マニラのリサイクル
Recycle
マニラ首都圏パヤタス
Payatas, Metro Manila
2002年2月、メトロマニラにあるケソン市 (Quezon City )は2010年には人口200万人以上。ここのパヤタスには10年前から大規模な廃棄物最終処分場があり、スラム街があった。パヤタス ごみ集積場の周囲には、トタン板に囲まれたスラム街が形成されていた。そこには、ジャンクショップ(屑屋)が並び、その前をごみ運搬ダンプカー がごみを搬入しいた。
ケソン市 パヤタスのスラム街。有価物のガラス瓶や金属などを収集するスカベンジャー居住区が、ごみ山の中にも拡張されている。ごみが風で飛ばされ、雨で流され、非衛生な場所となっている。
最終処分場は、10mもごみの山が堆積し、台地のようになっている。その周囲に、住宅が広がっている。ごみ運搬ダンプカー はスラムの道を、ダンピング・サイトに向かう。道に停車しているのは、屑屋の有価物回収車のようだった。
2002年2月、マニラ首都圏 (Metro Manila )ケソン市パヤタスの廃棄物最終処分場への通り道。 ごみの中から有価物を収集するのが、スカベンジャー (scavenger )の仕事。スカベンジャーの収集した有価物を分別回収するのが、屑屋 (Junk shop :ジャンクショップ)。 スカベンジャー+ジャンクショップ(屑屋)=リサイクル。 ごみ運搬トラックが通ると、有価物をたくさん含んだ新しいごみの山が着たことがわかる。
マニラ首都圏 (Metro Manila )東部、ケソン市パヤタス廃棄物最終処分場(ごみ捨て場:ダンピングサイト)。ごみの山は、足元が不安定で崩れやすい。その上、針やガラス片など、危険なものが隠れているので、簡単には進めない。また、ごみ山は周囲以上に悪臭が充満している。2011年には、ごみ山の周囲は鉄柵で囲まれ、斜面も盛り土で固められ、草木が覆っている。居住区も完全に分離されたために、このような景観は見ることはできない。
2002年2月、フィリピン Philippinesマニラ首都圏 に位置するケソン市Quezon Cityのパヤタス(Payatas )廃棄物処分場とそこに入り込んだスクオッター (squatter :不法占拠者)の家屋。ごみの中から有価物を収集するスカベンジャー (scavenger )や有価物を買い取る屑屋(ジャンクショップ)の家が多い。2002年には、廃棄物処分場の周囲に柵がなかったが、2011年には柵で囲われ勝手に入ることはできないようになっていた
ケソン市パヤタス
Payatas, Quezon City
2002年2月、ケソン市 (人口220万人)のパヤタス(Payatas )。廃棄物処分場の出入り口近くにスカベンジャー (scavenger )が収集した段ボールの束、ベットなど有価物が集められている。「誰かが置いた有価物」は尊重され、盗まれたりはしない。公園はないので、このような場所が子供たちの遊び場となっている。
マニラ首都圏パヤタスごみ処分場の地図:南のリテックからジープニー (Jeepney )がらパヤタス(Payatas )まで運行している。スラム街にジプニーが通っているのは、たくさんの住民が暮らし、需要があるためである。
パヤタスの有価物運搬作業 Payatas, Quezon City
スカベンジャー (scavenger )が、プラスチック繊維の大袋(昔の麻袋)に有価物を収集し、それをジャンクショップに運搬している。後方のトタンで囲われた場所もジャンクショップ。スカベンジャーが有価物を売りに行く先のジャンクショップは、いつも同じ店の時が多い。取引関係は安定的なようだ。
2002年2月、マニラ首都圏 ケソン市東部に位置するパヤタス(Payatas )。空き缶など金属の容器を集めて、ジャンクショップに売りに行く児童スカベンジャー (child scavenger )。 マニラ首都圏のケソン市 (Quezon City )パヤタスでは、ジャンクショップ(屑屋)が有価物を買い取る。そして、人手を使って、分別リサイクルする。
パヤタス(Payatas )で、有価物の入った大袋かつぐスカベンジャー 。収集している有価物は,金属,紙類,プラスチック類など多様である。屑屋はそれを再分類して買い取り、圧縮、半加工して、再生工場にトラックで運搬する。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分なため、自ら仕事を生み出す「起業」が当たり前で、これが草の根民活といわれる所以である。
2002年2月、ケソン市パヤタス 廃棄物最終処分場(ごみ集積場)では,5〜6歳のフィリピン児童 もスカベンジャーとして,屑屋に有価物を売却し小銭を稼いでいる。ごみ山は、非衛生であり、可燃物、爆発物、有害物質など危険なごみ もあり、病気や傷害を負いやすい。けれども貧しければ、お菓子を買ったり、日用品を買ったりするために、小銭を稼ぐことが必要になる。
パヤタスダンピングサイト
Payatas Dumping Site
マニラ首都圏 (Metro Manila )パヤタス 最終処分場ゲート近くで、ごみとして出された廃棄物から、空き缶 などの有価物を収集してたスカベンジャー。これからジャンクショップに売りに行く。 政府による社会保障給付費 も受け取れず、生活保護支給 もない状況で、スラム 住民が自ら働き、収入を得る道を進んでいる。 2011年現在、このメインゲートには柵ができて、出入り口も舗装されて、ごみ山とは見えないように花壇や緑で覆われている。出入り口付近のジャンクショップ仮小屋、住居も撤去されている。
2002年2月、ケソン市パヤタス (Payatas )ごみ集積場の入り口:ここからダンプカーでゴミを搬入する。不正規居住者(Informal Settlers )のスカベンジャーもここから入ってくる場合が多い。ごみ運搬ダンプカー 出入り口には、空き缶 をごみ運搬トラック やダンプカーでつぶしてもらうように置いてある。打ち捨ててあるのではなく、空き缶を集めたスカベンジャーの占有物である。
日本では空き缶をつぶすのに、電動空き缶つぶし機械 を使っている。 奥にあるバラック の多くは、廃棄物最終処分場の周りにあるジャンクショップ(屑屋)の仮小屋で、居住区ではない。
ごみ捨て場の競争
Scavengers working
2002年2月、マニラ首都圏パヤタス 廃棄物最終処分場に新しいゴミがごみ運搬トラック やダンプで搬入されると、待機していたスカベンジャー (scavenger )が有価物を収集しようと集まってくる。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分であれば、貧しい住民の中には、やむを得ずスカベンジャーを職とするしかないし、不法占拠者となる場合もある。
パヤタス 廃棄物最終処分場のダンピングサイト(ごみ捨て場)。ゴミ運搬用のダンプカーが到着すると、不正規居住者(Informal Settlers )のスカベンジャーが集まってくる。高価な有価物を収集しようと、作業中のごみ運搬ダンプカー に乗込む者もいる。 2002年2月、マニラ首都圏にあるパヤタスごみ処分場周囲にはスラムが広がり、ごみ処分場の中にも、有価物を買い取る「屑屋」の仮小屋が点在している。写真の左のテント小屋がそれである。回収した有価物を屑屋に運搬し,売却して生計を立てるスカベンジャーたちがたくさん見受けられる。2011年現在、スカベンジャーの出入りは原則禁止で、サイト内のスラムバラック も撤去されている。
2002年2月、マニラ首都圏ケソン市パヤタスのごみ集積場に到着したごみ運搬ダンプカー 周囲あつまる不正規居住者(Informal Settlers )のスカベンジャー。スクオッター (squatter :不法占拠者)のバラックに住んでいるスカベンジャーにとって、有価物の収集は貴重な現金収入をもたらす労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いるビジネスである。 パヤタスでは出入り口にある管理者に出入りを決める権限はない。事前に承諾を得る必要がある。パヤタスでは、スカベンジャーの集まるダンピングサイトだけでなく、周辺のスラムでも教育・衛生施設を訪問し、あわせて住民に聞き取り調査を行った。
2002年2月、パヤタスのごみ処分場にごみ運搬ダンプカー が到着するや否や、スカベンジャーたちが荷台に乗り込む。高価な中古品を真っ先に見つけるためである。中古品は、処分場周囲に建てられたスクオッター (squatter :不法占拠者)のスラムバラックで利用されたり、売却されたりする。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス廃棄物最終処分場。この周囲に広がっているスラム からスカベンジャーがやってきて、ごみ運搬車の搬入する新しいごみから、有価物を収集する。家具や電化製品なども交じっているので、ダンプの荷台にいち早く上り探している。これは、労働集約的技術 (labor-intensive industry )である。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス ごみ捨て場。新着の新しいゴミには、若者、子供など元気のいい男性が殺到する。再利用できるものを探そうと、大急ぎでごみをかき回すので、危険な作業である。マニラの富裕層が捨てたものを手に入れるためには、リスクを冒さなければならない。 労働集約的リサイクル産業 は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術しかないと批判されることが多い。しかし、現代の日本で大学生の就職先がサービス業に限定され、ものづくり・製造業の現場での雇用がほとんどない現状に思い至れば、このような発想が単純すぎることがわかる。技術は、簡単化すれば、資本=労働比率(労働の資本装備率)で表すことができ、それは資本レンタル=賃金比率という要素相対価格で決まってくる。高賃金国では、資本節約的技術(労働節約的技術)が、低賃金国では労働集約的技術(資本節約的技術)が採用される傾向がある。
有価物の回収
Recycling
マニラ首都圏ケソン市パヤタス 処分場のスカベンジャー。リサイクルは、資本節約的技術 (capital-saving technology )を必要とする。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分であり、老人ホーム入居の機会も生活資金も得ることができない。そこで、高齢者も貧困者も働くしかないのである。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス ダンピングサイトで有価物を収集するスカベンジャー。 カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、資本主義の本質は、「資本(capital)が無限に自己増殖する価値運動である」とし労働価値説 に基づき、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 して、資本蓄積をすすめるとの論理を展開した。ゴミから有価物を収集するスカベンジャーは、賃金雇用労働者ではなく、資本の論理 に直接従っているわけではない。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス 処分場では、スカベンジャーが有価物をリサイクル施設(屑屋)に売るために、探して収集している。 政府による社会保障給付費 も受け取れず、生活保護支給額 もゼロであるからこそ、スラム に草の根民活が発達する。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のスカベンジャー。廃棄物処分場周囲のスラム街 には、分別回収リサイクル施設が沢山ある。
政府による社会保障 も生活保護 も不十分であるからこそ、民活は粘り強い。
マニラ首都圏パヤタスのスカベンジャー。彼らは、ごみ捨て場周辺のスラム に暮らしている。トタン屋根 (Corrugated iron roof )の簡易バラックが彼らの住居である。貧しい人々が、有価物を収集して暮らしているのは、工場労働者、会社員など正規雇用の機会が乏しく、就職困難なためである。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスラム街 から、スカベンジャーが集まって有価物を収集する。
殺傷物、可燃物、爆発物、有害物質など危険なごみ を含む廃棄物の山の中で、靴はおろか、草履しかはいていない子供たちもいる。スラムの住宅は、コンクリートブロックの二階建ての家屋もあるが、施工から見て、自分たちで建築したもの。マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスラム地区 は、排水路 の末端にあり、排水貯水池のような窪地で、住んでいる住民がいなかった。そこで、不法占拠者がここに仮ごしらえの住居を建築した。それが恒常的な居住地となった。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分であっても、住宅が広がってゆく。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスラム地区 のスカベンジャー。排水路 はないので、ごみ山は崩れやすい。大雨でどじゃ崩れが起きたこともある。ここに仮ごしらえの住居を建築した不法占拠者の居住地となり、住居も次第に増えているようだ。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス 廃棄物処分場で有価物を収集するごみ拾い。 このようなリサイクル業は、農村家内工業 、工場制手工業 など封建制度から資本主義が形成されるまで過渡期に生まれた資本主義、すなわち初期資本主義 (early capitalism)の状況と対比できる。そこで見られる労働集約的産業 は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術しかないと批判されることが多い。しかし、現代の日本で大学生の就職先がサービス業に限定され、ものづくり・製造業の現場での雇用がほとんどない現状に思い至れば、このような発想が単純すぎることがわかる。技術は、簡単化すれば、資本=労働比率(労働の資本装備率)で表すことができ、それは資本レンタル=賃金比率という要素相対価格で決まってくる。高賃金国では、資本節約的技術(労働節約的技術)が、低賃金国では労働集約的技術(資本節約的技術)が採用される傾向がある。
マニラ首都圏パヤタスで有価物を収集するスカベンジャーは労働集約的技術 (labor-intensive technology )を用いている。スラム のトタン屋根 (Corrugated iron roof )に住んでいるのであろうか。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスカベンジャーの仕事は、労働集約的産業 (labor-intensive industry )で力仕事はあまりないために、高齢者や子供も従事している。スラム街 を見下ろすようなごみ山の台地で働く。有価物を回収するといっても、悪臭が充満し、毒物、爆発物、病原体など危険物 もあるゴミ処分場での労働は、悪条件を厭わないことが要求される。
子供スカベンジャー Child labor
マニラ首都圏ケソン市パヤタス 廃棄物処分場で有価物を探して集める子供スカベンジャー 。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分であるからこそ、スラム ではリサイクル小規模事業=草の根民活の動きがある。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス 処分場ダンピングサイトの子供スカベンジャー 。新しいゴミが到着する場所に有価物が多いので、スカベンジャーが集まってくる
リサイクル業は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化しており、従来は、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 に向けて生産されていた。
パヤタスのスカベンジャーの児童労働 。ごみ拾いは、露店と並んで都市インフォーマル部門 (urban informal sector )の主な生業である。会社に雇用されていなければ、お金を稼ぐために都市インフォーマル部門 (urban informal sector )に雇用機会を見出すしかない。
パヤタス のスラム で「ゴミ拾い」をする子供スカベンジャー 。ゴミ山の中から、有価物を探すことは、労働集約的技術 (labor-intensive technology )である。ダンプカーは、スラムを通ってゴミを集積場に搬入する。有価物の回収・運搬車もあるが、ダンピング・サイト の中には入れないので、有価物を回収する大きな袋を持っている。
パヤタスのスラム の子供スカベンジャー 。フィリピンには、300万人の児童労働 があるが、多くは農業、それも家族の手伝いである。しかし、スラム街 でのごみ拾いは、労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる都市インフォーマル部門となる。 批判するのは容易だが、政府による社会保障 も生活保護 も不十分であれば、子供でも働き工夫しなくては生活できない。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスラムバラック 。フィリピン児童 はヘッドランプ の付いたヘルメットを被っている。これは,夕方になり暗い時間にやってくるダンプカーが投棄する有価物を探すため。家電製品としては、テレビ、電気洗濯機、電子釜などがある。多くは、ごみとして捨てられたものを回収すればリサイクル品 とりて売ることもできる。 日本で家電リサイクル法 によって、廃棄時にリサイクル料金 が賦課されるのとは異なって、フィリピンでは、古い家電製品は無料で捨てることができる。それを再利用する消費者も多い。
1978年スカベンジャー garbage-dump
1978年のマニラ市 のごみ捨て場。マニラ湾岸トンド のスモーキーマウンテン (Smokey Mountain )と思われる。A group of poor boys in Manila collecting useable articles at a city garbage-dump. 1978 Manila, Philippines Photo # 149478、United Nations Photo引用。
スラムの特徴として高失業率 があげられるが、これは正確な表現ではない。なぜならスラム住民で、正規の工場労働者、サラリーマン はきわめて少なく、多くは自らが仕事を作り出している状況にあるからである。
1978年のマニラ市のごみ捨て場のスカベンジャー 。遠方にマニラ湾が見えるので、マニラ市トンド のスモーキーマウンテン(Smokey Mountain )と思われる。A young boy looking for treasures in a garbage-dump in Manila. 1978 Manila, Philippines Photo # 149479、United Nations Photo引用。
スラム街の居住者を中心に貧困者が、少ない元手で自営的に零細な仕事を起こしているのが、都市インフォーマル部門 である。具体的には、食品など材料を安く買って加工したり、小さな袋に分けたりして、露店で売る転売、路上で客を待つ靴磨きや荷物運び、商店やタクシーやバスの客引き、駐車する車の番人など、さまざまな職を自ら生み出している。この特徴は、小規模な元手で行う自営的サービス業という点であり、高失業率 といった主に会社の正規雇用を念頭に置いた概念で図ることはできない。
1978年のMaynila のごみ捨て場で有価物収集に従事するスカベンジャー 。労働集約的産業 の児童労働従事者といえる。A young boy collecting useable items at a garbage-dump in Manila. 1978 Manila, Philippines Photo # 149498、United Nations Photo引用。
スラム街の特徴は、都市インフォーマル部門 程度しか雇用機会を提供できないという貧困であるが、だからといって「犯罪や麻薬 、アルコール依存症や自殺などが多発する」というのも誤解である。開発途上国でなくとも、非衛生的な環境であれば、病気、伝染病が蔓延するが、だからと言って、スラム住民が強盗や盗人 に成り下がるということは言えない。
屑屋による有価物の買い取り Junk Shop
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの屑屋 (Junk shop:ジャンクショップ )。屑屋の女性が、少年(スカベンジャー)に有価物の代価を支払ったところ。
パヤタスの屑屋 (Junk shop:ジャンクショップ )では,鉄屑,鉛,アルミニウム,各種プラスチックなどを買い取る。その時に重量を図るのに使う小型のバネ式計量器。屑屋も労働集約的技術 を用いる。
政府による社会保障 も生活保護 も不十分であっても、人々は労働集約的技術 (labor-intensive technology )を用いて工夫して働いている。作業工程が手作業であり、機械化していないことをもって「遅れている技術」とする見解は、豊富な低賃金の労働供給がある開発途上国の労働市場を無視しており、非合理的であるだけでなく、ビジネス感覚が欠如している。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスのジャンクショップ (屑屋)とそこに鉄屑を売却した代金を受け取る少女(右)。金属,アルミニウム,各種プラスチックを買い取るが、この1kg当たりの買い取り単価が,右上奥の段ボール製の看板に掲示してある。
パヤタスの屑屋 (Junk shop)。聞き取り調査に快く応じていただいた。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス の屑屋 (Junk shop :ジャンクショップ)。右は、フィリピン児童 (スカベンジャー)の拾ってきた空き缶を計量している若者(屑屋)。廃棄物の中には、殺傷物(針、カミソリ、ガラス片)、可燃物、爆発物(ボンベ、火薬)、有害物質(水銀、強酸、亜鉛)など危険なごみ もあリ、子供たちはその危険にさらされている。 政府による社会保障 も生活保護 も不十分であるからこそ、スラム では草の根民活の動きが主流になる。
児童労働
Child Labour
マニラ首都圏ケソン市パヤタスにおけるマテリアル・リサイクルは、貧困層が労働集約的技術をもって担っている。子供たちも児童労働は、教育に生涯となるが、貧困層としては、灰頻回s痛で小銭を稼ぐのも生活の糧の一部となる。
開発途上国のリサイクル産業は、労働集約的産業 は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術しかないと批判されることが多い。しかし、現代の日本で大学生の就職先がサービス業に限定され、ものづくり・製造業の現場での雇用がほとんどない現状に思い至れば、このような発想が単純すぎることがわかる。技術は、簡単化すれば、資本=労働比率(労働の資本装備率)で表すことができ、それは資本レンタル=賃金比率という要素相対価格で決まってくる。高賃金国では、資本節約的技術(労働節約的技術)が、低賃金国では労働集約的技術(資本節約的技術)が採用される傾向がある。
PETボトル回収
PET bottle
マニラ首都圏ケソン市パヤタス の有価物PETボトル回収 の屑屋は、このようなトラックで、分別回収したPETを再生工場 に運搬、売却する。屑鉄など廃棄物の再資源化は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化したリサイクル業が担っている。
PETボトルは、スカベンジャーから、買い取る。重量によるので、リサイクル業者 の家(作業所)には、台秤が置かれている。リサイクル業者 は、トラックでPETボトルを工場に運搬、売却する。このような労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いるリサイクル産業の雇用吸収力は大きい。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル回収の屑屋。これは労働集約的技術 (labor-intensive technology )をもった労働集約的産業である。
PETボトル回収施設
PET bottle
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル 回収の屑屋。PETボトルのラップカバー を剥がすなど、半加工する労働集約的技術 (labor-intensive industry )。
カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、資本主義の本質は、「資本(capital)が無限に自己増殖する価値運動である」とし労働価値説 に基づき、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 して、資本蓄積をすすめるとの論理を展開した。スラム街のリサイクル産業に、資本の論理 が成立しているであろうか?
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル 回収の屑屋では、機械装置ではなく、手作業、すなわち労働集約的技術 によって徹底的な分別リサイクルが可能になっている。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス の
PTEボトル 回収の屑屋。分別は、低賃金を活用した労働集約的技術 に依存している。貧困がリサイクルを可能にし、再生資源、中古・リサイクル商品の需要 を生み出しているといえる。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル回収 の屑屋における技術は、労働集約的 。日本でリサイクル経費が掛かるのは、高賃金なためともいえる。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス の労働集約的産業作業 のPTEボトル回収屑屋。中古・リサイクル商品の需要 が大きいために、手間をかけて分別し、再生資源として売却することが可能になっている。日本では、リサイクル品・再生資源の需要 が小さく、リサイクルは進んでも、それを国内市場で消化できず、開発途上国に「ごみ輸出 」している。
マニラ首都圏ケソン市PTEボトル回収 の屑屋。PETボトルを収集、運搬してきたスカベンジャーから買い取るときに使う計量器具 。労働集約的技術 (labor-intensive technology )をもったリサイクル業で、作業工程が手作業であり、機械化していないことをもって「遅れている技術」とする見解は、豊富な低賃金の労働供給がある開発途上国の労働市場を無視しており、非合理的であるだけでなく、ビジネス感覚が欠如している。
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル回収 の屑屋で聞き取り調査を行った。このような開発途上国リサイクル業は労働集約的技術 を用いており、農村家内工業 と対比すべき、旺盛な労働需要が特徴である。
マニラ首都圏ケソン市PTEボトル回収 の屑屋。ここでPETボトルの半加工・運搬をするリサイクル業者で聞き取り調査を行ったところ、PETボトルを半加工するのに、一人親父さん(赤いシャツ)を賃金労働者 として雇っていることが分かった。 このような開発途上国の民営リサイクル産業は、労働集約的技術 、資本節約的技術 (capital-saving technology )を採用しており、男女が従事できる仕事として、最貧困層にとって重要な雇用機会となっている。
労働集約的技術は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術であると「安易な文明論」は批判している。しかし、開発途上国の就業構造やや日本で大学生の就職先を考えてみれば、雇用吸収力や雇用機会を度外視したこのような安易な発想が誤りであるとがわかる。
PTEボトル回収 の半加工・運搬をするリサイクル業者で聞き取り調査を行った。みんな親切に教えてくれる。このような開発途上国のリサイクル産業は、農村家内工業 と同じく労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いるで、雇用吸収力は旺盛である。
飲料水の供給
Water Supply
マニラ首都圏ケソン市パヤタス飲料水 販売施設。ここでは、飲料水 を低所得層向けに安価に販売する。 1867年カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、投下労働量に応じて商品価値が決まるとする労働価値説 (labour theory of value)を提唱した。そして、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 を搾取して、資本蓄積を永遠に続けるという資本の論理論 を展開した。マニラ首都圏のスラム住民の多くは、賃金労働者ではなく、搾取 されているワーキングプア でもないといえるであろうか?
マニラ首都圏ケソン市飲料水 供給施設。飲料水ボトル を買って運ぶ少年。
キリスト教会の支援で,給水 施設が整備された。このスラムには,小学校も作られ,運営にされている。JICAの援助も始まっているが,それより以前から,地元のNGOの支援活動が行われていることに留意すべきであろう。
初等教育
Educcation
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校 の授業風景。
キリスト教会の支援で,給水施設に加えて、小学校 が整備された。この小学校の先生は、町から通っているが、交通費とわずかな給与を支給されているボランティアである。地元のNGOの活動は活発である
マニラ首都圏ケソン市スクオッター (squatter :不法占拠者)のバラックが集まるパヤタスのスラムでも小学校 が運営されている。
マニラ首都圏ケソン市 パヤタスの小学校 。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校 。フィリピンでは、初等教育は小学校6年制。中等教育は、日本でいう「中学校」はなく、高校(日本の旧制中学に相当)。
小学校 は、教会の支援で整備されてはいるが、小学校教員の自発的な取り組みも評価できる。つまり、学校のクラス運営、教材研究、教室整備などは、教員が中心になっている。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校 。先生の数に制約があるため、1・2年生、3・4年生、5・6年生の複式学級。合計3クラス運用されている。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校 。熱心な先生の下、貧しいけれども、子供たちは勉強に取り組んでいる。
校舎は、平屋で30m離れて2棟ある。運動場や図書館などはない。教室は3クラスで、複式学級で運営されている。
2002年、マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校。2011年現在、パヤタスには大きな小学校もできている。
パヤタスの小学校 の子供たちの笑顔は明るいが、3クラスしかない状況では、パヤタスの子供たちへの教育施設としては不十分である。
パヤタスの小学校 校舎は、平屋で30m離れて2棟ある。運動場や図書館などはない。教室は3クラスで、複式学級で運営されている。
マニラ首都圏ケソン市パヤタスの小学校
大学 University
マニラ首都圏ケソン市パヤタス のPTEボトル回収の屑屋で聞き取り調査を行った。カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、資本主義の本質は、「資本(capital)が無限に自己増殖する価値運動である」とし労働価値説 に基づき、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 して、資本蓄積をすすめるとの論理を展開した。パヤタスのスカベンジャーやジャンクショップは、労働集約的技術 、非賃金雇用、個人経営を特徴としており、資本の論理 が直接支配しているわけではない。
◆当研究室へのご訪問ありがとうございます。このサイトは,2004年7月21日開設ですが、2011年11月にリニューアルいたしました。それ以来、 名の訪問者があります。ここでは,フィリピン共和国メトロマニラの廃棄物処分場パヤタスで,2002年2月に撮影した写真をもとに,都市インフォーマル部門の資源再利用・廃棄物リサイクルを紹介しました。その他の写真は,写真解説一覧 からリンクしてください。Thank you for visiting our web site. The online information includes original research papers some original photos. The users, who transcribed thses materials, are requested to cite the URL of this site, if they wish to reproduce them from TORIKAI LAB. This project is being carried out entirely by Torikai Yukihiro, who is web archive maintainer.
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