このように日本では、産業用の用材生産ではなく、開発途上国の貧困者による薪炭生産が森林減少の一番の原因とされることが少なくない。これは、国連農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)の講評している統計データからも確認できる。つまり、世界の木材生産は、産業用の用材生産とエネルギーようの薪炭生産とに区分できるが、特に広葉樹林から成る熱帯林のある開発途上国では、薪炭生産が多く、これが樹木の伐採、森林減少に繋がっているというわけである。
このような熱帯林には、商業的な用材の販売以外、市場取引を経由しないで利益をもたらすような外部経済が特徴であるが、そこでフリーライダーが蔓延すれば、森林減少が続いてしまう。また、貧困状態にある住民は、科学知識がなく、怠け者であり、森林管理の仕方を知らないし、森林管理のための経費や労力の負担を避けてしまうために、森林を守ることは不可能であるというのである。森林管理の仕方に無知であることを口実にして、モラルハザードに陥ってしまい、森林を無秩序に伐採してコモンズの悲劇(The Tragedy of the Commons)を招来してしまうのであろうか。過剰な森林利用をするフリーライダーになってしまうのであろうか。これは、外部経済のフリーライダーに注目した「コモンズの悲劇」である。
しかし、地域コミュニティの住民が利用する里山・森林は、外部経済を地域住民にもたらすが、その受益者たる地域住民は、現地に居住しているのであり、森林を熟知している、地域コミュニティ住民相互も情報共有から、住民の間に信頼関係が生まれている。このような地域コミュニティ住民ンお間で、過剰な森林伐採というフリーライダー的行動によるコモンズの悲劇(The Tragedy of the Commons)が起きるのであろうか。地球市民の森林利用の外部経済と地域コミュニティ住民の里山利用の外部経済とを比較することで、森林管理に必要な条件が見えてくる。
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