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◆雲南省の牧畜・ローカルコモンズ
1.【地球温暖化】【熱帯林減少】【生物多様性】【国際協力】【人口問題】を、現地調査も踏まえて研究してきました。
2.中国雲南省(州都昆明市)の2010年のGDPは7220億元で全国24位、1人あたりGDPは1万5750元です。
3.雲南省でも都市1人当たり所得は平均1万5800元、農村1人当たり所得3750元と格差があります。そこで云南大理州剑川县の山村に、2004年9月に滞在調査した時の写真をもとに、コモンズ利用型放牧を解説します。

中国雲南省点描

 Agriculture of China

 
 






役畜の飼育

 Ass Grazing


ろば
剣川県ロバ〈驢馬〉。ロバは、粗食なうえに忍耐強いこともあり、荷物運びの役畜として、古代から利用されている。

牧畜:家畜を飼育して乳製品や肉を生産する農業で、放牧、遊牧を含む。
放牧:牧畜の一局面あるいは一形態で、家畜を野外で放し飼いにして、牧草を食ませること。草原、傾斜地など自然牧草地(コモンズ)を利用することも、牧草地を柵で囲った牧場を利用することもある。日本の放牧は、主に夏に行われ、冬は家畜舎で飼育することが多い。
遊牧:牧草を求めて家畜と人間が長期間移動する放牧。 ろば
剣川県ロバ〈驢馬〉の放牧。 ロバ
 剣川県ロバを放牧する老人。道脇の草を食べさせている。地域コミュニティの共有資源,すなわちローカルコモンズに依存した農業と言える。


牛
剣川県の放牧。 

バイオマス・ニッポン総合計画では、日本の木質バイオマスを有効活用することを提唱しているが、剣川県の農村なら農業廃棄物、山林の木質バイオマスなど、広い範囲のバイオマスを地域コミュニティの中で、利用している。日本のバイオマス利用計画は、地域コミュニティの視点を軽視していては実行性に乏しいままとなる。 牛
 云南大理州剑川县で牛1頭を放牧するお父さん。引いてきた牛に、道脇の草を食べさせている。つまり、「地域コミュニティの共有資源」であるコモンズに依存した放牧」=コモンズ利用型放牧と言える。


中国の雲南省剣川県の地図を見る

雲南省剣川県の牧畜

 Jianchuan County


牛
雲南省剣川県(Jianchuan)の、地域コミュニティにおける放牧。遊休地、道の脇の草、傾斜地などローカルコモンズを利用した放牧は、資本(設備、機械)化石燃料の軽減になり、温暖化対策ともなっている。さらに、休耕田や耕作放棄地で小規模放牧を行うことにより耕地の維持も期待できる。
 剑川县は、山に囲まれ,渓谷を中心にした盆地は,農地として利用されている。集落内には、漢民族もいるが,住民の多くは白族(ベーツー)で、ほかにもリス族,ナシ族など少数民族も隣接してすむ珍しい地域である。

放牧
 剑川县(白族の言葉でyit-dut)牧畜剣川県(Jianchuan)にあるこの村は、盆地に位置していて、稲作地、タバコ畑が広がっているが、ローカルコモンズを活用した牧畜(コモンズ利用型放牧)も盛んである。このれは、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会に通じる持続可能な開発の一形態である。 牛
中国南部の農村部では、このような広々としたローカルコモンズを活用して、コモンズ利用型放牧が行われる。ここ雲南省剣川県の山村では、2004年9月、1週間民宿(客桟)に泊まって付近を調査した。 牛
牧畜では、牛の放牧が中心だが,馬,ロバ,ヤギ,水牛を飼育するコモンズ利用型放牧も行われる

 日本でも、同じような取り組みが行政によってはじめられている。山口県畜産試験場放牧管理グループが名づけた「山口型放牧」とは、妊娠中の和牛を簡単な電気牧柵で囲んだ耕作放棄地などに放して、雑草や下草を食べてもらう放牧であり、「いつでも、どこでも、だれでも」簡単にできる放牧の技術であるという。
 島根県でも平成18年度から地域放牧推進事業(県単)により、畜産農家と耕種農家が. 連携を図り、地域の合意のもと、遊休農地を活用した放牧(島根型地域放牧という)を推進している。これらは、小規模なもので、従事する牧畜業者も少ないが、同じような取り組みは開発途上国では、民活ベースで大規模に実践されている。その一つの事例が、中国雲南省剣川県であり、見習うべきところが多い。

放牧

 Pastoralism

 
山腹放牧
雲南省剣川県(Jianchuan)放牧
 剣川県(Jianchuan)の総人口は17.21万人,そのうち農業人口15.52万人,非農業人口1.69万人;白族人口が総人口の92﹪を占め,全国で白族人口比率が最高の県で“白族之郷”といわれる。

 集落には農村家内工業労働者もいるが、みんなが同じ傾斜地や道脇の草を利用するコモンズ利用型放牧の姿は、懐かしくもあり、仲間の団らんのように見えてしまう。これは、地域コミュニティという地縁・血縁と賃金労働という就労が分離できない状況を反映している。現代日本では「仕事」と「家族」という概念が完全に分離している。 牛
剣川県におけるコモンズ利用型放牧。山に幾重にも囲まれているが,渓谷にある盆地は,耕地化され,周辺の傾斜地は牧草地として利用される。 女性放牧従事者もいる。 うし
コモンズ利用型放牧伝統的で多角的牧畜は、キノコの採取など副業、家庭で使う燃料の薪を集める柴刈りと同時に行われる。つまり、金を稼ぐ労働・勤労と家族の仕事・家事労働が同一の空間・時間で行われる。換言すれば、「仕事」と「家庭」は両立している。開発途上国の社会開発を論じる場合、仕事、家族、家庭を総合してみることが重要である。

粘土瓦」作成労働者の日当は15元(200円)で,三食付く。2006年9月当時、1元=14円で、 宿で一食頼めば(一人なら)5元。この食事で満腹になるが、家族の食費支出以外の出費も踏まえれば、十分な賃金とは言えず、貧困にあるといえる。

牛
雲南省剣川県コモンズ利用型放牧は、伝統的で多角的牧畜

2011年10月現在、剣川県委書記(县委书记)は、莽绍标氏、県委副書記(县委副书记)は、李劲松氏、赵喜旺氏、王跃氏。

 現代日本では「働く」という意味を、金を稼ぐ会社での勤労と同一視している。このような近視眼的な「仕事」や「労働」の概念では、開発途上国も含まれるグローバルな問題に対応できない。
 残飯利用のエコフィード(残飯飼料)作りも立派な仕事なはず。 放牧
放牧では,道路脇や空き地,公有地の牧草を利用する。この牧草は,地域コミュニティの共有資源(コモンズ)として認識されている。

 現代日本では「働く」という意味を、勤労サラリーマンという外仕事の意味で使用しているが、このような範囲に限定すれば、老人は、労働力を提供しない「老齢従属人口」として、扶養対象としてのみ認識されてしまう。高齢者を「狭い範囲の労働」の概念で理解しようとすれば、老人は「社会保障」の問題を引き起こす「厄介者」でしかない。日本での「高齢者への認識」は、開発途上国も含まれるグローバルな「少子高齢化問題」には応用できない場合が多い。
 例えば、柴刈りのようなバイオマスエネルギーの採取は立派な仕事で,家事労働の一環で行われている。


牛
剣川県の地域コミュニティにおける放牧牛
剣川県の放牧。夕方16:00過ぎになると,牛を連れて放牧に出て行った人たちが,次々と村に帰ってくる。住民の多くはベー族で,ほかにもリス族ナシ族など少数民族も隣接して居住している。
交通の確保

 stone arch bridge


小アーチ橋
剣川県の集落北端に、清朝時代に建築された小さなアーチ式石橋がかかっている。こんな辺鄙なところにと思う反面、農業、牧畜にとって、この橋が重要な役割があることに気付かされた。集落に買い物などに出かけるだけであれば、集落近くに清朝時代の大きなアーチ式石橋があるので、それを使えばいい。しかし、この橋があるおかげで、牧畜や柴刈りに出かけるなど、ローカルコモンズの利用も可能になる。 剣川県小アーチ橋
剣川県の採石場のふもとにかかる清朝時代のアーチ橋。 小アーチ橋
アーチ式石橋 小アーチ橋
アーチ式石橋を渡る牧草を刈り取った女性。 小アーチ橋
清朝時代のアーチ式石橋の欄干の狛犬(獅子)

入会地里山は、無償で利用はできるが、アクセスが、地域コミュニティのメンバーに限定されていたり、現地住民が相互利益に配慮しながら管理してたりしている。つまり、里山は、「ローカル・コモンズ」の一種である。現地住民は、地域コミュニティの他のメンバーの利益に配慮して、ローカル・コモンズを利用する。そこで、フリーライダーモラルハザードが抑制され、「コモンズの悲劇」は生じにくい。
 つまり、現地住民が利用する入会地・里山は、自由にアクセスできる自由財ではなく、地域コミュニティのメンバーに限って利用できるローカル・コモンズであり、持続可能な利用がされてきた。

 ローカルコモンズは、世界各地に古くから存在してきた。そして、地域コミュニティの現地住民による利用と管理の下にあった。このようなローカル・コモンズとして里山や入会地が維持できるのであれば、フリーライダー、モラルハザードに起因する里山の崩壊、すなわち「コモンズの悲劇」は、起こらないであろう。

入会・里山は、牧草あるいは薪というバイオマス供給源であり、飼料や再生可能エネルギーを住民に提供してきた。バイオマスというと、現在の日本ではバイオマス発電バイオ液体燃料など間接利用が注目されているが、歴史的には、入会の牧草利用、里山からの薪採取という形で、住民にバイオマス供給していた。これは、草の根民活として、地域コミュニティの住民が、自主的に入会・里山を管理していたことを示すものである。

 他方、日本の里山の再生が唱えられているが、NPOやボランティアのメンバーが、薪炭などを利用する現地住民でない場合、里山復活は困難な場合が多い。里山利用に伴う利益が、レジャーや自然観察に留まっているのであれば、 財政支援あるいは税制上の優遇措置が必要かもしれない。
以上のように、ローカルコモンズは、飼料や再生可能エネルギーの供給源として、利用され、保全されてきた。つまり、持続可能な開発に大いに関連している。里山の議論を、自然と親しむとか、身近な緑を守るとか、狭い範囲に限定するのではなく、バイオマス利用の場として、世界に通用する視点で、持続可能な社会形成に役立てるべきであろう。 この意味で、日本に限らず、ローカルコモンズの利用と管理は、開発途上国の地域コミュニティに学ぶべき点が多いのである。

民宿(客桟)から何日か通って作業の様子を撮影したり、聞き取り調査を行ったりして、労働者のみなさんにも顔なじみになって、協力していただいた。

石灰石の砕石場

 limestone Quarry


砕石労働
剣川県の採石場労働者石灰岩をとっている。 砕石
コンクリートの原料となる石灰岩採石場・レンガの原料となる粘土もこの近くで採取されている。   砕石
剣川県の窯業の一翼を担う石灰岩採石場。

 陶磁器の場合、原料は長石の結晶体が風化分解したカオリンである。花崗岩の中の長石が風化し良質な粘土鉱物であるカオリンは粒子が細かく皮膜力が強く、白粉やパック、ベビーパウダーのような化粧品にも使われる。日本では、東海地方にカオリンの良質な粘土層があり、窯業が盛んになった。
 カオリンは、採掘地「高嶺(カオリン)」にちなんだものでchina clayともよばれる。中国の景徳鎮などで高品質の磁器として実用化されたが、その製法は18世紀まで西欧に伝わっていない。中国でもネパールでも、瓦や陶器づくりの窯業を調べたが、工芸品のように美しい作品が生み出されるまでの労働過程が興味深い。 採石場
剣川県の採石場では,石灰岩を採掘している。この地域では,道路を舗装するのに,コンクリートやアスファルトではなく,石灰岩を砕いたものを敷いている。また,家の支柱や土台にも石灰岩が多用される。

◆国際協力の分野では、1980年代以降開発途上国の女性の地位向上に着目した「開発と女性(WID)」、「ジェンダーと開発(GAD)」というアプローチがある。

WIDは、女子を家事・育児以外にも、生産活動における役割を重視するもので、従来の女子の生産活動が過小評価され、女子が開発プロジェクトから疎外されてきたとした。そこで、女子を単なる受益者として一方的に捉えるのではなく、人的資源として活用するために、開発に統合すべきであるとした。

◆「ジェンダーと開発GAD」は、ジェンダー不平等の要因を、女性と男性の関係と社会構造の中で把握し、役割固定化と役割分担、ジェンダー格差を生み出す仕組みを変えることを目指す。換言すれば、GADは、ジェンダー不平等を解消するうえでの男性の役割に注目し、社会・経済的に不利な立場におかれた女子のエンパワーメントを促進する政策である。  

水コモンズ

 Spring water source


池
剣川県の湧水をためた水源。

共有地を無制限に過剰利用してしまいコモンズの悲劇が起きるとされたが、これは地域コミュニティのコモンズ利用ではまずありえない。外部からの大規模な侵入、企業進出、フロンティア開発、アグリビジネスといった場合に、コモンズの収奪的利用が行われる可能性が高い。

役畜利用

 Draft animals


窯の全景
だるま窯で粘土瓦、レンガを焼いている窯業施設。ここで粘土をこねているの二頭の水牛である。瓦とレンガの成形場。奥に水牛による粘土捏ねの作業。右が轆轤のある小屋。これで敷地の半分。瓦窯は,石と粘土で頑丈な構造であるために,中空であっても頂上部に乗ることができる。

ろば
剣川県山村の市では、ロバが農産物を運搬している。山岳地域のために山道をいかねばならないが、体重150キロ以上の馬やロバなら、その半分の重量を運ぶことができる。  
食生活

 Foods


市場
剣川県の古鎮の肉屋。週一回の市が立つが、その時は、普段は空いている公設市場もたくさんの店と客で溢れる。豚肉が中心で、鶏肉、牛肉は少ない。

食事
剣川県民宿の食事。食材として、市場で肉、キノコを購入して地元の料理を作っていただいた。
東海大学

 Tokai University

池
2004年9月、剣川県農村に1週間滞在して、牧畜、ローカルコモンズなど山村生活のフィールド調査を行った。

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東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程 鳥飼 行博
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