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◆スラム住民の3Rs&エシカル消費

炭焼き
写真(上)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市トンド地区スモーキーマウンテン、インフォーマルセトラーによる炭焼き。毎年、鳥飼ゼミナールはスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)を調査しに訪問している。木炭(ウリン)づくりのために、廃棄物の山に穴を掘って切った木を入れ、空間を作り火をつける。それから土を被せていぶる。スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)で炭を作っていた非正規居住者「インフォーマルセトラー」の家屋(バラック)。スモーキーマウンテンの廃棄物集積場所跡にある。

スモーキーマウンテン

Smokey Mountain 2015


廃材
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)のごみ山には廃材が積まれている。最終処分場は、ごみ投棄は終了し、閉鎖されている。2014年ごろには、周囲がコンクリ壁で覆われており、立ち入り禁止となっている。許可申請の出し方が分かっても、危険な場所であり、まず立ち入り許可は得ることはできない。だからと言って、無断侵入、不法侵入は犯罪であり、すべきではない。

フィリピン政府による社会保障も生活保護ガイドも不十分であっても、家族は働き工夫して生活している。

コンクリの壁ゼミ生
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)。このごみ山近くで廃材の買い取り、木炭を製造する業者がある。トンド地区の住民は、廃材を彼らのところに運んで売却する。荷車いっぱいで100-200ペソになる。

「スクオッターの生活実践 ―― マニラの貧困世界のダイナミズム 石岡丈昇」には、次のようにある。
「スクオッターは行政サービスからは取り残されたエリアである。選挙を控えた地元政治家が集票のために道路を整備するなどを除けば、生活基盤整備が施されることはまずない。たとえば熱帯特有の強い雨が降った際には、多くの家屋が床上浸水になる。また、台風の時期には、家ごと吹き飛ばされるケースも少なくない。スクオッターは、インフラ整備の面では、脆弱な場所なのである。」

「だが、スクオッターの内部を歩いてみると、そこでは脆弱な貧困地域というイメージを覆す数々の生活の機微に触れることができる。インフラ整備が施されないため、住民は自ら生活空間を創出する。排水路を整備し、街灯を設営し、祭りを開催し、固有の生活を創造していくのだ。たしかに貧しくはあるが、そこに息づく自前性・自律性の力は相当のものだ。ここでは、そうしたスクオッターのおびたただしい生活実践を紹介していこう。スクオッター住民の生活実践を見てみると、そこが社会的周辺地域ではなく、危機を生き延びる叡智の集積する先進地域であることが読み取れるはずだ。」

スラムだからごみだらけで循環型社会ともエシカル消費とも隔絶していると考えるのは、成熟社会の小賢しい考えである。ごみは住民が捨てたものではなく、都市の富裕層の廃棄したものだ。スラム住民は、そこから使えるものを回収し再利用し、段ボール、金属、プラスチックを分別収集して、リサイクルしている。捨てるのはもったいないので廃棄されるものより、3Rsの対象になるもののほうが多い。したがって、スラム住民は、客観的な3Rsの視点では、循環型社会の形成に寄与している。残飯をあつめたり、使える服を拾ったり、これはもったいないと貧困者がとる節約行動である。しかし、同時に環境負荷が少ない再利用、リサイクルしての消費であれば、スラム住民の生活は、エシカル消費を進めているといえる。

廃材集め1
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)。ここは、マニラ北港近くのごみ捨て場で、2年前までは炭焼きがなされていた。しかし、2013年以降は、危険なためか廃止された。現在、スモーキーマウンテンの隣で、炭焼きの原料を買取する業者がトラックでやってくる。

スモーキマウンテンに住む貧困者も、焜炉(調理用ストーブ)を使っていた。フィリピンでは、中層以下の世帯で、料理や給湯には焜炉(こんろ)調理用ストーブを使うのがふつう。燃料は薪炭。
 パヤタスのスラム街では、炭をまとめ買いし、それを小さな袋に分けて売る木炭販売世帯がある。パヤタスの調理では焜炉(こんろ)調理用ストーブが主流。燃料は薪と薪から焼かれた木炭(ウリン)である。

廃材集め2
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン下では、炭焼きをする業者が、廃材を買い取っている。トラックで廃材を、パガニバンに運んで、炭を焼いているという。

 木質バイオマスは、酸素を供給しながら燃焼させれば灰になるが、窯に入れて不十分な空気の中で蒸し焼きにすれば、水分がすべて蒸発し炭素化して木炭に変わる。これが炭焼きだが、実際は火を起こすのではなく、酸素を遮断して高熱で燃焼させる。ただし、炭焼き窯の内部を高温にするためには、初期時点では焚口で火を起こして高熱を送り込み、その後に口を塞いで酸素を遮断して、数百度にまで窯の内部の温度を上げる。ただし、窯を高温に保ち続ける必要上、酸素を完全に遮断することはなく、僅かに供給しつける必要がある。炭焼きは、1日から2日間で完了する。

低所得層住宅地では、政府による社会保障生活保護も不十分であれば、貧しい住民の中には、やむを得ず不法占拠者となる場合もある。しかし、彼らを循環型社会の一員と見なすことも可能である。

カモテの葉を袋
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテン下で、カモテの葉を袋(サック)に入れて、市場に売りに行く住民に出会った。

都市貧困地区 スモーキーマウンテンには、次のようにある。
「フィリピンのゴミ処理場では、ゴミを焼却せず、ゴミ捨て場に投棄(野積み)されます。一日にマニラ首都圏から出るゴミの総重量は約6,000トンと言われ、それらのゴミを受け入れる捨て場は、マニラ首都圏内に複数あります。 私たちが支援する「スモーキーマウンテン」は、マニラ首都圏マニラ市トンド地区に位置しています。多くの住人は収入を得るために、ゴミの中からリサイクル可能なゴミ(鉄、銅、プラスチックなど)を拾います。一日の収入は70〜150ペソ(約150〜320円)と大変少なく、苦しい生活を強いられています。 2012年度現在、約6,500人もの人々がスモーキーマウンテンに暮らしていると言われています。スモーキーマウンテンと呼ばれ始めた由来は、自然発火したゴミの山から煙が立つ様子からです。」
マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテンの上にあるスラム地区。もともと、廃棄物の山で住民はいなかったが、畑作を営む不法占拠者がここに住居を建築した。それが恒常的な居住地となり、住居も次第に増え、構造的にもしっかりしたものに変化した。

廃材集め3
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテンは、マニラ北港近くのごみ捨て場で、炭焼きの原料となる廃材を買取り、トラックで運搬する業者。マニラ市にあるスモーキーマウンテン下にいる業者は、荷車1台分の廃材を150ペソから250ペソで買ってくれる。

不用のものとして廃棄された材木・木質バイオマスをリサイクルすることは、循環型社会の形成に繋がる。木炭は、バイオマスエネルギーであり、再生可能可能エネルギーであるから、化石燃料とエネルギー代替すれば、地球温暖化防止・気候変動安定化にも寄与ができる。スラムといえば、貧困、汚い、社会の恥と考えられ貶められている場合が多いが、循環型社会・持続可能な社会の形成に寄与する可能性があるともいえる。批判的検討を進めることで、一般に広まっている皮相的な見解や御用学者の偏った見解を改め、そこから新しい着想が生まれるかもしれない。

廃材集め4
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテンで、炭焼きの原料となる廃材を買取り、トラックで運搬する業者。

 1950年代から使われていたマニラ北港近くの廃棄物捨て場は、1980年代には「スモーキーマウンテン」と呼ばれるほど巨大なごみ山となり、ごみが燃える煙が立ち上るようになった。フィリピン政府は、世界のメディアによって貧困の象徴とされ報道される続けることに危惧し、1994年にごみ投棄を停止するとした。そして、ごみから有価物を回収するために住み込んでいるスラム住民の立ちんぼ気を開始した。しかし、ごみ処分が中止されてから30年が経過、再びこの「スモーキーマウンテン」に住む人々が増えている。もとのごみ山が堆肥化し、カモテなどイモ栽培が可能で、廃材を用いた木炭づくり・炭焼きも行われているのであって、これは循環型社会の視点からも評価できる。

パヤタス

Payatas 2014/2015



写真(上)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏ケソン市のジャンクショップ
:スカベンジャーが集めてきた有価物になるプラスチック、PET,段ボール、金属などに分類してジャンクショップ(屑屋)に買い取っている。筆者撮影。



写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場のごみ山
パヤタス廃棄物最終処分場へは、立ち入りできないので、ゲートの隙間から覗くことしかできない。フィリピンの恥部として、外国メディアが揶揄して取り上げたことから、フィリピン政府は、以前から、メディアや外国人の廃棄物処分場への立ち入りを厳しく制限している。

マニラ首都圏ケソン市のバランガイ・パヤタスに設けられたダンピング・サイト(ごみ最終処分場:ゴミ捨て場)の広さは、数キロ四方、40ヘクタールといわれるほど広く、半日で100台以上のごみ収集トラックが、マニラ首都圏のごみを運んでくる。開設は1970年代からだが、実際に大量のごみが運ばれてきたのは、1990年以降である。

ごみ下
写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場のごみ山
:立ち入りできないが、ゲートの隙間から覗くとごみ山がまじかに見える。2015年には、この廃棄物処分場の壁いっぱいにまで、ごみが堆積していた。

20世紀末から2002年ごろまでは、ごみ山の周囲に柵は設けられておらず、侵入するのはごみ山を登ればよかった。ここで腐ったごみから発生するメタンガスを利用したバイオガス発電があるが、これをクリーン開発メカニズム(CDM)として注目するよりも、スカベンジャーとジャンクショップの連携したマテリアル・リサイクルに注目すべきであろう。

男ジャンクショップ1
写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場に隣接したジャンクショップ(屑屋)
:スカベンジャーのもってきた有価物を書類別に計量して、有価物として買い取るのがジャンクショップである。スカベンジャーは、ゴミを拾い、再利用出来るものを有価物として、ジャンクショップに売って生活している。スカベンジャーの集めているのは、プラスチック・空き缶など金属類・ガラスビン・段ボール・紙・廃材・家具・家電製品・使い捨て食器・コンデンサー・バッテリーなど。

マニラ首都圏ケソン市パヤタス廃棄物最終処分場の周囲には、たくさんのバラック住宅が密集している。住民のお宅にお邪魔してお話を伺った。正規の住宅賃借権ではないが、土地の持ち主に地代を支払ってバラック住宅に住んでいる。インフォーマルセットラー(不正規居住者)・スラム住民といっても、只で住まわせてもらっているとは限らない。



じゃんく2
写真(右)2015年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場から有価物を集めてきたスカベンジャー。
パヤタススラムにあるジャンクショップ(屑屋)に分別した有価物を売却に持っていく。ごみから有価物を分別収集したスカベンジャーは、ジャンクショップに持ち込んで、有価物として買い取ってもらうのである。

マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場、マニラ首都圏トンド地区の河川の周りには、水上家屋も含めバラック住宅が密集している。そこでは、各家庭に水道は敷設されていない。

この井戸水は、洗濯や食器洗いに使用するが、飲料はできない。日本では、食器や手洗いだけでなく、洗車するのにも、水洗トイレでも、飲料可能な水道水を大量に消費する。

スカベンジャー9
写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場から有価物を集めてきたスカベンジャー。:ゴミ収集車の中から、有価物になるプラスチック、PET,段ボール、金属などに分類している。分別した後で、近くのジャンクショップ(屑屋)に販売するのである。

マニラ国家首都圏(NCR:National Capital Region)のケソン市パヤタスやマニラ市トンド地区にある大規模なスラム街を訪問し、スカベンジャー(ゴミ拾い)世帯に聞き取り調査を行った。ここはバラック住宅が密集し、インファーマルセトラー(不正規居住者)が多数居住している。捨てられたトタン、ベニヤ、ビニールシート、釘、針金、ベットのスプリング、柵、鉄格子など廃材を材料として、バラックを建てて住んでいる最貧困層である。

じゃんく7
写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場から有価物を集めてきたスカベンジャーたち。
:ジャンクショップ(屑屋)に有価物を売りに行く前に、ごみから収集した有価物をスカベンジャーが分別している。

2000年7月10日、パヤタス廃棄物最終処分のごみ山崩壊の人身事故が発生した。大雨のが降り続き、ごみ山が高さ30メートル、幅100メートル に渡り崩落し、数ヘクタールが被害を受けた。そして、付近に建てられていたスラムのバラックが400軒(住民2000人近く)が被害を受け、死者234名、身元不明者数十名の人身事故となった。この事故は世界中に報道されたために、事故後に復旧が進み、政府高官が出席する慰霊祭を行うために、アクセス道路、周囲の住宅のコンクリートブロックによる再建が図られた。慰霊祭会場には、広場と屋根が掛けられ、記念碑が設けられている。

スカベンジャー9
写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場から有価物を集めてきたスカベンジャー。
:有価物になるプラスチック、PET,段ボール、金属などに分類してジャンクショップ(屑屋)に販売している。ジャンクショップは、有価物を種類別に計量して、重量当たり単価を斟酌して、スカベンジャーに現金を支払う。

フィリピン政府は、2000年7月10日、パヤタス廃棄物最終処分のごみ山崩壊の被災者のために、10 キロ離れたリサール州モンタルバン市カシグラハンを移住先とした。しかし、住居は整っても、スカベンジャーだった住民には雇用機会がない。そこで、カシグラハン移住は、貧困者にとって、決して生活保障とはならなかった。

スカベンジャー9写真(右)2014年8月、マニラ首都圏ケソン市パヤタス最終処分場から有価物を集めてきたスカベンジャーから有価物を買い取るジャンクショップ(屑屋)。:有価物になるプラスチック、PET,段ボール、金属などに分類してジャンクショップ(屑屋)に販売する。

聞き取り調査の基本は、コミュニケ―ションで、双方向の情報のやり取りである。質問者の気持ちや考えをわかってもらう、どんな人物で、なぜこんなところに来ているのか。相手に、一番わかりやすいのは、質問者の抱いている好奇心である。この一日、午前から午後まで、歩き回っていれば、住民が挨拶してくれる、話しかけてくる。自己紹介して、何しに来たかのチャットが、フィールド調査の始まりである。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区のスラムと水上家屋。:家屋は、トタン、木材、ビニールシート、ベットのスプリングなどでできている。マニラ市パヤタスのスカベンジャー(ゴミ拾い)世帯は、プラスチック、金属、段ボール、ガラスなどリサイクル可能な有価物を収集し、それを売却して生活している。その家庭用エネルギーの供給は、調理に使う木炭や廃材などバイオマスエネルギーが担っている。 筆者撮影。

フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンドのバランガイキャプテン(Barangay Captain)にも鳥飼ゼミナールは聞き取りを行った。ここに来る外国人もいないが、住民もやってきた日本人に親切に応対してくれる。このような地区では、井戸はあっても水は汚染されており、飲料水とはならない。しかし、この川の水で荷袋の洗浄をしている。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区リサイクルするプラスチック製荷袋を洗浄しするっ住民。:河川の汚い水を使って洗濯しているのは、節水、節約のため。このような地区では、井戸はあっても水は汚染されており、飲料水とはならない。しかし、このような地区では、井戸はあっても水は汚染されており、飲料水とはならない。しかし、この川の水で荷袋の洗浄をしている。筆者撮影。

このトンド地区のバランガイには、縫製作業を待つプラスチック製麻荷袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、南京袋、Sako:タガログ語)の山がある。これは、荷袋の修理・リサイクルであり、ここに荷袋の製造工場があるのではない。住民の多くが、袋(サック)縫製作業を主な生業にしている。洗った荷袋にはほつれが多いので、ほぐしてミシンを使って手早く袋を縫い上げてゆく。

リサイクルしたPP製サック(南京袋:woven polypropylene bags)を400枚を1台のトライシクルに積んで、売却に行く準備をしている。PP製サック(南京袋:woven polypropylene bags)を1人が1日200袋洗って100ペソから300ペソの収入となる。川で洗ったPP(polypropylene)製サック(南京袋)をミシンで縫う作業は1枚当たり2ペソの収入となる。リサイクルできたサックは、トライシクル1台にPP(polypropylene)製サック400個を積んだ。世界市場では、袋1kg当たりの価格は$0.10 USD Kg.から$0.30 USD Kg.である。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区、住民によるプラスチック製(PP加工)ジュート袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、南京袋、Sack)の縫製作業。:このような麻荷袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、Sack:タガログ語Sako)を縫製しリサイクルする作業が主な生業になっている。ミシンを使って手早く袋を縫い上げてゆく。

リサイクルしたPP(polypropylene)製サック(南京袋:woven polypropylene bags)をトライシクル(Tricycle)に積んで売却に行く。トライシクルに積んで売却に行くところを聞き取りした。

スラム住民への聞き取り・フィールド調査によって、生活の質(QOL)、ベーシックヒューマンニーズの充足、電気エネルギー、木質バイオマスエネルギーから「民活による循環型社会形成促進」の考察にまで、新しい発見と発想を得ることができると思われる。それとも、これは完全な誤解であり、ごみや廃棄物を再利用した暮らし、廃プラスチックの屋根、廃材のエネルギーなどを利用する貧困者を、循環型社会の一員と見なすのは、見当違いなのであろうか。

開発途上国、特にフィリピの都市インフォーマル部門におけるスラム、スカベンジャー、ジャンクショップなど草の根民活に依拠した循環型社会の一端は、鳥飼行博研究室右のアジア写真集の、廃棄物処理場、パヤタス、スモーキーマウンテンなどに掲載されている。
「消費者行動論」講義コンテンツ

Circular Society

 現代日本の視点では、循環型社会(Circular Society)を形成しようとして、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建設リサイクル法、食品リサイクル法、自動車リサイクル法など多数のリサイクル関係法を整備しているが、これは循環型社会を規制型環境政策で構築しようという枠組みにとどまっている。豊かさを享受する人々が溢れている成熟社会では、市民の環境意識が改善され、環境倫理が認められているはずだが、やはり個人個人の自発的な環境活動だけでは、循環型社会は構築できない、環境より経済が重視されてしまうことなのであろうか。公的介入を伴う循環型社会が前提となっているのはやむを得ないであろう。

他方、開発途上国の国民は、環境意識が十分でなく、循環型社会に興味がないので、大量のごみが投棄されている、海洋廃棄物もマイクロプラスチックも開発途上国の無定見な廃棄物政策が原因であるとする開発途上国環境脅威論が唱えられている。

しかし、開発途上国のスラムや貧困者をよく調べてみると、先進工業国のような規制型環境政策ではなく、民間の自発的な経済活動が、創意工夫、危険な労働、児童労働を伴いながら、民間主体の循環型社会を形成している局面も観察できる。これは、もったいないという節約意識に基づき、廃棄物の中から使える物資を回収、再利用したり再生したりする都市インフォーマル部門を中心とした民間活動であり、草の根民活と呼称することができる。従来の開発経済学では、低所得の貧困者、社会的弱者、違法居住者の住む不衛生なスラムなど問題視されていたマイナス局面ではあるが、この発想を転換して、貧困者主体の草の根民活による循環型社会形成の可能性を見出そうとする研究である。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第5章 労働力移動と労働問題」の都市インフォーマル部門から、開発途上国の廃棄物問題を「もったいない」という節約のブリーン経済から考察し、貧困者のベーシックニューマンニーズ(Basic Human Needs)の充足と循環型社会の形成を同時に考察してみたい。これは開発途上国の貧困解消だけではなく、汎アジア型循環型社会の形成のために、日本も環境協力に参加すべきであることを示している。
 
日本は、アジア諸国を中心に古紙、廃プラスチック、廃家電・廃車、廃船など「再生資源」のようにして輸出している。しかし、日本で需要のないこれらの輸出品は、商品でではない。有価物であったとしても、保管料・輸送料・撤去料・取引手数料を考えれば、輸出して収益が上がるものではないのであり、これを「ごみ」という。廃棄物輸出には、厳格な規制があるが、商品にはないので、形式上「再生資源」「商品」の輸出として扱っているが、そのなかには事実上のごみ輸出が多数含まれている。
 
環境協力とは、環境リーダーシップをとって、国際社会で冠たる地位を得るために行うものであろうか。それとも、過去の一人当たり廃棄物、有害化学物質排出の多さから、環境債務を累積させてきたことに注目し、その環境債務返済のために行うものであろうか。汎アジア瞬間型社会形成促進のために、日本が環境協力を申し出るとすれば、それは環境債務の返済か、それとも環境リーダーとしての輝かしい一歩になるのか、どちらであろうか。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室アジア写真集やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。

「消費者行動論」講義コンテンツ

Virtual lecture onLine

2017年の年間CO2排出量(フロー)は、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と続いている。
大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)二酸化炭素排出削減は、不可能である。そこで、次善の策として、フローの国民一人当たり排出量削減の方法を考察した。
 
第一に、エネルギー原単位(Energy/GDP)の引下げ、とくにそのための産業構造高度化を検討した。第二に、LCAで計測して温室効果ガス排出の少ないエネルギー(CO2/Energy)を開発・普及するというエネルギー選択を検討した。これは、フローのエネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量(β)を削減することを意味する。

しかし、実は再生可能エネルギーの開発・普及だけでは、不可能である。化石燃料を従来どおり消費し続けていれば、いくら再生可能エネルギーの消費が増えても、CO2の排出は減少しない。再生可能エネルギーを開発して、それを化石燃料に置き換えるエネルギー代替が必要である。つまり、CO2排出削減のためには、石炭・石油・天然ガスという化石燃料の消費を減少させなくてはならないのである。

換言すれば、二酸化炭素排出の多い化石燃料など枯渇性エネルギーを、二酸化炭素排出が少ないエネルギーに変更・代替することが求められる。つまり、再生可能エネルギーの開発と並んで、化石燃料消費を減少させるようなエネルギー代替が必要である。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、地球温暖化対策税の一環として、炭素税(Carbon Tax)を考えてみよう。これは、二酸化炭素排出(CO2)するエネルギーに対して、排出する炭素(CO2)に応じて税金を課する方式で、広義の環境税である。課税額は、化石燃料などエネルギー消費(Energy)によるので、石炭・石油・天然ガスにの順にCO2排出が多いので、税額もこの順に高くすればよい。

二酸化炭素の排出量に応じて、化石燃料にt%の課税をすると仮定しよう。すると、石炭に対しt%課税すれば、税抜き価格の石炭価格がPとすれば、税込みの石炭価格は(1+t)Pと課税分だけ高くなる。

他方、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギー発電のコストは、分散型の小型発電所のために、一般化できる輪でではないが、火力発電に比較して高額である。例えば、資源エネルギーの推計のように、石炭火力発電のコストを1kWh(キロワット時)当たり10円とするなら、風力発電・太陽光発電の発電コストは1kWh(キロワット時)当たり30円程度はかかるであろう。例えば、火力発電の価格(発電コスト)をp、再生可能エネルギー発電の価格(発電コスト)をqとすると、現在の市場の価格体系の下では、次の関係が成り立っている。

p<q

例えば、1kWh当たりの発電コストは、石炭・重油、液化天然ガス(LNG)を燃焼する火力発電では10円、風力発電など再生可能エネルギー発電では30円から45円という価格差があり、再生可能エネルギー発電は、「地球に優しい」という利点はあっても、経済合理的な活動のためには、選択されない。発電コストの安い火力発電は、開発途上国でも幅広く採用されているのである。つまり、グローバルな経済活動を踏まえれば、国際的にも環境負荷型価格体系が成立しており、その下での経済合理的活動によって、経費の割安な火力発電が普及しているのである。

つまり、環境負荷型価格体系が成立しているグローバルマーケットでは、環境負荷の大きな火力発電がコスト(p)が割安なために選択され、二酸化炭素を大量に排出しているといえる。風力発電、太陽光発電のような二酸化炭素排出の少ない再生可能エネルギー発電は、発電コスト(q)が高くなり、経済合理的な活動では選択されない傾向がある。企業や政府が、宣伝活動の一環、環境プロパガンダとして、再生可能エネルギー発電を導入することはあっても、それが経済活動を支えることはない。また、消費者も、政府・自治体の補助金や再生可能エネルギー買い取り制度がなければ、太陽光発電や風力発電を行うことは、コストの上から難しい。換言すれば、環境意識があっても、環境負荷型価格体系の下では、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替は進展しないといえる。

消費者・地球市民は意識改革を経て環境意識が高いが、節約意識も強く、発電コストの上で、経済合理的活動として、割安な火力発電が選択される。つまり、グローバル市場において、化石燃料の価格が安く、再生可能エネルギーの価格が高価であるという環境負荷型価格体系が存在している以上、資源エネルギーは環境負荷の大きな化石燃料が普及することになる。地球市民が育成されたとしても、環境意識だけでは、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替が行われず、「地球に優しい・環境調和型エネルギー」は普及するのが難しいといえる。

そこで、環境調和型エネルギーのほうが割安になるような環境調和型価格体系に変更するような環境政策が求められることになる。これは、経済インセンティブを活かすために、化石燃料を使う火力は発電の価格(p)を環境税・炭素税(t)を賦課して引上げ、再生可能エネルギー発電の価格(q)に環境補助金(s)を交付して相対的に低下させることである。つまり、炭素税tと環境補助金sを使って、価格体系を環境調和型に変更する「インセンティブ型環境政策」が有効であると考えられる。

(1+t)p>(1ーs)q

このような環境税を賦課した後の税込みの価格体系は、環境調和型エネルギーのほうが、環境負荷型エネルギーよりも割安になる。そこで、経済合理的に行動する消費者・生産者は、割安のエネルギーとして、再生可能エネルギー発電を採用するのである。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、「環境調和型の価格体系」を形成し、消費者・企業の経済合理的な活動が、再生可能エネルギーの開発普及、枯渇性エネルギー消費抑制に結び付く環境税の有効性を理解してもらいたい。化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替の手段としての炭素税に注目していただきたいのである。

そのうえで、鳥飼行博研究室左バナーボタンの公開論文、国立情報学研究所 鳥飼行博 掲載論文一覧「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を熟読してもらいたい。
さらに、鳥飼行博研究室左バナーボタンの研究業績、紀要論文「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を引用して、気候変動安定化のための環境税をまとめてもらいたい。

批判的検討のレポートサンプル

Report writing

講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』から、地球温暖化の要因について、環境債務になる国民一人当たり二酸化炭素排出量の要因を、エネルギー原単位α、エネルギー消費当たり二酸化炭素排出量β、一人当たり所得yに基づいて表した簡単な因果関係式z=α・β・y、の因果関係式を得た。

そこで、教科書「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、インセンティブ型環境政策として、環境税・炭素税の有効性を、簡単な式を使って説明し、発電コストを踏まえて環境調和型価格体系を形成する重要性を、環境意識、勘定という単語を使って述べよ。

さらに、鳥飼行博研究室左バナーボタンの公開論文、国立情報学研究所 鳥飼行博 掲載論文一覧「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を引用して、気候変動安定化のための環境政策をまとめてもらいたい。

◆このレポートは、サンプルですので、実際の課題はmanaba「レポート」を参照。

東海大学HK社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境協力論」「開発経済学」「消費者行動論」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1 
東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
Kanagawa,Japan259-1292
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