フィリピン北部カリンガ州 Kalinga Province
フィリピンカリンガ州 Cordillera Administrative Region
フィリピン共和国コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )には、アブラ州/アパヤオ州/ベンゲット州/イフガオ州/カリンガ州/マウンテン州の6州がある。2010年人口センサスによると、CAR人口は1,616,867人。 1995年にUNESCO世界遺産に登録されたイフガオ州の棚田は、標高700から1500メートルに広がっている。イフガオ州の79%、面積にして19万8246ヘクタールが、山岳コミュニティに属し、棚田は面積1万7138ヘクタールである。渓谷の上から下まで階段状に広がる棚田は、壮大な景観であるが、近世の政治権力者が資金を投じて、住民を動員して行った大規模な開墾の結果できたものではなく、歴史的に中世あるいは古代からの歴史を持つという。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ルブアガン町ウマ。タイガーグラス(Tiger Grass) 箒を作る家内工業世帯のある集落。2013年3月撮影。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村ウマ
ルソン島北部のコルディリェラ行政地方 は、言語、文化の点でフィリピン独自の地位が認められている。地方政府として、独自の議会、条例が認められている。
フィリピンコルディリェラ行政地方 :Cordillera Administrative Region の中心都市バギオ(Baguio)から、カリンガ(Kalinga)州 の州都タブクまで、国道で結ばれているが、山岳地では未舗装の国道も残っている。 コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 は面積3,231.25 km²、人口密度は 62.4人/km²。
カリンガ州 Kalinga Province
コルディリェラ行政地方 (Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村ウマでは、ナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) している。このほか、タイガーグラスを材料にして箒を作り、タブック市などに売り現金収入を得ている。 カリンガ州山村で、ブッシュナイフ(鉈)を炉で加熱し鍛造する鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。
カリンガ(Kalinga)州 山村ウマでは、鍛冶屋があって、柴刈りをするときに使うようなナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) している。平地が少ないが、棚田 で米作が行われている。チコ川上流には、世界遺産バナウェ・ライステラス がある。
ウマの集落
Uma, Kalinga Province
フィリピン共和国ルソン島北部コルディリェラ行政地方 、カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの木造家屋。2013年8月。傾斜地では箒の材料のタイガーグラスが栽培され、棚田の田植えが段落した農閑期の3月、タイガーグラス(Tiger Grass )刈取り、収穫の作業が行われている。
コルディリェラ行政地方 の一人当たり所得は、全国平均を若干上回っていて、一見すると山岳地とはいっても貧困地域ではないようにみえる。しかし、2010年のコルディリェラ行政地方の産業別域内生産は、製造業の比率が42.2%と全国平均の21.0%よりも遥かに高く、金、銅、銀といった鉱業の比率も3.2%と全国平均の1.5%よりも高い。つまり、産業部門構成比から見て、労働生産性の高い部門の比率が高く、地域の一人当たり所得が押し上げられている。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村ウマでは、木造家屋が主流。屋根は、GIと呼ばれるトタン板で、茅葺屋根はほとんど姿を消している。産業としては、棚田 での稲作、ホウキの材料のタイガーグラス(Tiger Grass:Thysanolaena maxima )栽培、そして農器具製造の鍛冶屋の家内工業がある。
コルディリェラ行政地方 (Cordillera Administrative Region (CAR) )
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマで見かけた農器具製造の鍛冶屋(Blacksmith) 家内工業。このバランガイの主要産業は、棚田の稲作、タイガーグラス(Tiger Grass:Thysanolaena maxima )材料の箒作りの家内工業もある。
⇒フィリピン山村の箒作り家内工業 の写真解説を見る。
鍛冶屋
Blacksmith
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村で、自動車道でのコミュニケーションができない辺地には、金属製ナタ(ボロ)を主に製造する鍛冶屋(Blacksmith) がある。金属加熱には、炭(ウリン) を使う。また、木炭原料の薪を集める柴刈り 作業は、子供から大人、老人まで、男女別なく行われる。ルブアガン町では、小学校教育 、稲作、箒作りについても、聞き取り調査を行った。2013年3月撮影。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村ウマの棚田 に囲まれた集落には、鍛冶屋(Blacksmith) がある。この周囲には、里山があり、そこで家庭調理用の薪、鍛冶屋で使用する木炭の原料を集めていると思われる。柴刈りに使うナタ(ボロ),ブッシュナイフ(鉈)は鍛造される。 鍛造 (Forging)とは、金属素材をハンマーで叩いて圧力を加え金属内部の空隙(くうげき)をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高める、さらに成形すること。古代から刃物や武具、農具の製造は鍛造だった。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )のカリンガ州 チコ川渓谷にあるルブアガン町ウマの鍛冶屋(black smith) が金属製ナタ(ボロ)の握り手(木製)を作っている。鍛冶屋の作業でも、みなゴム草履をはいている。 鍛冶屋 (Blacksmith )は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。
ルブアガン町の鍛冶屋(Blacksmith) では、主にナタを生産している。鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。 ナタは、フィリピン語で「ボロ」といい、これで直径2-3センチの枝や小木、柴刈り をする。斧、マサカリ、木挽き(のこぎり)などを用いる樹木伐採とは異なり、柴刈り は、樹齢10年以上の大きな樹木を根元から伐採することはまずない。小枝や倒木、枯れ木などの木質バイオマス を集めている。 バイオマスエネルギー(Biomass Enrgy) (特に柴刈り 、薪採取)の現場を実際に目にすることは容易ではない。森林の中は視界が狭く、山道しかないため、里山のどこで柴刈りが行われているのかが分からないからである。子供が柴刈りをしている場合、集落からすぐ近くことが多い。2013年3月撮影。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州山村ウマの鍛冶屋(black smith) の主。道路沿いは電化されているが、奥の集落には送電されていない。そのような場所に鍛冶屋(Blacksmith) がある。調理には、薪炭など木質バイオマス をエネルギーとすることが多い。この薪集めをするとき、ナタは必需品である。
鍛冶屋の主 firewood collection areas
カリンガ州ルブアガン町ウマでは、鍛冶屋(Blacksmith) があり、ナタなど農具を作っている。鍛冶屋の作業でも、みなゴム草履をはいている。2013年3月撮影。
コルディリェラ行政地方 はルソン島山岳地域で海に面していない内陸地。棚田 、タイガーグラス栽培が生業で貧しい地域であり、電気、ガスなどエネルギー関連インフラは未整備。ウマは、傾斜地が多く、棚田 の稲作、箒の材料のタイガーグラス栽培が行われている。
ルソン島北部コルディリェラ行政地方 (Cordillera Administrative Region (CAR) )カリンガ州ルブアガン町山村ウマの鍛冶屋(Blacksmith) 。ここの主要産業は棚田 の稲作だが、里山での薪用木材(firewood) の柴刈り もさかん。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )ルブアガン町の鍛冶屋(Blacksmith) は、ブッシュナイフ(鉈)の柄(つか)を木で作製する。農村家内工業 の中で、鍛冶屋は、労働集約的技術に依拠して金属を加工する製造業である。
コルディリェラ行政地方 の鍛冶屋(Blacksmith) は、ブッシュナイフ(鉈)の柄(つか)を木で作製する。鍛冶屋の作業でも、みなゴム草履をはいている。
ルソン島山岳地域で海に面していない内陸地で、主要なエネルギーは木質バイオマス (薪や柴)。薪用木材(firewood) を集める柴刈り をしている。
フィリピンでは、国土面積約3000万ヘクタール(日本の8割)の34%、1020万ヘクタールが農地とされるが、実際には1410万ヘクタールが充てられ、100万ヘクタールが農業経営上不利な限界農地とされている。この限界農地のコルディリェラ行政地方の代表事例が、棚田である。棚田での稲作では、伝統的に多品種が栽培されており、標高1300メートルを超える棚田でも、日当たり、水供給など条件の整った場所では、二期作も行われている。畑作は、水の得にくい土地、棚田と棚田を結ぶ急傾斜地、家の周囲に開かれており、インゲン豆など豆類、タロイモ・サツマイモ(カモテ)などイモ類、トウモロコシなどを栽培している。
ボロの柄(つか)作り
Firewood Collection
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町山村ウマの鍛冶屋(Blacksmith) はブッシュナイフ(鉈)の柄(つか)を木を削って作製する。渓谷の斜面にあり、水田・畑地は少ないが、森林が広がっているために、薪用木材(firewood) 集めの柴刈り は近くの里山で行うことができる。タイガーグラス(Tiger Grass )を栽培しての箒生産も行われている。
コルディリェラ(Cordillera)行政地方 のカリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマ在住の鍛冶屋が労働集約的技術 を使い片刃サヤ鉈 の柄を木材で加工している。鍛冶屋(Blacksmith) のご主人。2013年3月撮影。
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマは、山林の中にある集落で、ボロと呼ばれる片刃サヤ鉈 の柄を鍛冶屋(Blacksmith) が製造している。「ブラックスミス」とは黒金(くろがね)、すなわち鉄を加工する職人で、金加工職人は「ゴールドスミス」。薪用木材(fire woods) 、建築資材など木材資源にめぐまれているが、里山での柴刈り で集めた固形バイオマス(solid biomass) を山林から集落まで運搬するのは、体力が必要である。
カリンガ(Kalinga)州 山村ウマ、ボロと呼ばれる片刃サヤ鉈 の柄を作っている鍛冶屋 (ブラックスミス)。鍛冶屋は労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる農村家内工業 であり、農機具の他、里山での柴刈り 、薪用木材(firewood) 集めをするブッシュナイフも重要な商品である。
コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR) )ルブアガン町の鍛冶屋(Blacksmith) の金床(手前の杭)。すでに何十年も前から使っていると。 鍛冶屋は力仕事なので、高齢者はいないが、労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる農村家内工業 で、雇用吸収力は、少ない資本ではあっても高い。
コルディリェラ(Cordillera)行政地方 カリンガ州ルブアガン町の山村ウマ。ブッシュナイフ(鉈)の柄(つか)を木を削って作製する鍛冶屋の主人。里山での柴刈り 、薪用木材(firewood) 集めをするには、ブッシュナイフが不可欠。2013年8月撮影。 このような鍛冶屋は、農村家内工業 、工場制手工業 など封建制度から資本主義が形成されるまで過渡期に生まれた資本主義、すなわち初期資本主義 (early capitalism)の状況を髣髴とさせる。そこで見られる労働集約的産業 は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術しかないと批判されることが多い。しかし、現代の日本で大学生の就職先がサービス業に限定され、ものづくり・製造業の現場での雇用がほとんどない現状に思い至れば、このような発想が単純すぎることがわかる。技術は、簡単化すれば、資本=労働比率(労働の資本装備率)で表すことができ、それは資本レンタル=賃金比率という要素相対価格で決まってくる。高賃金国では、資本節約的技術(労働節約的技術)が、低賃金国では労働集約的技術(資本節約的技術)が採用される傾向がある。
カリンガ州ルブアガン町ウマの鍛冶屋(Blacksmith) が、ブッシュナイフ(鉈)の木製柄(つか)を鋸で削って作製する。
里山での柴刈り や薪用木材(fire woods) を採取するのにナタが普及している。ウマに居住する世帯で、ナタを保有していない家はないであろう。 鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。
カリンガ(Kalinga)州 山村で、鍛冶屋(Blacksmith) がブッシュナイフ(鉈)の木製柄(つか)を鋸で削って作製する。刃の本体は、木炭(ウリン) を燃料に鉄を鍛えてつくる。ブッシュナイフ(鉈)など刃物の木製 の握り部分は、柄(つか)という。
刃の金属加工 Blacksmith
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの鍛冶屋(Blacksmith) が、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリ (電動サンダー )で削って作製する。このバランガイは、渓谷の斜面にあり、平坦な土地は少なく、貧困地域であり、フィリピンの社会福祉、老人年金も整っておらず、生活維持のためには、高齢者でもできる仕事を果たすしかない。しかし、鍛冶屋は力仕事なので、高齢者はいない。
ウマの鍛冶屋(Blacksmith) 。
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの鍛冶屋の若い男性が、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリ (電動サンダー )で削って作製する。鍛冶屋の作業でも、ゴム草履をはいている。
鍛冶屋に老人はいないが、老人でも40キロ以上の薪用木材(fire woods:焚き木) を担いで、運ぶ。薪運びの作業では、運動靴を履いている人は少なく、ゴム草履、ゴムの長靴、あるいは裸足が普通。
コルディリェラ行政地方
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの鍛冶屋(Blacksmith) がナタ(ボロ )を作る。この地域は、7−9月は雨季で、山道は滑りやすいが、森林 における薪採取 、柴刈り は、一年を通して行わなければならないが、この作業にナタは不可欠。傾斜地では、タイガーグラス が栽培されているが、その収穫作業は、3-4月までの乾季に行われ、これにもナタが用いられる。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマで、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃をブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリ (電動サンダー )で削って作製する。で削って作製する。このバランガイでは、木炭 利用の鍛冶屋(Blacksmith) が2軒ある。薪採取 、柴刈り は、通年にわたって行われるが、これにボロを使う。
コルディリェラ行政地方
カリンガ州カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの鍛冶屋。ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリ (電動サンダー )で削って作製する。金属を熱する燃料は、バイオマスエネルギー(Biomass Enrgy) の薪用木材(firewood) を使用する。 大規模製造業による労働需要が存在しない地方にあって、現地の屑鉄を原材料とした鉈(ブッシュナイフ)の製造は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化した農村家内工業 である。鍛造されたボロ(鉈)は、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 に向けて生産されていたが、近年、フェアトレード (Fair trade )や輸出も始まっている。
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマの鍛冶屋(Blacksmith) は、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリで削って作製する。金属を熱するのに薪用木材(firewood) から作った木炭 を用いている。
小さいけれど本物。ミニ沼田鉈 には次のようにある。 “趣味のミニ鉈”沼田市は城下町として栄えてきた町です。古くより刀鍛冶、野鍛冶が多く優れた製品を作り出してきました。特に大正の時代より特殊な工法で作られた鉈は、その優れた切れ味と耐久力で、全国の山林業務に従事する人々に好評をいただき現在に至っております。今回はその鉈のミニチュアを観光地等の土産品に、また各種記念品に製作しました。本格的な切れ味を是非お楽しみ下さい。
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマ鍛冶屋(Blacksmith) は、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリで削って作製する。刃の金属本体は、木材(woods) から作った木炭 を熱源に使用し鍛造する。
鍛冶職人(泊鉈)大久保中秋さん宅訪問 には、次のようにある。
大久保中秋(82)さんは最後の泊鉈職人だそうです。
大久保さんは、鍛冶屋歴67年目になる朝日町で唯一の鍛冶屋です。大久保さんは、ちょうど終戦(昭和20年8月15日)から3日経った昭和20年8月18日に泊の鍛冶屋に弟子入りをしました。そして、4年という短い修業期間で技術を体得し、19歳で独り立ちをしたそうです。
泊鉈の特徴は
?トンビの嘴(くちばし)のような突起が、鉈の上部についていること
トンビがあるおかげで、木の根元を切断する際、刃先を保護する効果が得られます。土中には、石が混在しているのでトンビがないと刃先が欠けてしまうのです。また、先端部分にトンビがあるので、鉈を振り下ろす際に重さが加わり、威力が増します。そして、トンビを使って遠くの枝を引さ寄せたり、伐採した木をまとめてくくる際の強く締め上げる為の道具として使われます。
?鉄を7対3に割り、そこに鋼を入れること
泊鉈を作るには、蒲鉾の底板のような形をした鉄の板を使います。その鉄の板の側面部分を7対3に割り、鋼を入れます。その結果、泊鉈の表と裏に出る鋼の表面積が違ってきます。この様な製作をすることが、長期間にわたる刃先の研磨を可能にしたのです。例えば、泊鉈に使われている鋼を割り入れせずに裏打ちをすると、地鉄と鋼の間に溝が出来やすく、そこからひびが入ってしまいます。溝が出来ないように薄い鋼を使うと、刃先が欠けやすくなります。また、地鉄の裏に厚みのある鋼を全面に裏打ちすれば、鉈1つの値段が高くなってしまうのです。
?鉈の形態が緩やかな曲線を描き、刃先があまり鋭くない
鉈の刃先は、強い力がかかります。泊鉈は、その力に耐える刃先にする為に鋼を厚くするだけではありません。刃の根元から先端にかけての断面は、トンビの嘴のような曲線を描いています。また、泊鉈の使用方法は、肩を軸に、上前方から下後方へ移動するように切断します。その為、手に持った鉈は、大きな円孤を描くような動きをします。その結果、木の切断面は、美しい楕円形となります。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州山村の鍛冶屋が、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を電動ヤスリ (電動サンダー )で削って作製する。2013年3月撮影。 ブッシュナイフを屑鉄から鍛造する鍛冶屋は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化した農村家内工業 である。作られた鉈(ナタ)は、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 されている。
山村ウマでは鍛冶屋が作ったナタ(ボロ )で、薪用木材(firewood) の柴刈りをする。使うのは、片手に持つナタ(フィリピン語ボロ)で、チェーンソー(電動のこぎり)はもちろん、斧やマサカリも使用しない。
ヤスリ加工 Blacksmith
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の鍛冶屋(Blacksmith) は、電動ヤスリを用いて、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を削っている。鍛冶屋 では、ボロ(bolo) を鍛造している。 鍛冶屋は力仕事で、かつ労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる農村家内工業 であり、雇用吸収力は強い。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ルブアガン町の鍛冶屋(Blacksmith) が、ナタ(ボロ )を作るために電動ヤスリを掛けている。これは労働集約的産業 といえる箒作りは、フィリピン山村では農村家内工業 である。
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマでは、鍛冶屋がいて、電動ヤスリを用いて、ブッシュナイフ(鉈)の金属製の片刃を削っている労働集約的作業 。ナタ(ボロ) 金属本体は、鍛造(たんぞう) される。このバランガイは、渓谷の斜面にあり、平坦な土地は少ないため、固形バイオマス(solid biomass) である木材(wood) の運搬はすべて人力で行う。
コルディリェラ行政地方 のカリンガ(Kalinga)州 山村ルブアガン町ウマでは、ナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) し、ヤスリを掛けている。 農村の鍛冶屋は、旺盛な労働者需要を有する労働集約的技術 (labor-intensive technology )をもった農村家内工業 (Manufacture )である。作業工程が手作業であり、機械化していないことをもって「遅れている技術」とする見解は、豊富な低賃金の労働供給がある開発途上国の労働市場を無視しており、非合理的であるだけでなく、ビジネス感覚が欠如している。
ナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) し、電動ヤスリを掛けて、刃を研いでいる。 鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 で、旺盛な労働需要が特徴である。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ルブアガン町ウマ、鍛冶屋 がナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) し、ヤスリで刃をを研いでいる。2013年3月撮影。 鍛冶屋は力仕事なので、高齢者はいないが、労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる農村家内工業 で、雇用吸収力は、少ない資本ではあっても大きい。
ヤスリ掛け
Carrying Firewood
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマでは、ヤスリを用いて、ブッシュナイフ(鉈)の木製柄(つか)を削っている。
鋳金/鋳物(いもの)は、溶かした金属を鋳型(いがた)に流し込み成型する加工法。他方、鍛鉄(たんてつ)は、ハンマーなどで金属を叩いて成形する加工法。ここでは、タイガーグラス(Tiger Grass )を栽培しての箒生産も行われている。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマ、鍛冶屋 がナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) し、木製の柄をヤスリ掛けしている。2013年3月撮影。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマ、鍛冶屋 がナタ(ボロ) を鍛造(たんぞう) し、木製の柄にヤスリを掛けている。2013年3月撮影。 カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、資本主義の本質は、「資本(capital)が無限に自己増殖する価値運動である」とし労働価値説 に基づき、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 して、資本蓄積をすすめるとの論理を展開した。カリンガ州の農村家内工業に、資本の論理 が成立しているであろうか?
カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町ウマでは、ヤスリを用いて、ブッシュナイフ(鉈)の木製柄(つか)を削っている。
山林の中にあるウマ集落では、薪用木材(fire woods) 、建築資材など木材資源にめぐまれている。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 山村ウマでは鍛冶屋が作ったナタで薪用木材(firewood) を柴刈り をする。使うのは、片手にもつナタ(フィリピン語ボロ)で、チェーンソー(電動のこぎり)はもちろん、斧やマサカリも使用しない。
コルディリェラ行政地方 ルブアガン町の鍛冶屋が金属を加熱する炉。木炭で熱をとる。 ブッシュナイフの原材料は、廃スプリングなどを収集・購入した鋼(はがね)。鋼(はがね) とは、文字通り刃金(はがね) であり、鉄Feと炭素Cの合金で、炭素量が約2%以下の炭素鋼 である。炭素が多いと鉄は硬くなるが、粘り強さ・靱性・弾力性が低下する。つまり、炭素の含有量によって、鋼(はがね) の硬度と靱性・弾力性のバランスが決まってくるといえる。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の鍛冶屋 (Blacksmith )p/tools/gardening/axe.html">がボロの柄をヤスリがけで仕上げる。
鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。
注文聞き
Blacksmith
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の鍛冶職人ブラックスミス が、ナタ(ブッシュナイフ)を注文した顧客と相談しながら柄の部分を作っている。2013年3月撮影。
1867年カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、投下労働量に応じて商品価値が決まるとする労働価値説 (labour theory of value)を提唱した。そして、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 を搾取して、資本蓄積を永遠に続けるという資本の論理論 を展開した。カリンガ州の農村家内工業に、搾取 されているワーキングプア (失業者ではなく働く貧困層)がいるであろうか?
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町に鍛冶職人ブラックスミス ナタ(ブッシュナイフ)を注文した顧客と相談しながら柄の部分を作っている。 鍛冶屋の作業は、資本節約的技術 (capital-saving technology )で、男女が従事できる仕事として、山村の重要な雇用機会となっている。他方、労働集約的技術は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術であると「安易な文明論」は批判している。しかし、開発途上国の就業構造やや日本で大学生の就職先を考えてみれば、雇用吸収力や雇用機会を度外視したこのような安易な発想が誤りであるとがわかる。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の鍛冶職人ブラックスミス は、ナタ(ブッシュナイフ)を注文した顧客と相談しながら柄の部分を仕上げる。 山村の鍛冶屋も仕事は、農村家内工業 、工場制手工業 など封建制度から資本主義が形成されるまで過渡期に生まれた資本主義、すなわち初期資本主義 (early capitalism)の状況を髣髴とさせる。そこで見られる労働集約的産業 は、労働生産性が低く、労働者の賃金も低く「遅れている」技術しかないと批判されることが多い。しかし、現代の日本で大学生の就職先がサービス業に限定され、ものづくり・製造業の現場での雇用がほとんどない現状に思い至れば、このような発想が単純すぎることがわかる。技術は、簡単化すれば、資本=労働比率(労働の資本装備率)で表すことができ、それは資本レンタル=賃金比率という要素相対価格で決まってくる。高賃金国では、資本節約的技術(労働節約的技術)が、低賃金国では労働集約的技術(資本節約的技術)が採用される傾向がある。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町に鍛冶職人 が、ボロの握り手を仕上げている。 鍛造作業は、資本節約的技術 (capital-saving technology )で男の力仕事といえ、重要な雇用機会を提供している。
ドヤアスの鍛冶屋
Blacksmith
ルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマの鍛冶屋 (Blacksmith )が作成したナタ(ブッシュナイフ)。ボロは、薪割り 。薪用木材(firewood) を集め、柴刈り に必要不可欠な道具である。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマの鍛冶屋が作成したナタ(ブッシュナイフ)。薪割り に使われる。2013年8月撮影。鍛冶屋は資本節約的技術 (capital-saving technology )のため、鉄を熱いうちに鍛える鍛造には、男の力仕事として需要がある。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ルブアガン町の山村ウマの住居。この前で、ボロの仕上げ作業をしていたが、フイゴや炉は、別の家にある。2013年8月撮影。 大規模製造業による労働需要が存在しない地方にあって、現地の鍛冶屋は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化した農村家内工業 である。ブッシュナイフは、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 に向けて生産されていたが、近年、フェアトレード (Fair trade )や輸出も始まっている。
ボロの用途
Cutting Firewood
カリンガ州ルブアガン町ウマ。薪用木材(firewood:焚き木)を乾燥しやすくするために鉈(ナタ:フィリピン語ボロ、英語ブッシュナイフ)で細く加工している。
カリンガ州ルブアガン町ウマ。
里山での柴刈り で集めた薪用木材(firewood:焚き木) を乾燥させ、燃えやすいように鉈(ナタ:フィリピン語ボロ、英語ブッシュナイフ)で細く加工している。
薪割り の作業。これには、 ?樹皮をはいだり、細くして乾燥させやすくする、 ?小型にして室内で扱いやすくする、 ?少量ずつくくべる火力を調節しやすくする、 といった目的がある。
カリンガ州ルブアガン町ウマ。箒の材料となるタイガーグラスをボロで刈る。
カリンガ州ルブアガン町ウマ。タイガーグラスを刈り取るのに、腰に佩用したボロ(Bolo:鉈)を使用した。
ブッシュナイフの原材料は、廃スプリングなどを収集・購入した鋼(はがね)。鋼(はがね) とは、文字通り刃金(はがね) であり、鉄Feと炭素Cの合金で、炭素量が約2%以下の炭素鋼 である。炭素が多いと鉄は硬くなるが、粘り強さ・靱性・弾力性が低下する。つまり、炭素の含有量によって、鋼(はがね) の硬度と靱性・弾力性のバランスが決まってくるといえる。
ティンラヤン町の鍛冶屋 Blacksmith at Tinglayan
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ティンラヤン町の鍛冶屋 では、ボロ(bolo) を鍛造している。 カール・マルクス (Karl Marx :1818-1883)『資本論 』では、資本主義の本質は、「資本(capital)が無限に自己増殖する価値運動である」とし労働価値説 に基づき、資本家は労働者から剰余価値 を搾取 して、資本蓄積をすすめるとの論理を展開した。カリンガ州の鍛冶屋のような農村家内工業に、このような資本の論理 が成立しているでしょうか?
カリンガ(Kalinga)州 の鍛冶屋 では、ボロ(bolo) を鍛造している。 鍛造 (たんぞう)とは、金属素材をハンマーで叩いて圧力を加え金属結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度・靱性を高めるながら成形すること。古代から刃物や武具、農具の製造は鍛造だった。
大規模製造業による労働需要が存在しない地方にあって、鍛冶屋は、労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化した農村家内工業 である。ボロ(ブッシュナイフ)は、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 に向けて生産されていたが、近年、フェアトレード (Fair trade )や輸出も始まっている。
コルディリェラ行政地方 ティンラヤン町山村の鍛冶屋 では、ボロ を鍛造している。金属素材を打撃・加圧することで、目的の形状を造る鍛造 (たんぞう)されている金属は、赤く高温である。
ブッシュナイフの原材料は、廃スプリングなどを収集・購入した鋼(はがね)。鋼(はがね) とは、文字通り刃金(はがね) であり、鉄Feと炭素Cの合金で、炭素量が約2%以下の炭素鋼 である。炭素が多いと鉄は硬くなるが、粘り強さ・靱性・弾力性が低下する。つまり、炭素の含有量によって、鋼(はがね) の硬度と靱性・弾力性のバランスが決まってくるといえる。
コルディリェラ行政地方 ティンラヤン町山村の鍛冶屋 では、ボロ を鍛造している。鉈は、柴刈り、薪割り(Wood Splitting) で使用される。これは、ボロ(bolo) で小枝の樹皮を剥いだり、枝を細く割ったりする地道な作業である。
コルディリェラ行政地方カリンガ(Kalinga)州 ティンラヤン町ティンラヤン町の鍛冶屋(black smith) 。 鍛冶屋は労働集約的技術 を用いる農村家内工業 である。
囲炉裏 では、煮炊き の主燃料として薪が利用されている。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ティンラヤン町の鍛冶屋(black smith) 。 鍛冶屋は力仕事で、かつ労働集約的技術 (labor-intensive industry )を用いる農村家内工業 であり、雇用吸収力は強い。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ティンラヤン町の鍛冶屋(black smith) 。住民キッチンでは、ナタで柴刈り し集めた再生可能エネルギー の薪 が多用されている。
コルディリェラ行政地方 カリンガ州ティンラヤン町の鍛冶屋(black smith) 。農村家内工業 、工場制手工業 など初期資本主義 とされる労働集約的産業 として、カリンガ州には鍛冶屋が健在である。
東海大学教養学部 Tokai University
フィリピン共和国ルソン島北部コルディリェラ行政地方 カリンガ州の鍛冶屋Blacksmith では、ボロ を鍛造している。その様子を、鍛冶屋 (Blacksmith )の主、そこで働く労働者に伺った。このほか、棚田の稲作、薪 採取、柴刈り 、箒作りに勤しむ世帯にも聞き取り調査をした。 大規模製造業による労働需要が存在しない地方にあって、現地の鉄屑を原材料とした鉈(ナタ)の製造は、l労働集約的技術 (labor-intensive technology )を体化した農村家内工業 である。鍛造されたブッシュナイフは、海外市場(外需)ではなく、局地的市場 (ローカル・マーケット)、地産地消 に向けて生産されていたが、近年、フェアトレード (Fair trade )や輸出も始まっている。
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『アジア地域コミュニティ経済学 フィリピンの棚田とローカルコモンズ』 (東海大学出版部2015年):政府開発援助、フィリピン財政、棚田の有機農業、バイオマスエネルギーを分析しました。 持続可能な開発、特に、熱帯林減少、森林適正管理、バイオマスエネルギーについて専門的に知りたい場合は次の著作を参考にしてください。
『地域コミュニティの環境経済学−開発途上国の草の根民活論と持続可能な開発』 (多賀出版2007年):少子高齢化・ジェンダー,再生可能エネルギー,熱帯林,廃棄物輸出を分析しました。
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Wikipedia(http://ja.wikipedia.org)のコルディリェラ行政地方の説明
山岳管理地域(さんがくかんりちいき、Cordillera Administrative Region, CAR)またはコルディリェラ行政地域は、フィリピン北部ルソン島のコルディリェラ・セントラル地域一帯の内陸地方である。区域内にはフィリピン最高峰のプログ山(Mt. Pulog:2,929m)を含む2,000m級の山々が連なる。中心都市はバギオ(Baguio)である。「コルディリェラ」はスペイン語で「山脈」「山岳地帯」を意味し、現代スペイン語式の「コルディジェラ」という日本語表記も見られるが、フィリピンではジェイスモの影響がないためもっぱら「コルディリェラ」と発音される。
Wikipediaのカリンガ州の説明
カリンガ州 (Province of Kalinga )は、フィリピン 北部ルソン島 のコルディリェラ行政地域 (Cordillera Administrative Region, CAR )に属する州 である。北にアパヤオ州 、西にアブラ州 、南にマウンテン州 、東にカガヤン・バレー地方 のイサベラ州 、カガヤン州 と接している。1995年 2月14日 、旧カリンガ・アパヤオ州(Province of Kalinga-Apayao )が2つに分割されて誕生した。面積は3,119.7km²、人口は174,023人(2000年 )、州都はタブク (Tabuk )である。
他言語版
カリンガ族のホウキ には、次のようにある。 カリンガ族のホウキは、カリンガ州の山奥の村の人々によって作られています。そのうちのひとつ、パシル地方のバリンシアガオ村のホウキ作りをしているある家族とホウキ作りの様子を紹介します。
材料は穂の部分はタイガーグラスと呼ばれるススキによく似た草。野生のものもありますが,ホウキ作りをする人は自宅近くに植えている人もます。手の部分に編みこんでいるのはラタン(籐)。穂の部分の根元をしばっているのはニトとよばれる植物のツルです。これらも山で自生しているものを採ってきて材料にしています。
1995年のフィリピンの地域別一人当たり所得(1985年基準価格)は、全国平均は1万1417ペソに対して、メトロマニラ は2万6559ペソと全国平均の2.3倍、コルディリェラ行政地方の一人当たり所得は、全国平均をやや上回った1万2087ペソ(全国平均の106%)、中部ルソン地方は1万951ペソ(96%)、ビコール地方は5238ペソ(同46%)、ムスリム自治区は3866ペソ(同34%)だった。
フィリピンの2009年の一次エネルギー総供給(TEPS)は、石油換算3884万トンで、エネルギー源別構成比は、石炭15.2%、石油(原油とそれから生成した石油製品)33.5%、天然ガス8.3%、水力2.2%、地熱・太陽22.9%、バイオマス(廃棄物を含む)17.9%であって、地熱と固形バイオマス(solid biomass) 薪炭など木質バイオマス が中心)を合わせた再生可能エネルギーが4割に達している。
「再生可能」とは持続可能なための十分条件といえるもので、再生可能エネルギーは、自然のプロセス由来で提供される太陽光が緒元となり生成され、?自然エネルギー 、?水力、?バイオマスエネルギー 、の三種類に分類できる。
2009年のフィリピンにおける最終エネルギー消費(TFC)は、石油換算2311万トンで、構成比は石炭7.2%、石油49.2%、天然ガス0.3%、バイオマス24.4%、電気18.9%である。最終エネルギー消費の部門別構成比は、産業24.7%、運輸交通34.9%、民生39.2%である。そして、部門別のバイオマスエネルギー(Biomass Enrgy) 構成比は、民生45.5%、産業23.2%、運輸2.3%である。特に、民生部門の主要項目である家庭部門の最終エネルギー消費は、バイオマスが60.4%と過半を超え、電気の23.9%、石油の15.7%を遥かに上回っている。
日本の経済産業省が指定した「新エネルギー」とは、石油代替エネルギーの導入を図るための概念で、「再生可能エネルギーのうち、その普及のために支援を必要とするもの」(新エネルギー 部会中間報告、2006年11月)として、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電 ・熱利用をあげている。しかし、提言では、新エネルギーの中に、蓄電池、燃料電池など非再生可能エネルギーを含めている。
IEAによれば、2008年の主なアジア諸国における再生可能エネルギーと廃棄物による発電電力量をみると、日本は11万3309ギガワット時で中国の60万ギガワット時よりは少ないが、日本人口の2倍近いインドネシア、8500万の人口規模のフィリピン、ベトナムの5倍もの電力量を発電している。
伝統的バイオマスエネルギー の歴史と現時点での広範囲な普及にも拘わらず、先進工業国の間では、再生可能エネルギーといえば、ソーラーパネルを用いた太陽光発電、大型の風車と発電機を用いた風力発電、バイオ液体燃料、バイオマス発電 など先端技術を用いたエネルギーが注目を集めている。
日本においては、2008年の総合資源エネルギー調査会新エネルギー 部会『新エネルギー政策の新たな方向性− 新エネルギーモデル 国家の構築に向けて』で、2005年の再生可能エネルギー 供給を試算している。ここでは、水力発電1732万キロリットル(石油換算)、地熱発電570万キロリットル、新エネルギー 1160万キロリットルとして、一次エネルギー供給の5.9%を占め、他の先進工業国と同等以上の水準にある。そして、「他国の模範(先進事例)となる」「新エネ技術、新エネ・ライフ等の新エネルギー文明 を世界に向けて提唱・発信していくことが、我が国の国際貢献、国際競争力の維持の両面から重要である」としている。
再生可能エネルギーは、自然エネルギー(水力を含む)も固形バイオマス(solid biomass) も太陽からのエネルギーを直接的あるいは間接的に利用することで、仕事ができるようになる。この場合、自然と生物とは、同一の源からエネルギーを得ているのであって、太陽の核融合反応の持続性を引継いでいる点は共通している。
木材は、家庭で使う調理燃料の薪用木材(fire woods) もあり、これは柴刈り で集めている。再生可能エネルギーの実情を見ると、決して、発電部門だけに焦点を絞ることはできない。
他方、日本では「先端技術を用いたクリーンエネルギー」というイメージの代表として、電気エネルギーが、次の理由で注目される。
?電気エネルギーの利用用途の広さという汎用性
?スイッチ一つで操作できるという簡便性
?利用にあたって廃棄物や汚染が生じないというクリーン性(清潔感)
対照的に、薪炭のような直接燃焼する利用方法は、煤煙、燃殻による室内の汚れ、汚染の問題を引き起こす。つまり、薪炭など固形バイオマスの直接燃焼は利用空間の汚れを伴うのであって、「クリーンエネルギー」ではない。電気エネルギーには、生産拠点ではともかく、利用空間では清浄であり、その意味で「クリーンエネルギー」といえる。 2008年の日本の再生可能エネルギーは、水力発電が8.3万ギガワット時で73.5%を占め、固形バイオマス発電 1.5万ギガワット時(13.3%)、廃棄物発電(一般廃棄物と産業廃棄物)7039ギガワット時(6.5%)で、太陽光発電2251ギガワット時(2.0%)、風力発電2623ギガワット時(2.3%)は、地熱発電(2.4%)以下の水準でしかない。したがって、一般的に注目を集めている太陽光、風力は、急増しているとはいっても、再生可能エネルギーにかかわる発電にあっても、5%に満たない。
バイオマスエネルギー は、バイオマス(biomass) を起源とするエネルギーであり、バイオマスとは「再生可能な生物由来の有機性資源で化石燃料以外のもの」である。この内訳は、1)エネルギー作物(資源作物)、2)家畜の糞尿、3)木材、4)農業廃棄物、の4種類である。
エネルギー作物から作られるバイオ液体燃料は、バイオエタノールとバイオディーゼルというバイオアルコール類である。家畜の排出する糞尿や分解した廃棄物からメタンなどバイオガスを取り出すこともできる。こられ二つは、液体バイオマス、気体バイオマスとして分類される現代的バイオマスエネルギー である。
しかし、バイオ燃料やバイオガスよりも、先史時代から人類が利用してきた薪炭は木質バイオマスであり、主に草食動物の糞の植物繊維を乾燥させた動物由来バイオマス、すなわち乾燥糞燃料もあり、薪炭と合わせて、固形バイオマスと呼称することができる。これらいずれの固形バイオマスは、伝統的エネルギーとして分類できる。
フィリピンでは、民生・産業部門におけるバイオマスエネルギー利用が盛んであるが、この利用形態は、バイオマス発電 のような電気利用(バイオマスの間接利用)ではなく、木質バイオマス (薪や柴)や農業廃棄物(もみ殻やサトウキビの絞り粕のバガス)などなど、固形バイオマス を燃焼した熱の直接利用である。
1997年のRPS法制定後も、2008年の政令改正までは、日本の経済産業省も「新エネルギー」の中に廃棄物発電を含んでおり、新エネルギー利用の多くは廃棄物発電であった。しかし、プラスチック類などのサーマルリサイクル(熱回収)は循環型社会の一形態として認められているものの、非再生可能資源の消費・燃焼によるエネルギーの利用は、ワンウェー型であり「再生可能」ではない。 他方、「新エネルギー」には、古くから行なわれている地熱発電は含まれていない。日本の「新エネルギー」は、環境保全というよりも、経済産業省による産業育成の観点から定義されているために、再生可能エネルギーとは大きく異なることは注意を要する。
国際エネルギー機関 (IEA)によれば、2008年の再生可能エネルギーと廃棄物による発熱量は、日本は42万2297テラジュールで中国の868万2943テラジュールより20分の1程度で、日本の再生可能エネルギーの普及は主なアジア諸国と比較しても少ない状況にある。2008年の日本の再生可能エネルギーの生産は、インドネシアの282万317テラジュール、フィリピン70万2865テラジュール、ベトナムの103万9576テラジュールよりも少ない。
対照的に、先進工業国では、バイオマス(biomass) を釜戸、囲炉裏、火鉢、コンロ、ストーブ、窯で燃焼するような直接利用は、燃え殻、杯の除去、処分に手間がかかり、手を汚すことになるために、行われない。手を汚さずに使えて汎用性もある電化利用に重点が置かれている。 このように伝統的バイオマスの直接利用は、労力という汗、燃焼以降の排煙・汚れを伴うのであって、利用方法の上では、「クリーンエネルギー」とみなすことはできない。バイオマスを電化利用している先進工業国の市民は、スイッチ一つで手を汚さずに使用できる。この利便性が、バイオマス電化利用の一つの理由である。
森林面積と植生から推計される木質バイオマス 賦存量は、南アメリカ1797億トン、アフリカ707億トンと、熱帯雨林のジャングルが分布している地域に豊富に存在し、オセアニアのような乾燥地域では乏しい。しかし、世界のバイオマス(biomass) 賦存量は4217億トンあるから、地域的に偏在してはいても、潜在的には、世界中でエネルギーとして利用可能ともいえる。換言すれば、世界の再生可能エネルギーの中核をなす木質バイオマス は、森林利用のあり方、里山利用に依存している状況にあるといってよい。
先進工業国(OECD諸国)のバイオマスエネルギー 供給量は石油換算2.2億トンと、総供給量に占める比率(バイオマス比率)は4.0%と低いのに対して、開発途上国(非OECD諸国)は 9.5億トンと15.4%を占め、開発途上国のバイオマスエネルギー 供給は,先進工業国の4.3倍に達している。バイオマス比率は、アフリカ47.0%,中南米19.6%,アジア24.5%と開発途上国が主な利用地域となっていて、再生可能エネルギーの利用が盛んな地域は、木質バイオマス の普及している開発途上国であることが明らかで、このような地位では、日本では珍しくなった炭焼きが広く行われ、木炭が普及している。
バイオマス(Biomass) 比率が低い先進工業国でも,化石燃料価格の高騰、再生可能エネルギーの普及促進政策から、近年、バイオマスの利用が拡大し、2007年の欧州のバイオマス比率5.6%は2001年の3.9%より格段に上昇している。
バイオマスエネルギー は、薪 、製紙から排出される産業廃棄物(黒液,チップ廃材)、農林畜産業から排出される農業廃棄物(間伐材、もみ殻、牛糞),家計と事務所から排出される一般廃棄物(ごみ,廃油)を燃焼して得られるもので、形態として、熱エネルギーと電気エネルギーがある。可燃性の再生可能エネルギーおよび廃棄物を用いるバイオマス発電 の発電電力量は、OECD諸国では、1971年の5967ギガワット時から1990年11万7406ギガワット時、2000年の19万2210ギガワット時と順調に増加し、2009年には23万8822ギガワット時と38年間で40倍に急増した。
非OECD諸国は、1971年の2万5104ギガワット時から2009年の4万9291の2倍弱にしか増えていない。つまり、先進工業国における再生可能エネルギーに関して、バイオマス発電を、バイオマスエネルギー の主流とみなし、その発電電力量の急増を踏まえれば、政策的対応、市民の環境意識の上で、大きな変化があったと考えられる。
IEAでは,運輸部門に利用されるバイオマス液体燃料をバイオ燃料(biofuel)と呼称しており、世界のバイオ液体燃料供給量(石油換算)は、2000年1000万トン、2007年3410万トンと急増した。この2007年のバイオマス液体燃料の供給量は世界の一次エネルギー供給量(石油換算)120.3億トンの0.28%、バイオマスエネルギー 供給量(石油換算)11.8億トンの2.9%、運輸部門の燃料消費の1.5%に相当する。2007年の国別バイオエタノール生産比率は、アメリカ49.4%、ブラジル37.8%、EU4.6%で、バイオディーゼルは、EU58.6%、米国20.0%となっている。
2003年のEUバイオ燃料指令でも、バイオ燃料使用の数値目標が、2005年の米国エネルギー政策法でバイオエタノール使用の数値目標が定められている。そして、2003年バイオ燃料指令第4.2 条のレュー条項が提出を求めた報告書で、欧州委員会は、2003年のバイオ燃料指令を改訂し、
?2020年のバイオ燃料比率の最低基準を10%に設定する
?環境保全に有益で安定的なエネルギー供給につながるバイオ燃料の使用を促進する
との条項を盛り込むこととなった。
バイオマスが再生可能エネルギーとして日本で注目されたのは、2002年の「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されてから、バイオマス(biomass) の賦存量の大きさに注目して,化石燃料を少しでも代替できるとしている。ここでは、
?地球温暖化対策(エネルギーの観点)
?循環型社会形成(廃棄物処理の観点)
?競争力のある戦略的産業の育成(経済的観点)
?農林漁業・農林漁村の活性化(地域経済活性化の観点)
という4目的に着目して、日本のバイオマス(biomass) を活用すべきであると提言している。
2002年の「バイオマス・ニッポン総合戦略」では、「動植物,微生物,有機性廃棄物からエネルギー源や生分解素材,飼肥料等の製品を得る」ことのできるものをバイオマス発生起源とし、?廃棄物,?未利用,?資源作物,?新作物、に分類している。
IEA (国際エネルギー機関)によれば、2009 年の世界の総エネルギー供給は、石油換算121億6900万トンで、その内訳は石油32.9%、石炭27.1%、天然ガス20.9%、原子力5.8%、水力・バイオマス(biomass) など再生可能エネルギー13.1%である。同様に、OECD諸国の2010年の総エネルギー供給は、52億3772万トンで、石油36.3%、石炭20.2%、天然ガス24.5%、原子力11.0%、再生可能エネルギー7.6%である。
産業、民生部門で広範囲に使用される電力のエネルギー源を見ると、2009 年の世界の電力は、石油5.2%、石炭40.4%、天然ガス21.4%、原子力13.4%、水力・バイオマスなど再生可能エネルギー19.3%である。同様に、OECD諸国の2010年の電力エネルギー源は、石油2.8%、石炭34.6%、天然ガス23.4%、原子力21.2%、再生可能エネルギー17.6%である。
つまり、世界の総エネルギー供給の多くは、石油、石炭など化石燃料であり、電力についても同様であるが、再生可能エネルギーは、OECD諸国よりもそれ以外の国々、すなわち非OECD諸国で普及していることが窺われる。
低炭素社会の実現に向けた取組みが進展し、バイオマス 、地熱、太陽熱、水力、風力から生産された再生可能エネルギーの供給量は増加する傾向にある。
ここで、木質バイオマスエネルギー に関する統計は、次の三つの理由から、正確な把握は困難である。
?木材用途が商業用と家庭用を問わずに、建築、家具、工芸、印刷、燃料と多岐にわたること
?バイオマスでは、市場に流通しない自家消費、無償の薪 採取など外部経済とみなされる生産と消費が占める比率が高い
?バイオマス利用の統計を公表している機関によって推計方法が異なり、推計方法の十分な説明がなされていない
木質バイオマス、木材の統計を公表している国際エネルギー機関(IEA)では、木材以外の農業廃棄物、家畜の糞尿もバイオマスに含め、加えて、林業と商業エネルギー事業者による発熱・発電も加算しているが、世界食糧機関(FAO)の統計は、これらを除いている。 そこで、バイオマスエネルギーの範疇は、正確にとらえることは難しいが、その限界を踏まえたうえで、概観することとする。
世界食糧機関(FAO)によれば、世界のバイオマスエネルギー生産は、1970年の石油換算5.3億トンから2005年に7.2億トンに増加し、2030年には10.7億トンに達する見込みである。そこで、このバイオマスエネルギーを木材換算すると、その体積は1970年の20億立方メートルから2005年の26億立方メートルに増加し、2030年までに38億立方メートルに達すると予測できる。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、2009年には世界の一次エネルギー供給は石油換算で121億6900万トンで、再生可能エネルギーは15億8928万トンで13.1%を占めている。世界のエネルギー供給に対する再生可能エネルギー供給の内訳をみると、水力2.3%、風力0.2%、太陽・潮力0.1%、地熱0.5%に対して、バイオマスエネルギー はその3倍の9.9%と比率が圧倒的に高い。
世界の主流となる再生可能エネルギーは、固形バイオマスであり、これは、開発途上国の家計で薪炭が調理・暖房用に利用され、伝統的バイオマスエネルギーが普及していることを反映している。決してバイオマス発電 はバイオマスの主流利用形態ではない。
「新エネルギー 」の過半は、廃棄物発電 であり、バイオマス由来の木質チップ、林地残材・製材所廃材、建築廃材、剪定材、農業廃棄物を燃料としたバイオマス発電 であれば、再生可能エネルギーに含まれるが、プラスチックなど化石燃料由来の廃棄物発電は、再生可能エネルギーではない。また、この報告書では、「太陽光社会の実現」と題して太陽光発電を、「風力、バイオマス、地熱、雪氷、水力等に対する最大限の取組み」と題して、これらの新エネルギーの急速な発電電力量増加を詳述しているが、日本の一次エネルギー供給の中に占める比率については言及していない。この理由は「新エネルギー 」の比率が1.97%と過小な値であるからである。 2009年の世界の再生可能エネルギーの内訳は、薪炭・動物の糞・木質ペレットなど固形バイオマス70.2%、バイオ液体燃料3.4%、バイオガス1.4%、バイオマスを使用する廃棄物発電0.9%などバイオマスエネルギーが75.9%を占める。その他の再生可能エネルギーは、水力17.7%、風力5.4%、太陽光発電・太陽熱利用・潮力発電1.9%、地熱3.9%である。2010年のOECD諸国の再生可能エネルギーも、固形バイオマス39.6%、バイオ液体燃料10.3%、バイオガス3.8%、廃棄物などバイオマス発電 3.3%などバイオマスエネルギーが57.0%を占める。
バイオ燃料ブームを契機に、バイオマス利用は、再生可能エネルギー、新エネルギーとして、従来にはない新技術を駆使して「クリーンエネルギー」を作り出し、急速に拡張しているという印象を強めている。しかし、実際には、太陽光発電などの再生可能な電力エネルギーの供給は、バイオマス発電 もバイオ燃料も限定的である。結局、日本でも再生可能エネルギーを論じる場合、バイオマス賦存量が多い固形バイオマス、とりわけ木質バイオマスを無視することはできなくなっている。
先進工業国では、バイオ液体燃料など現代バイオマスエネルギー供給が急速に増加し。風力発電や太陽光発電と並んで、技術開発に注目が集まっている。しかし、その世界の総エネルギー供給に占めるこれらの再生可能エネルギーの比率は極めて低く、依然として、伝統的バイオマス、すなわち農業廃棄物を含む固形バイオマス、薪炭の直接燃焼という古くからの利用方法が、世界の再生可能エネルギーの大半を占めていることに変わりはない。固形バイオマスの賦存量が大きいことに注目すれば、日本のような先進工業国にあっても、木質バイオマスの利用を拡大するしか、再生可能エネルギーの比率を引き上げる方法はないといえる。
鳥飼行博 (1997)「工業化戦略の有効性:貿易と国際分業をふまえて 」『東海大学紀要. 教養学部』 28輯,pp.155-174では、次のように論じています。
工業化には「進んだ技術」が不可欠であり,開発途上国では技術力が低いために工業
化が遅れている, あるいは最近のアジアの成長は技術移転によって達成されたという議論を検
討しておこう。日本と中国が機械を生産するに当たって,生産要素の資本K と労働L をどのよ
うに組み合わせるかの検討である。 まず, 日本は資本が豊富, 労働は希少な高賃金の国とし,対照的に中国は資本が希少, 労働が豊富な低賃金の国とすれば, 資本の報酬率r は同一
としても, 労働の報酬率(賃金〉は日本より中国で低くなる。他方, 資本と労働が代替可能で, 様々
な資本=労働比率(資本装備率:K/L) の下で等量の機械を生産できるとすると, このKとL の組み合わせの軌跡は等量線となる。そして, 資本と賃金のコストが最小となる最適な資本一労働比率は等量線が最も下方の等費用線(同一コストで異なるK , L の組み合わせを示す)と接するところである。すなわち, 日申両国の企業が各々直面する要素価格比率(w /r ) に対応して, 同じ機械を生産する資本労働比率(K/L)は日本より中国で低くなる。 つまり, 要素価格比率が高ければ資本集約的技術が, 要素価格比率が低ければ労働集約的技術が選択されるのであって, 同じ電子部品を作る場合でも, 日本ではロボットや高性能工作機械を使うが, 中国では多数の労働者を利用して手作業で行うことになる。しかし,手作業が選択された理由は「技術が遅れている」からではなく, 低賃金のために資本を使用するよりも低コストで生産できるからである。
カリンガ族のホウキ には、次のように箒の作り方を説明している。
1)採ってきたタイガーグラスを乾かす。
2)穂の余分な葉や種を取り除く。
3)ラタンを裂いて太さをそろえ,しごいて滑らかにする。
4)タイガーグラスの穂をばらして、茎を芯にして、ニトでひと房ずつしばる。
5)6房をひとまとめにして、ラタンで編みこむ(穂と柄の間の三角の部分)
7)柄の部分のラタンを編みこんでいく。
8)最後に取っ手をつけ、ハサミで穂先をそろえる。