1学期30回の授業で4単位に過ぎませんが、これからの大学生活の中では、極めて重要な位置を占めています。まさに、これで自分の進路、就職が決まるといっても過言ではありません。
進路就職には、部活動、サークル、アルバイトなど大学時代に時間をかけた経験がものをいいますが、その主軸やベースとなるのは、大学で学んだ自分の専門分野です。これを欠いてしまえば、大学生あるいは大卒とは言えないからです。
学びには、地道な勉強や広く深い知識が求められますが、これはなかなか自分のものにはできません。なぜなら窮屈で退屈で楽しい時があまりないのが勉強だからです。ですが、これを乗り越えて、社会人や会社のスタッフよりも少しは勝っている、分かっている、ということが表現できれば、自信がついて、どんな分野の進路就職でもついてくるのです。なるほど、こんなことも知ってるとはしっかりしている、俺にもできないこんな経験をしてきたのか、といった具合に相手が感心してくれれば、自分の専門を認めさせることができます。相手が納得してくれれば、進路就職の道も大きくひらかれます。
そのためには、自分の専門とする分野で働く人たちに聞き取りをしたり、その現場を訪問・見学したりするフィールド調査が役に立ちます。鳥飼ゼミでは、ゼミナール1だけでも、環境保全施設(下水浄化場、清掃工場など)、環境配慮型工場(ゼロエミッション工業団地、メガソーラーなど)から被差別者の住む国立療養所など6-7カ所を毎年訪問、聞き取り調査をしています。また、夏季休業を利用して、4-5泊程度のフィリピン(あるいは中国、韓国)研修を実施し、スラム、地方自治体、診療所、保育園、NPO、環境保全施設、大学で住民、行政マン、大学生、農家に聞き取りをしています。このような経験は、一流の社会人でも滅多にできないことで、大学生のうちにフィールド調査の経験を積むことは、忘れられないインパクトを持って、皆さんのやる気や能力を引き出してくれます。
残念ながら、新たな挑戦を恐れ、日常のマンネリの中で居続ける学生も少なくありません。機会もあり、資力もあるのに「外」で出て「非日常」を経験するのを億劫がっているようです。楽に過ごしたいなら、レポートを引き写し、ほどほどに受講してもOKかもしれません。卒業するだけなら卒論以外それほどの難しいことではないようです。しかし、卒業単位のために大学生活の4年間を無為に過ごすのは、青春とお金の無駄遣いです。人生最高の時が、数百万円がその程度で使い切るというこです。それよりも、大切な時とお金を積極的な活動やインパクトのある経験に使い、それを通して学び、自分の思いを叶える進路就職、人に巡り合うというのが理想です。
就職・進路は学生にとって大きい問題ですが、会社に合わせて自分の学びをする、能力を高める、のではありません。自分のやりたいこと、自分の能力を生かせる場、自分が少しでもかかわりたいこと、を目指す進路が理想です。その結果、三菱東京銀行、三井住友銀行、東京海上火災、JR東海、小田急鉄道、トヨタのような世界的大企業を選んだ卒業生もいれば、市役所、県警、警視庁、農協、学校教員、動物愛護協会のような公的な仕事を選ぶ人もいます。早稲田、筑波、法政、杏林、東海など大学院に進学した人もいます。好きな音楽・料理、ゲーム・インターネットデザインなど様々な選択があってよいと思います。
全国の環境施設、福祉施設、大企業の工場をコミュニケーション力を使って訪問する約束を取り付け、そこの専門家や入所者に聞き取りをした学生たちの力と経験は、とても得難いものです。さらに、大企業や国際機関の専門家でも訪れることのできないスラムに行き、住民に話を聞いて、家に招いてもらえれば、これはもはや東大生でも不可能なことなのです。こういった鳥飼ゼミの独自の取柄は、決して有名大企業や公務員になったり、有名大学大学院に進学するためのものではありません。自分だけの立身出世を目指すのでhなく、隣人や他の人の心配をしてあげられる思いやりと余裕が得られれば、十分だと思います。自分がどのよう進路を選ぶのか自分で決められる、こんな最高の自由が与えられている境遇に感謝です。
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