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◆熱帯林保全のための環境政策

中国雲南省点描

 Yunnan China

 
 

寺
牧畜では、牛の放牧が中心だが,馬,ロバ,ヤギ,水牛を飼育するコモンズ利用型放牧も行われる

中国南部の農村部では、このような広々としたローカルコモンズを活用して、コモンズ利用型放牧が行われる。ここ雲南省剣川県の山村では、2004年9月、1週間民宿(客桟)に泊まって付近を調査した。

牧畜剣川県(Jianchuan)にあるこの村は、盆地に位置していて、稲作地、タバコ畑が広がっているが、ローカルコモンズを活用した牧畜(コモンズ利用型放牧)も盛んである。このれは、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会に通じる持続可能な開発の一形態である。

寺
雲南省剣川県(Jianchuan)寺院
 剣川県(Jianchuan)の総人口は17.21万人,そのうち農業人口15.52万人,非農業人口1.69万人;白族人口が総人口の92﹪を占め,全国で白族人口比率が最高の県で“白族之郷”といわれる。

 集落には農村家内工業労働者もいるが、みんなが同じ傾斜地や道脇の草を利用するコモンズ利用型放牧の姿は、懐かしくもあり、仲間の団らんのように見えてしまう。これは、地域コミュニティという地縁・血縁と賃金労働という就労が分離できない状況を反映している。現代日本では「仕事」と「家族」という概念が完全に分離している。

日本でも、同じような取り組みが行政によってはじめられている。山口県畜産試験場放牧管理グループが名づけた「山口型放牧」とは、妊娠中の和牛を簡単な電気牧柵で囲んだ耕作放棄地などに放して、雑草や下草を食べてもらう放牧であり、「いつでも、どこでも、だれでも」簡単にできる放牧の技術であるという。
 隣村まで歩いても15分だが,例祭とあって「三輪タクシー」に仲間で乗ってくるお婆さんたちもいる。乗車時間7分で1人1元。隣町は山の傾斜地に集落があり,渓谷を中心とした盆地には,農地が広がる。幾重にも重なる山並みの谷間に,水田やタバコ畑が見える。

フィリピンカリンガ州

 Cordillera Administrative Region

 
山村ツルガオの棚田1
写真(右)2012年8月、フィリピン共和国コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR))カリンガ州チコ川渓谷にあるティンラヤン町山村ツルガオを訪問し、稲作や生活について、毎年のように聞き取り調査を実施している。

カリンガ州ティンラヤン町ダナナオツルガオの周囲にも棚田が広がっている。

カリンガ州山村棚田
写真(右)2012年8月、フィリピン共和国ルソン島北部のコルディリェラ行政地方ティンラヤン町ブスカランの棚田。この地域は、言語、文化の点でフィリピン独自の地位が認められている。地方政府として、独自の議会、条例が認められている。


Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室写真館やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。

「森林破壊」講義コンテンツ

Environmental Cooperation



鎮守の森と地域コミュニティそして現代社会との新たな関わりを考えるシンクタク「鎮守の森コミュニティ研究所」(Chinju-no-Mori (Grove of the Village Shrine) Community Research Institute)は1)鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想、 2)鎮守の森セラピー(森林療法)、 3)祭りと地域再生・活性化、を研究プロジェクトとしている。そして、次のように主張している。

ヨーロッパの国々、たとえばドイツの地方を車や列車で旅すると、小麦畑のあいだに時々あらわれる村の集落の中心に、必ず教会が立っているのが印象に残ります。こうしたことは、あくまでヨーロッパの話で、日本ではまったく文化的背景が違うと以前は思っていましたが、ある時から決してそうではないと考えるようになりました。

思えば、祭りや様々な年中行事からもわかるように、日本では地域やコミュニティの中心として神社やお寺がありました。はじめて知った時ずいぶん驚いたのですが、全国に存在する神社・お寺の数はそれぞれ約8万1千、約8万6千にのぼります。中学校の数は全国で約1万、あれほど多いと思われるコンビニの数も5万弱なので、これは大変な数と言えます。 これほどの数の“宗教的空間”が全国にくまなく分布している国はむしろ珍しく、戦後、急速な都市への人口移動と経済成長へのまい進の中で、そうした存在は人々の意識の中心から単に一時的にはずれていっただけなのです。

加えて興味深いのは、日本の神社やお寺と「自然」との結びつきです。「鎮守の森」という言葉が象徴するように、そこでは森や木々などの自然が不可欠なものとなっており、自然の中に、物質的なものあるいは有と無を超えた何かを見出してきた生命観・宇宙観をよく示しています。そしてこれは、決して日本のみに限らず、地球上の様々な地域におけるもっとも基層にある自然信仰や世界観と通底していると思われます。

さて興味深いことに近年、地域コミュニティへの関心が高まる中で、こうした神社やお寺という、高度成長期に人々の関心の中心からはずれていった場所を地域の貴重な“社会資源”として再評価し、それを子育てや高齢者ケアなどの福祉的活動や、環境学習等の場として活用するという例が現れてきています。 本研究所は、以上のような関心を踏まえ、自然やスピリチュアリティ(物質的なものを超えた精神的価値)と一体になったローカル・コミュニティの拠点としての「鎮守の森」を軸として、自然エネルギーやケア、地域再生との関わりなど、現代におけるその新たな意義と可能性を、具体的な活動とともに探求していくことを目的とするものです。 (鎮守の森コミュニティ研究所/引用終わり)

フォレスト パートナーシップ プラットフォーム」は「森林保全活動により再生もしくは保護・保全した森林の持続性を確保するためには、地域社会と共存する森林となるような活動を行う必要があります。しかし NGO/NPO からは、企業による森林保全活動の課題として「植林の環境・社会影響が十分配慮されていない」という点が指摘されています」と述べている。そして、次のように主張している。

環境や社会に配慮した、地域社会と共存する森林保全活動を実現するための留意点としては以下の3点が考えられます 。

1)活動を行う際、現存する天然林やその他の自然生態系からの転換を回避、もしくは適切な配慮を行う(大面積を利用する植林事業においては、事前に適切な影響評価を実施するなど)。

2)活動予定地を利用している先住民族や地元コミュニティなど、利害関係者がいるかどうかを事前に十分確認すること。もしこれらの利害関係者に影響を与えることになる場合には、既存の森林利用の権利や生計の手段などに適切な配慮を行うこと。

3)活動計画の策定に当たっては、先住民族や地元コミュニティ、NGO、行政機関、その他のステークホルダーの参画を十分に図り、そこから得られた意見を計画に反映させること。

企業自身が以上のような留意点に配慮することが重要ですが、NGO/NPO と連携して森林保全活動を行う場合には、連携先のNGO/NPO もこれらの留意点に配慮しているかどうかを確認して連携を進める必要があります。

フォレスト パートナーシップ プラットフォームの上げる「コミュニティ林における森林減少と劣化による排出量の削減/CCB(気候・地域社会・生物多様性プロジェクト設計)スタンダード・ゴールド認証」(Climate, Community & Biodiversity Project Design Standards, Second Edition)の事例

認証対象地
•名称:コミュニティ林業地におけるREDD
•場所:カンボジア王国オッドーミエンチェイ州北西プロヴィンス
•面積:56,050ha 低地の常緑樹林、落葉樹林

認証取得団体名
カンボジア政府森林局(The Forestry Administration of the Royal Government of Cambodia)

概要:カンボジアでは、森林周辺地域の住民に対して、慣習的な森林利用の権利が認められています。コミュニティ林業(CF)の設置が1990年代より援助機関によって推進され、2000年代には、関連する法制度が整備されました。このようなコミュニティ林業の制度を基盤として、森林減少を抑制すると同時に、地域住民の生計向上も図ることを目的として、REDDプロジェクトがカンボジア北西部のオッドーミエンチェイ州で2008年から開始されました。

対象は13のコミュニティ林業グループで4つの郡、9つの町、58の村にまたがっています。プロジェクト実施者であるカンボジア政府森林局のパートナーとして、様々なNGOや仏教組織などが関わっています。

認証取得の経緯:この地域の森林は、商業伐採、違法伐採、森林火災、経済的目的のコンセッションや不法侵入などの強い圧力にさらされてきました。2002〜2006年の森林減少率は、毎年2%と推定されています。

このプロジェクトでは、森林に蓄積されている炭素量を認証するためにVerified Carbon Standard(VCS)という認証制度を利用し、炭素の排出だけでなく生物多様性の保全や地域住民の生計向上への配慮も担保するためにCCB基準による認証を目指し、2008年からの準備期間を経て、2012年10月にCCBとVCS双方の有効化審査を終了し、現在認証に向けた検証審査を実施しています。

森林保全と再生活動を行うことで発生する炭素クレジットを活用して、オッドーミエンチェイ州の持続可能な森林管理と地域住民の生計向上を図ろうとしています。 (フォレスト パートナーシップ プラットフォーム/引用終わり)

開発途上国政府は、保有する公有林において、用材生産をし、土地を改変して企業的農業、プランテーションを始めるために農地を拡大している。林道を拡張し、新たに入植した大企業は、大規模経営の農地、プランテーションによって、バイオ燃料となる大豆生産、パーム油の生産、牧畜による肉牛生産を始めるが、これが輸出にも繋がるアグリビジネスでもある。熱帯林の繁る土地を、経済的に収益を上げることのできる農地に改変して、グローバル市場を目指した農作物由来のバイオ燃料、パーム油、や食肉を生産する巨大なアグリビジネスを展開しているのである。これは、熱帯林を市場に内部化し、アグリビジネスの商品として販売すること、すなわち「使い捨てにされる熱帯林」である。

地球市民は、森林の多面的機能、熱帯林の外部経済について熟知していたとしても、フリーライダーtであり、森林の持ち主や利用者に対して何ら寄与することがない。

 しかし、里山を利用している地域コミュニティ住民は、外部経済として、無償のバイオマスエネルギーを利用しているが、フリーライダーではない。彼ら住民は、森林を暗黙の契約(地域コミュニティのルール)に従って、大切に使っている。外資も導入して広大な熱帯林を企業的フロンティア開発の対象とする企業とは異なって、現地に密着した地域コミュニティ住民は、先進工業国の政府開発援助(ODA)や都市銀行の融資を受けることはなく、貧困ではあっても民生エネルギーを供給してくれる里山を自主的に大切に使っていいるが、これは暗黙の契約に基づいた森林管理と同じ意味を持っている。

国連農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)の公表している統計データからみれば、開発途上国における用材生産は、薪炭生産よりも少ないとして、貧困者の薪炭生産が熱帯林を破壊していると批判されている。同様に、貧困者が農地を確保しようとして熱帯林を燃やして焼畑をしている、これが宇宙から観測されるので、焼畑が熱帯林減少の要因であるとされている。

しかし、地域コミュニティに住む貧困者は、森林が持つ外部経済、公共財の特徴を重視しており、バイオマスエネルギーを供給してくれる熱帯林の必要性を十分に理解しているので、「コモンズの悲劇」は生じない。現代のグリーン経済とも関係している環境調和型の森林利用と同じ枠組みで捉えるべきであろう。

貧困者は、焼畑をしているとしても、森林の伐採権、土地利用権など財産権を有しているわけではない。しかし、熱帯林の利用者、占有者として、慣習的に自己の財産と見なし、国有地、州有地など公有地の森林を無償利用してきた。熱帯林の利用権があると認識している地域コミュニティ住民は、熱帯林を里山として、暗黙の裡に、適正な森林管理の下に置いていると考えられる。

鳥飼行博研究室の左バナー・ボタン公開論文の中ほど国立情報学研究所 鳥飼行博 掲載論文一覧「熱帯林減少とその適正管理--地域コミュニティによる住民参加型の森林保全」を熟読し、貧困者による違法な焼畑や開墾よりも、地域コミュニティ住民による森林利用、森林管理に配慮した議論を展開してもらいたい。

「森林破壊」課題レポートサンプル

Report writing

<レポート課題サンプル>

講義コンテンツと鳥飼行博著テキスト『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』「第9章 地球環境問題」を引用しながら、焼畑や農地拡大が森林伐採にどのように繋がるかを考察しなさい。
その際、鳥飼研究室左バナー「アジア写真集」所蔵の
(中段)熱帯林の衛星映像 Deforestation
にリンクし、貧困者と大企業の森林の財産権・利用方法を対比させ、掲載の写真から判読できる点にも言及すること。(先の課題)

また、鳥飼行博研究室の左バナー・ボタン研究業績の中ほど紀要論文「熱帯林減少とその適正管理--地域コミュニティによる住民参加型の森林保全」を引用しながら、熱帯林減少の要因とその保全の方法を、地域コミュニティ住民に注目してまとめなさい。

1)先の課題と今回の課題のまとめて、レポートをワード(Word)で作成、添付ファイルとしてレポート提出機能で送信。
2)文字数は、1200文字以上3200文字以下の予定。他サイトの引用は不可。
3)まとめレポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
上記は課題サンプルですので提出には及びません。

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境政策I/II」「開発経済学」「環境協力論」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。

連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1
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鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
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Kanagawa,Japan259-1292
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