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◆産業向け用材生産に起因する熱帯林破壊

写真(右):2013年,マレーシア、ボルネオ島、伐採されて土壌浸食を起こしている森林。伐採現場にアクセスする林道では、降雨のために赤土がむき出しになり、土壌侵食が進む。林道周囲の樹木も倒れたり、枯れたり被害を受けるが、これは用材生産の闘鶏データには含まれない。
English: Coal mines like the Lumbung Mine are having a huge impact on local and indigenous populations in Indonesia, destroying the environment and polluting river water, normally used for cooking. Central Kalimantan, Borneo. June 8th 2013. The World Development Movement is campaigning for banks and other parts of the financial sector to be forced to disclose the carbon footprint of their investments. Date 8 June 2013, 04:59:10
写真はWikimedia Commons File:Deforestation in Borneo.jpg 引用。

写真(右):2014年,ブラジル、パラ州、熱帯林伐採地。1本の大木を伐採するには、アクセス道路や運搬のために数倍の樹木がなぎ倒される。また枝葉も不必要とされ切り捨てられる。このような無為にされる木材の数量は、用材生産の数量には含まれない。
Tronco derrubado por desmatadores na Floresta Nacional do Jamanxim em Novo Progresso, Pará. Foto: Vinícius Mendonça - Ascom/Ibama. Date 1 June 2014, 00:00 Source Operação Onda Verde, 2014 Author Ibama from Brasil
写真はWikimedia Commons File:Operação Onda Verde, 2014 (29310847581).jpg引用。

写真(右):2011年,サブサハラ・アフリカ、カメルーン、伐採されてトラックで運搬される用材。伐採現場にアクセスする林道では、降雨のために赤土がむき出しになり、土壌侵食が進む。林道周囲の樹木も倒れたり、枯れたり被害を受けるが、これは用材生産の統計データには含まれない。
Grumier embourbée dans la forêt d'Eseka dans le Littoral pendant la saison des pluies. This is an image with the theme "Africa on the Move or Transport" from: Cameroon Date 3 September 2011
写真はWikimedia Commons File:Operação Onda Verde, 2014 (29310847581).jpg 引用。

貧困者は、節約、もったいないの意識が高い貧困者は、少ないエネルギー利用で調理を済ませたいので、薪や木炭を節約する。他方、企業は、森林から上げられる用材生産の収益を最大化するように行動する。山村、農村では、バイオマス・エネルギーを活用するために薪炭生産がなされているが、これは地域コミュニティの暗黙の契約の形で、森林管理の下にある。他方、私的な伐採権が確立された森林で、企業は、森林の多面的機能ではなく、商業的価値のある木材、すなわち用材生産にのみ森林を活用する。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室写真館やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。


5月下旬には、生協東海大学出版部などでテキスト(教科書)『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部の入手が可能です。「環境政策I/II」授業は、テキストを手元に置くことが前提ですが、教科書入手できていない履修者に配慮して、5月中は、講義部分だけ教科書をPDFで開示しました。6・7月以降の受講には、テキストが必須です。入手しないと講義は理解できません。

「森林破壊」講義コンテンツ

Environmental Cooperation



森林には、次のような多面的機能がある。
1)木材生産機能
2)生物多様性保全機能
3)CO2貯蔵による地球温暖化抑制機能
4)保水機能・土壌保全機能
5)無償の再生可能エネルギー供給・生物・林産物の供給機能

薪炭生産・消費に関して、『きこりのホームページ』では、森林破壊の原因は、貧困・人口爆発とこれを背景にした薪や木炭の生産であると指摘している。
『フォレスト パートナーシップ 』も、森林破壊の原因は、無秩序な薪や木炭の生産であると指摘している。
『Open ブログ』も、森林破壊の原因は、無秩序な薪や木炭の生産であると指摘している。

このように日本では、産業用の用材生産ではなく、開発途上国の貧困者による薪炭生産が森林減少の一番の原因とされることが少なくないが、、里山を利用する住民や地域コミュニティは、森林の多面的機能、特に保水機能・土壌保全機能、無償の再生可能エネルギー供給・生物・林産物の供給機能を活用しているのであって、経験的に森林の重要性を熟知している。その森林を無秩序に伐採し、土壌浸食を起こし、森林破壊を引き起こすような森林の過剰利用、収奪的利用は抑制されている。

国連農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)の公表している統計データからみれば、開発途上国における用材生産は、薪炭生産よりも少ないとはいえ、無視できる数量ではない。つまり、世界の木材生産は、産業用の用材生産とエネルギーようの薪炭生産とに区分できるが、特に広葉樹林から成る熱帯林のある開発途上国では、薪炭生産だけではなく、用材向けの樹木の伐採が、森林減少に繋がっている可能性も大きい。

ここで用材生産は、薪炭生産と異なり、外部経済ではなく、市場で取引されることで利益をくみ取ることができる。したがって、森林の減少は、営利を目的にした林業、用材生産が引き起していることになる。

森林が持つ外部経済、公共財の特徴は、実はローカルな視点で地域コミュニティの森林利用、地域コミュニティのグリーン経済と住民の関係が重要になる。他方、用材生産は、企業営利活動の一環、場合によっては国際貿易目的の大企業によるビジネスである。したがって、現地森林を利用する住民や周辺の地域コミュニティと、伐採企業・木材輸送企業、輸出商社との関連は弱いか、ほとんどない。そのような状況で、森林を伐採する企業は、伐採する鈴々の重要性・森林の多面的機能を考慮することがあるであろうか。伐採跡地のことをどれだけ真剣に考えるであろうか。

1)用材生産をするための伐採では、大きな価値のある樹木を選んで選択的な伐採、すなわち択伐をするので、森林破壊は生じないという論者がある。しかし、この1本の価値ある大木にどのようにアクセスし、どのように運搬するのか。林道建設、アクセス途上の雑木の排除に配慮すれば、大木周辺の樹木がなん十本も伐採されることになる。用材採算に際して、切り捨てられる枝葉、アクセスに際して薙ぎ倒される雑木、林道建設に伴う土壌侵食などデータに計上されない不用な木材体積は、用材生産の統計データの2倍から3倍はあると推測できる。

2)用材生産をした伐採企業に、伐採跡地の植林・造林を義務付けることも行われている。しかし、資金・資本・技術・労働力を有する大企業はなん十年もかかる植林・造林にどれほど真剣に取り組むであろうか。バージン資源として、大木の繁る熱帯林の伐採権をすぐに購入するほうが割安な場合が多いことを踏まえれば、植林・造林の義務付けが実効が上がるかどうかには疑義がある。

鳥飼行博研究室の左バナー・ボタン公開論文の中ほど単著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版会 「第9章 地球環境問題」を熟読し、用材生産を目的にして、企業がどのように森林を伐採するかを考察してもらいたい。

「森林破壊」課題サンプル

Report writing

<レポート課題サンプル>

講義コンテンツと鳥飼行博研究室の左側にある研究業績の『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』「第9章 地球環境問題」を引用しながら、熱帯林の減少を引き起こしているとされる要因を4つに整理して、世界・開発途上国における木材生産の過半を占める薪炭生産が熱帯林減少の最大の要因であるとの説を批判的に検討しなさい。

その際、鳥飼研究室左バナー「アジア写真集」所蔵の
(左段)中国 薪採取とバイオマス Harvesting Firewood in Commons (右段)フィリピン カリンガ州の柴刈り Firewood Collection の2本にリンクし、掲載の写真から薪炭生産の実態に言及し、用材生産では、木材の伐採方法も利用方法も全く事情が異なることを明記すること。

そして、内外の大企業も加わった大規模な用材生産が、薪炭生産以上に森林減少、特に熱帯林の破壊に繋がると考えられる理由を説明しなさい。

上記は、レポート課題のサンプルですので提出には及びません。

東海大学HK社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境政策I/II」「開発経済学」「環境協力論」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。

連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1
東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
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