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◆中国河南省農村の生活とバイオマスエネルギー
1.【地球温暖化】【地球観測】【熱帯林減少】【生物多様性】【廃棄物問題】【国際協力】【人口問題】などを研究しています。
2.2003年2月,中華人民共和国河南省のエネルギーと農村生活を調査しました。河南省は、中国で最も農業が盛んな地域で人口8000万人。州都郑州市鄭州:チェンツォウ)から西に70kmの古都「開封市(开封市)」(カイフェン)郊外の農村黄河堤が調査地です。
その他の写真は、写真解説一覧中国のバイオマスエネルギーフィリピンの薪採取などをご覧ください。
開封市

 Kaifun


開封城市 开封市(開封市)は総人口480万人,市区人口80万人,総面積6444平方キロメートル、市区面積362平方キロメートル。市には、5県(县)五区がある。開封市に限らず、中国の地方都市では、まだ人力車が現役で活躍している。 開封城市
开封市(Kaifeng)の市街地でも、大八車で練炭を引く人によく出会う。調理、給湯、暖房のために、練炭や薪炭は重要なエネルギーであり、特に都市では、火力が強く運搬容易な炭が普及している。練炭は、主に石炭から製造される。
開封城市
开封市(開封市)城壁。灌木地帯となっているが、これは公園整備と並んで、エネルギー供給上の実用的な意味がある。
開封城市
11世紀、北宋時代に建立された開宝寺鉄塔(瑠璃塔)は、塔を取り巻く外壁のレンガが鉄製に見えるので、开封铁塔呼ばれる。「鉄塔」は、900年余りの歴史を持ち、1961年国務院が全国重要文化財に認定。鉄塔は13階、高さ55m。


河南省開封市の地図
堆肥作り

Grazing


肥やし
堆肥を集めている。後方には藁(わら)が山積みになっている。バイオマスが、農村の重要な資源となっていることがわかる。 肥やしを運搬し、薪を運ぶのには、荷車(大八車)を使う。
柴
農家の軒先には、バイオマス燃料や肥やしとなる農業廃棄物が、山と積まれている。
福建省でも同じような光景を見つけた日本写真家が、日本の農村でも昔は見ることができた風景として懐かしんでいる。問題は、その用途である。
薪の集積
各農家が、軒先を利用して、荷車で肥やしを運搬し、堆肥作りをしている。
「シバ」を集めるといっても、保管する場所が必要になる。乾燥している場所では、野外に野積みにしている。伝統的なバイオマスエネルギーの利用には、手間だけでなく、空間も必要になる。
河南省農村

 Levee

 
黄河堤の子ども
黄河堤村の小学校から帰宅する子どもたち。ここは、黄河の一番外側の堤防の上。 黄河堤
もっとも外側にある黄河堤。坂道で自転車荷車を押すのを手伝っている村人。ここからは、川の様子を見ることはできない。川まで農地が続いている。
黄河堤の交通・運搬手段

 Communication

 
柴運搬
黄河堤で最も普及している運搬手段は、 人力の荷車である。堆肥を運搬している。後方のオートバイも二人乗りで人員輸送。個人で営業するバイク・タクシーとして多用されている。

 
黄河バイク
黄河堤村では、乗用車はほとんど全く見かけないが、農作業用のバイクトラックは散見される。

 
黄河
黄河堤村のメインストリート。トラクターが、農業廃棄物を荷台に乗せて牽引している。右は、自転車式の荷車とにかく、作業用の車が多い。
農家の庭先

 Farmer

 
ぶた
黄河堤の村では、養豚、養鶏も行われている。農家の庭先に積まれた薪や農業廃棄物の山。雨で濡れないように、ビニールシートをかぶせてある。

 
井戸
黄河堤村では井戸が、重要な水供給源として、現役で使われている。
ピーナッツ

 Aguricultural Products


ピーナッツ
黄河堤村のメインストリートでは、 ピーナツ(落花生)の皮をむく作業が、いたるところで見られた。
ピーナッツ
ピーナツ(落花生)の皮むき作業。老人、婦人の仕事のようだ。

 国際協力の分野では、開発途上国の女性の地位向上に着目した「開発と女性(WID)」、「ジェンダーと開発(GAD)」というアプローチが1980年代以降生まれた。WIDは、女子を家事・育児以外にも、生産活動における役割を重視するもので、従来の女子の生産活動が過小評価され、女子が開発プロジェクトから疎外されてきたとした。そこで、女子を単なる受益者として一方的に捉えるのではなく、人的資源として活用するために、開発に統合すべきであると考える。
 GADは、ジェンダー不平等の要因を、女性と男性の関係と社会構造の中で把握し、役割固定化と役割分担、ジェンダー格差を生み出す仕組みを変革しようとするアプローチ。GADは、ジェンダー不平等を解消するうえでの男性の役割に注目し、社会・経済的に不利な立場におかれた女子のエンパワーメントを促進する政策。
練炭の製造

 Briquette


レンタン
練炭(レンタン)。中国語で「练炭(liàn tàn)」、略してtan。蜂窩煤 / 蜂窝煤(fēng wō méi)という地域もある。練炭の成分は、木炭4割、褐炭・泥炭5割、生石灰・粘土の他1割で、一部バイオマスエネルギーと言える。練炭は、成形してから、天日で乾燥させている。
練炭
褐炭(かったん)、泥炭を水で練り、木炭や生石灰・粘土などを混ぜて、型に入れ、練炭(レンタン)を作る。路上で天然乾燥させている。労働集約的な作業と言える。
河南省開封市黄河堤では、零細工場、家内工業で労働集約的な工程で練炭が製造されている。 練炭
練炭(レンタン) は、tanあるいはmei (coal 煤)と呼ばれる。練炭を燃焼するには、専用のコンロ(練炭ストーブ)を利用する。燃焼によって、摂氏600度の熱エネルギーを得ることができる。
石炭は、炭素、酸素、水素の化合物だが、炭素含有量が多いほど火力が強く高品位である。炭素含有量が多い順に、無煙炭、瀝青炭(れきせいたん)、亜瀝青炭(あれきせいたん)、亜炭褐炭(かったん)、泥炭に分類され、練炭は、主に低品位の褐炭、泥炭を利用して製造される。
労働集約的な炭作り

Firewoods


柴
農道両側に植えられていた「街路樹」の伐採作業。街路樹は、景観維持や防風林としてよりも、薪炭材としてのバイオマスエネルギーの供給源とみなされる。
世界人口のうち15-20%くらいが薪に依存した調理をしている。
薪集め
バイオマスエネルギー」というと、近年になって利用されるようになった再生可能エネルギーであるように思うのは、大きな誤解である。「薪炭」は、古くから世界中で利用されていた「ローテクの伝統的エネルギー」だった。薪は、広範に存在するローカルコモンズであるが、それを集めるのに手間がかかりる。つまり、労働集約的エネルギーといってもよい。
柴
柴集め。小枝をナタで打って、集める。自由に木材を切ったり,放牧できるような「自由な土地」は、もはや世界中どこにもない。地域コミュニティのメンバーが、一定の制約の下で利用できる自然共有資源(ローカルコモンズ)として、街路樹が利用されている。河南省の農村でも、メンバーの財産権のある農道わきの街路樹で柴刈りをしている。
薪の収集・運搬

 Transportation


柴はこび
自転車式荷車で、収集した薪(バイオマスエネルギー)を運搬する住民。バイオマスの利用には、労力が欠かせない。
街路樹
自転車式荷車に、街路樹から集めた薪(木質バイオマスエネルギー)を載せる。
街路樹の伐採

 Avenue


柴
街路樹が大きくなり、電線にかかってしまったためか、根が掘り起こされていた。
マキ運び
、藁のようなバイオマスは、燃料や飼料として有効利用できるが、広い範囲に分散しているために、収集する手間がかかる。運搬するにも労力が必要。バイオマス直接利用には、手を汚し、汗をかく作業であり、「クリーン」ではない。
薪集め
日本では、バイオマスエネルギーは、電化されたり、バイオ燃料化されたりして、手を汚さない、室内を煤煙で汚染しないという意味で「クリーンエネルギー」である。しかし、このような利用方法は、バイオマスの直接燃焼による熱エネルギーよりも効率は悪い。つまり、バイオマス直接燃焼は、エネルギー転換損失が小さく、効率的利用となる可能性がある。 鳥飼行博
黄河堤の村から開封市に帰る途中、街路樹の伐採現場を見かけた。木質バイオマスエネルギーとして、採取する様子はなかなか見ることはできないが、このような街路樹からの薪採取も初めて見た。

◆里山・入会地は、無償で利用はできるが、アクセスが、地域コミュニティのメンバーに限定されていたり、現地住民が相互利益に配慮しながら管理してたりしている。つまり、里山は、「ローカル・コモンズ」の一種である。現地住民は、地域コミュニティの他のメンバーの利益に配慮して、ローカル・コモンズを利用する。そこで、フリーライダー、モラルハザードが抑制され、「コモンズの悲劇」は生じにくい。
 つまり、現地住民が利用する里山・入会は、自由にアクセスできる自由財ではなく、地域コミュニティのメンバーに限って利用できるローカル・コモンズであり、持続可能な利用がされてきた。

 ローカルコモンズは、世界各地に古くから存在してきた。そして、地域コミュニティの現地住民による利用と管理の下にあった。このようなローカル・コモンズとして里山や入会地が維持できるのであれば、フリーライダー、モラルハザードに起因する里山の崩壊、すなわち「コモンズの悲劇」は、起こらないであろう。

里山は、薪というバイオマスエネルギーを提供しており、再生可能エネルギーの供給源でもある。バイオマスエネルギーというと、現在の日本では、バイオ発電、バイオ液体燃料など間接利用が注目されているが、歴史的には、里山からの薪採取という形で、住民に再生可能エネルギーを供給していた。これは、草の根民活として、地域コミュニティの住民が、自主的に里山を管理していたことを示すものである。

 他方、日本の里山の再生が唱えられているが、NPOやボランティアのメンバーが、薪炭などを利用する現地住民でない場合、里山復活は困難な場合が多い。里山利用に伴う利益が、レジャーや自然観察に留まっているのであれば、 財政支援あるいは税制上の優遇措置が必要かもしれない。
以上のように、里山は、再生可能エネルギーの供給源として、利用され、保全されてきたのであり、持続可能な開発に大いに関連している。里山の議論を、自然と親しむとか、身近な緑を守るとか、狭い範囲に限定するのではなく、バイオマス利用の場として、世界に通用する視点で、持続可能な社会形成に役立てるべきであろう。 この意味で、日本に限らず、里山などローカルコモンズの利用と管理は、開発途上国の地域コミュニティに学ぶべき点が多いのである。


スラム (Slum) とは、交通・エネルギー・衛生・教育などのインフラが不十分で、都市貧困層の暮らす居住区である。しかし、外見にもかかわらず、そこは、生半可な知識や偏見を抱いた識者が言うように「公共サービスが受けられない」のではないし、「荒廃状態にある状況」とは言い難い。開発途上国の大都市には、どこでもスラム街といっていい地区があるが、そこは貧しいけれども、住民が必死に苦労して生きている場所であり、草の根の民間活力の感じられる場所である。

開発途上国の人口増加と都市化の進展に伴って、スラム人口 (Slum population)人口は増加傾向にあり、2007年時点で、10億人はスラム居住者であると推測され、国別では、中国1.7億人、インド1.1億人、パキスタン2750万人、インドネシア2680万人、フィリピン2390万人、ブラジル4570万人、メキシコ1180万人、ナイジェリア4530万人、スーダン1550万人などされる。

スラムの特徴として高失業率があげられるが、これは正確な表現ではない。なぜならスラム住民で、正規の工場労働者、サラリーマンはきわめて少なく、多くは自らが仕事を作り出している状況にあるからである。

スラム街の居住者を中心に貧困者が、少ない元手で自営的に零細な仕事を起こしているのが、都市インフォーマル部門である。具体的には、食品など材料を安く買って加工したり、小さな袋に分けたりして、露店で売る転売、路上で客を待つ靴磨きや荷物運び、商店やタクシーやバスの客引き、駐車する車の番人など、さまざまな職を自ら生み出している。この特徴は、小規模な元手で行う自営的サービス業という点であり、高失業率といった主に会社の正規雇用を念頭に置いた概念で図ることはできない。

 スラム街の特徴は、都市インフォーマル部門程度しか雇用機会を提供できないという貧困であるが、だからといって「犯罪や麻薬、アルコール依存症や自殺などが多発する」というのも誤解である。開発途上国でなくとも、非衛生的な環境であれば、病気、伝染病が蔓延するが、だからと言って、スラム住民が強盗や盗人に成り下がるということは言えない。

開発途上国のスラム居住者は、農村から押し出され、あるいは都市に惹きつけられた出稼ぎ者や移住者が多く、貧しいながらも貧困から抜け出そうと、都市インフォーマル部門において、厳しい低報酬の労働にいそしんでいる。また教育に熱心になる傾向も指摘できる。彼らは、農村という地域コミュニティを引き継いで、都市のスラムにあっても一定の自治的な秩序をもって生活している。環境の悪い町外れなどの未開発の地域に住み着いたとしても、住民相互には、暗黙の了解・契約があり「無秩序」ではない。


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