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◆HK財政学:第一次世界大戦のプロパガンダ


ポスター(上):1914-1916年、第一次大戦中にイギリス軍が志願兵・戦争協力を募集したポスター
:この戦列の中で、自分の占める位置はどこか。とにかく戦争に参加、協力する道を選ばなければならない。
Westfront, deutsches Eisenbahngeschütz
This poster shows a united Britain, with all members of society going to war together. Everyone is shown carrying the tools of their trade or profession, with civilians gradually transforming into British infantrymen.
画像は、 IWM (Art.IWM PST 0318) 引用。

ポスター(右):1914-1916年、第一次大戦中にイギリスが作成した、第一次世界大戦で地球を支配しようとしているドイツ軍の悪魔のポスター:ドイツ軍のヘルメットを被った怪物のような兵士は、ヨーロッパを睨んで血を滴らせている。怪物の両腕は、既に悪行によって殺戮した市民の血で塗られている。
This poster was designed for the last recruiting campaign carried out by the Government of Australia during the First World War. It shows an ape-like monster, wearing a German helmet, or pickelhaube, which was seen as a symbol of German militarism. The poster was part of a sophisticated campaign, and the graphic imagery is particularly forceful and very different to that used in British posters.
画像は、 IWM (イギリス帝国戦争博物館) 引用。

フランス軍は、イギリス軍と同盟していたため、イギリスの戦車開発に刺激を受け、1917年5月5日、フランス・サンシャモン突撃戦車16輌を前線に投入した。

しかし、このような最前線の戦い・戦闘だけが戦争ではない。軍需生産も、戦争支持の世論形成も重要な総力戦の一環である。そのためには、敵のドイツは、ルター、ベートーベン、ゲーテの故郷であるといった思いは、捨てる必要があった。敵は芸術を愛する人間だと思えば、殺戮はできない。敵は、残虐な悪魔のような存在だと国民に思い知らせる必要がある。

ポスター(右):1914-1917年、第一次世界大戦、連合国が、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世 (Wilhelm II:1859-1941)を残虐な悪魔にたとえたブラックプロパガンダのポスター Chamond):ヴィルヘルム2世は在位1888年から1918年のドイツ第二帝国の皇帝とである。ヨーロッパの勢力均衡を掲げた有能な宰相ビスマルクを罷免し、ドイツ海軍を大拡張することを命じて、アフリカやアジアへの勢力拡大を図った。これが、「世界政策」と呼ばれるドイツの帝国主義であるが、そのために、既存の植民地を維持しようとしたイギリス・フランスと対立した。このイギリス・フランスとの対立が激化して、バルカン半島での紛争が第一次世界大戦にまで拡大し、総力戦、同動員が始まった。
画像は、 IWM (イギリス帝国戦争博物館) 引用。


やる気のある式の高いボランティアを集めるために、戦争意識を高め、国家への貢献を訴える女性軍務推奨のポスターが作成された。最前線の戦い・戦闘に加えて、航法勤務には、信頼できる士気の高い女性が求められた。志願兵とは、ボランティアの日本語訳である。敵を憎むブラックプロパガンダが展開される一方で、味方は国民を守るための聖戦・正義の戦いを遂行しているとのホワイトプロパガンダが財政資金によって拡散された。

命がけの戦いが日常となった戦争では、老人福祉、精神障害者福祉の予算は大幅に削減された一方で、戦争に必要な資源エネルギー、兵器、食料、被服など軍需物資については大量生産が企図され、国家の財政資金が大量投入された。この資金は、国民への税金、植民地からの徴収、国債・自由公債などによる国家の借金から成り立っている。

ポスター(右)1917年、第一次世界大戦に参戦したアメリカが、海軍への志願を訴えた動員ポスター:「あーあ、私が男だったらな!」彼女は、セーラー(水兵)服を着て男装している。最前線に派遣された男性兵士とは異なり、女性は通信・輸送・書記・事務の後方勤務に動員されたので、アメリカには女性の前線で戦う兵士はいなかった。
whole: the image is positioned in the left half of the design, with text in red and blue placed to the right and underneath the image. image: a depicition of an attractive young woman wearing the uniform of a United States Navy sailor. text: GEE!! I WISH I WERE A MAN I'd JOIN THE NAVY, NAVAL RESERVE OR COASTGUARD.
CreatorChristy, Howard Chandler
Production date 1917
Place made United States of America
Materials Support: paper medium: lithograph
Dimensions
Support: Height 1045 mm, Width 687 mm
Catalogue numberArt.IWM PST 17190
画像は、 IWM (イギリス帝国戦争博物館) Variant on PST 0246引用。


このような総力戦の下での総動員のためのポスターは、ブラックプロパガンダの典型的な表象である。これは、メディアや学校教育を通じて大々的に行われ、工場や事務所、交通機関、路上に多数張り出されたが、そのためのカラー・ポスターの印刷、配布、添付の作業は、もちろん国家・政府が財政支援をして広め喧伝していたのである。戦争に勝つために、国民世論も国家財政も総動員されたといえる。

ポスター(右)1914-1917年、第一次世界大戦、イギリスが、女性の兵士としての陸軍と海軍への志願を訴えたボランティア・ポスター。陸軍では、WAAC(Women's Army Auxiliary Corps :女性陸軍補助部隊)、海軍ではWRNS(Women's Royal Naval Service :女性海軍奉仕部隊)と呼称する女性の軍務が設けられた。彼女たちは、最前線に派遣された男性兵士とは異なり、通信・輸送・書記・事務の後方勤務に動員された。
whole: the image is positioned in the upper third. The title is separate and positioned across the centre, in red. The text is separate and positioned in the lower two-thirds, in black. The title and text are set against a white background and held within a black border. The remainder is set against a red background. image: a half-length depiction of Britannia standing with her arms around the shoulders of, on the left, a member of the Women's Army Auxiliary Corps, and on the right, a member of the Women's Royal Naval Service. text: PATRIOTIC SERVICE for BRITISH WOMEN WOMEN WANTED URGENTLY to enrol for the duration of the war in the W.A.A.C WOMEN'S . ARMY . AUXILIARY . CORPS and the W.R.N.S WOMEN'S . ROYAL . NAVAL . SERVICE ENROL TO-DAY Apply at the nearest EMPLOYMENT EXCHANGE for full particulars. Ask at the nearest Post Office for the address. M.104. THE DANGERFIELD PRINTING CO., LTD., LONDON.
画像は、 IWM (イギリス帝国戦争博物館) 引用。

鳥飼担当 HK「財政学」の課題

Word War Mobilization


【第一次世界大戦WW1 - The Home Front】後方の戦争 (2014/05/23 公開)
An introduction to the Home Front in the Great War with an emphasis on the lives of women and children. All images copyright Imperial War Museum. For educational use not commercial use. Please visit the Imperial War Museum website to learn more about women and the home front in WW1.

世界大戦は、大量の兵器や軍関係の物資が生産されたが、これは製鉄から始まって、小銃、機関銃、火砲、輸送用トラック、戦車、戦艦、巡洋艦、護衛艦、潜水艦、商船、缶詰、軍服などあらゆる軍事物資が含まれる。それが、一部は国営工場で、一部は民間工場で、国家の軍事支出によって生産された。軍需生産・食料増産には、女性も子供も参加した。

1914年の第一次世界大戦では、文明国・列国・一等国が、兵器を量産しそれを使って大量破壊と大量破壊をもたらした。個人や家族を包含する国家を守るための正義の戦いでは、敵は犯罪者と同じく恐怖の対象であり、殲滅されるべき悪であるとみなされた。敵の兵士や労働者を殲滅するまで殺しても、敵は人間以下とされた状況では、悪いことではない。富国強兵を目指す帝国主義の国家が、植民地や覇権を獲得しようとし、帝国主義国家同士の対立が勢力圏争いとなり、戦争にまでつながった。第一次世界大戦で戦った国家は、同じヨーロッパの諸国であり、その意味で同じような文化的背景を持っていた。

 しかし、戦争になった帝国主義の国家は、敵となった同じような帝国主義国家を全く別の存在とする必要が出てきた。これが、敵を憎悪するためのブラック・プロパガンダである。国家財政が、新兵器の開発、軍需生産、負傷兵の介護、女子労働者の育児支援に充てられると同時に、戦争賛美の国民教育や宣伝活動が大々的に行われた。これは、新聞、ラジオ、ポスターなどマスメディアを通じて拡散されたプロパガンダである。大量破壊と大量殺戮が行われた総力戦を戦うには、財政基盤が不可欠であり、国民の戦争支持の世論形成が必要である。

総力戦となった第一世界戦争では、第一線の戦闘員だけではく、後方の一般社会の民間人も戦争に参加した。大量の兵士たちが志願した後、工場労働にも農業労働にも女子労働力が動員された。兵士としては忠誠心が疑わしい植民地の男性は、前線への物資輸送や炭鉱での過酷な労働に動員された。さらに、後方では、国民世論の支持、戦争のための増税、国債・自由公債の販売による借金がなければ、財政基盤は崩れてしまう。


【第一次世界大戦のプロパガンダ用の戦争ポスター】ILLUSTRATED PROPAGANDA IN WORLD WAR ONE (2018/08/12公開)
A break from the unsung heroes series and the first of two about the power of illustration to affect attitudes and behaviour in wartime.
第一次世界大戦は、国民を戦争に参加させ、増税を受け入れさせ、国債・自由公債の販売のためにたくさんの戦争ポスターが作成された。これがプロパガンダである。

こうして、第一世界大戦は、国家総力戦となり、国家の統制の下に、物資、資源、燃料、食料、資金、技術、労働、技術が導入された。国家予算は増加し、国役割が大きくなったが、その最終目標は戦争に勝つことであり、敵を大量破壊し、大量殺戮することだった。

 人権を重視していたら、人殺しはできない。敵の兵士を殺害するのは、国の敵に対する当然の戦闘行為である。敵のや労働者を殺戮するような空襲・空爆は、敵の生産力を弱体化するための手段である。 志願兵として出征するためには、戦争への積極的な参加が正義であり、悪の敵から我が国を守るという気概・高い士気が必要であり、そのためにプロパガンダは必要だった。軍需生産に励み、兵器を作り、食料を増産して前線の兵士に送り届けるには、国民の戦争協力が必要で、そのためにもプロパガンダが展開された。

敵が悪であり、人間以下の残虐な犯罪者であるというブラックプロパガンダの対局があるのが、味方は善であり正義であるとするホワイトプロパガンダである。学校では、子供たちに戦争が正義のためであり、自由の珠の戦いであると教えられた。兵士の教育・訓練の場にあっても、味方の正当性、敵の残虐性が教え込まれた。戦争は、人殺しではなく、国家や故郷・家族を守るための正義の戦いであるというものである。

 国家財政は、戦争に勝つためのプロパガンダ・教育・世論形成に使用された。


【アメリカの第一次世界大戦の戦争ポスター】 (2014/10/31公開)
A segment of the video tour of the KSU Museum exhibit "The Great War: Women and Fashion in a World at War 1912-1922" narrated by the curator.

国家財政を大規模に投入して開発・量産された大量破壊兵器は、最新の技術と戦術の下に使用され、大量殺戮・大量破壊をもたらした。財政負担なしに、兵器の開発も量産も不可能であり、大戦争を戦うことはできないのである。

第一次世界大戦は、1914年から1918年まで4年間も続いた大戦争だったために、参戦国の国家財政は戦争に大半の予算を使うことになり、多額の借金を追うことになった。戦争下の財政、戦時財政こそ人々の生活の質(QOL)や福祉水準を大幅に退化させるものだった。大量破壊・大量殺戮のために国家財政を消耗しているのだから。

1914年に勃発した第一次世界戦争は、最前線の兵士と兵士の激突だけではなく、後方における資源エネルギー、兵器・食料など物資の生産の生産、流通・輸送、ららにそれに必要な兵士・労働者の調達など、国家総力戦として戦われた。国家は、もてる人材、資源エネルギー、物資、技術、世論を総動員して、世界大戦を戦った。20世紀初めの国家総力戦となった第一次世界大戦を拙著『写真・ポスターから学ぶ戦争の百年』「第2章 第一次世界大戦前半」で、国家財政の役割を、20世紀初めの帝国主義、国家総力戦のより大きな枠組み(フレームワーク)の中で、考えた。

「第3章 第一次大戦後半」では、総力戦に世論の支持を得るために、敵を憎悪する宣伝「プロパガンダ」が行われ、アメリカを参戦させるための「プロパガンダ」がイギリスなど連合国によって大々的に展開された理由を考えてもらいたい。総力戦では、銃後・後方で労働者、資源エネルギー・食料を調達をしなければならないが、そのためには国民の戦争への熱意を高めなくてはならない。これが戦争を戦い抜こうとする士気であり、戦争支持の世論である。そのために、自らは正義のために戦う、敵は悪であるとの国民の士気を盛り上げなくてはならない。これが、プロパガンダである。

 そして、攻撃目標としても、塹壕にいる兵士を砲撃するのではなく、近北の工場に物資を運搬する船舶・商船を撃沈するために、武将商船やUボート(潜水艦)が投入された。機雷による海上封鎖も行われた。これがシーレーン(海上交通網)を維持するための海上護衛であり、交通破壊しようとする潜水艦や機雷による攻撃である。


Liberty Bonds parade in New York City; c. 1917.
(2014/04/13公開)British Pathé
政府の国債(自由公債)販売のための宣伝活動の一環で、自由公債を買うようにゾウに垂れ幕を付けて、ニューヨークの市内をパレードした。自由公債の販売は、国家財政を謝金によって賄うためであり、戦争資金を国民から借金・調達することで、総力戦が戦われた。つまり、国民に自由公債を買ってもらうための宣伝・プロパガンダが、国家によって大規模に実施されたのである。


Charlie Chaplin, Mary Pickford, and Marie Dressler at the Third Liberty Bond gathering.
(2013/06/24公開)CriticalPast
政府の宣伝活動/国債販売の一環で若いチャーリー・チャップリンが演壇で自由公債を買うように群衆にスピーチをしている。ドイツ軍はもうそこまで来ている。皆さんの買う自由公債が、アメリカの自由を守る戦いに必要なのであると熱烈に語っている。映画女優で「アメリカの恋人」と呼ばれたメアリー・ピックフォード(Mary Pickford:1892-1979)も自由公債の政府の販売宣伝に参加している。これも国家が戦争資金を国民から借金するためのプロパガンダである。
CriticalPast is an archive of historic footage. The vintage footage in this video has been uploaded for research purposes, and is presented in unedited form. Some viewers may find some scenes or audio in this archival material to be unsettling or distressing. CriticalPast makes this media available for researchers and documentarians, and does not endorse or condone any behavior or message, implied or explicit, that is seen or heard in this video.
The Third Liberty Bond rally in Washington, D.C. features Charlie Chaplin and Mary Pickford. They entertain the crowd as they raise money for the U.S. effort during WWI. Charlie Chaplin speaks to the audience and then "conducts" the orchestra that is gathered. He then dances comically with Marie Dressler. Mary Pickford also addresses the gathered crowd.

 戦争資金を集めることも国家財政の維持の上で重要となり、国債を発行し、国民にあるいは外国人に国債を販売することも重要である。国債が売れれば、税金が不足しても、財政資金、戦争の予算を賄うことができるからである。アメリカでは、戦争資金を集める国債を「自由公債」と名付けて、チャップリンのような映画スターを使って国が自由公債販売促進運動を展開した。これは、租税以外の戦争予算を自由公債(国債)という借金で調達するための国民に向けたプロパガンダである。

鳥飼担当 HK「財政学」の課題

Report Writing

20世紀の帝国主義国家がヨーロッパで衝突した第一次大戦は、アフリカ・中東・アジアの植民地での戦い、大西洋・地中海の海の戦いなど世界戦争となった総力戦だった。この人類史上最大級の大戦争は、国家が財政・産業・農業・交通・労働力・技術力の総力を挙げて戦った結果、大量破壊・大量殺戮をもたらした。しかし、この総力戦は、国民や植民地の支持がないと戦えないことは明らかだったため、国民と植民地の支援を得るためのプロパガンダ行われた。これは、戦争は国家・国民を守るための正義の戦いであり、敵は残虐非道な悪であるとの煽動であった。

鳥飼行博著『写真・ポスターから学ぶ戦争の百年―二十世紀初頭から現在まで』青弓社「第2章 第一次世界大戦前半」(pp.62-80)、「第3章 第一次大戦後半」(pp.96-123)に掲載されたような第一次世界大戦のポスターを、ホワイト・プロパガンダとブラック・プロパガンダに区分しながら、戦争支持の世論形成にプロパガンダが果たす役割を説明し、第一次世界大戦という総力戦を国家が遂行し、そのための財政負担を続けるには、プロパガンダが不可欠だったことを述べなさい。

1)「まとめレポート」をワード(word)で作成、ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
2)まとめレポートの文字数は、1000文字以上、2400文字以下。他サイトの引用は不可。
3)このレポート課題はサンプルなので提出には及びません。実際の課題レポートは、授業支援システム(OpenLMS)に掲載。

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University



教養学部の講義HK「財政学」は、環境平和学と持続可能な開発を踏まえて、財政学を多様な視点で扱う授業です。

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東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
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東海大への行き方|How to go
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