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◆バイオマス文明論

太古から世界で利用されてきた伝統的エネルギーに思いを馳せると、人類の進化も、文明の創造もみなバイオマス・エネルギーと結びついていたと気づかされ、貧弱な発想から脱することができる。


写真(右):2004年9月、中国南部、雲南省大理州、出来上がった瓦を「だるま窯」の中から運び出す窯業労働者。この瓦を焼くのは、褐炭・泥炭など低級な石炭である。しかし、発想力があれば、朝鮮由来の日本の陶芸で、登り窯の燃料は何だったか、思い出すべきであろう。日本の縄文土器・弥生土器は、文明の成果であるが、これがどのように作られたのか。エネルギーなしで製造することは無理なのである。
2013年4月18日、中国科学院地球環境研究所がこのほど発表した研究結果によると、中国のレンガ製造の歴史は5000年前まで遡ることが可能で、中国のレンガ製造の確かな歴史が証明された。人民日報が伝えたことは、粘土やレンガだけでなく、どのようなエネルギーをいつから人類が使用したのかのヒントとなる。


写真(右):2013年8月,フィリピン共和国ルソン島北部、コルディリェラ行政地域(Cordillera Administrative Region (CAR))、カリンガ(Kalinga)州の山村の鍛冶屋(Blacksmith)。ブッシュナイフ(鉈)の本体を熱して、大きなハンマーでたたき鍛えている。これを鍛造(たんぞう)という。鍛冶屋では、鉄を熱することが第一である、つまり、熱エネルギー利用無しに金属利用はできない。文明に金属が果たした役割はとてつもなく大きい。熱エネルギーを産業上、本格的に利用をし始めて、初めて金属製の道具が入手できるようになった。これが、ナイフやカマなど農具なのか、1万トン級の貨物船なのかよりも、金属の抽出、熔解、鍛造に熱エネルギーが必要で、このエネルギーの源を推測する必要があろう。鍛冶屋の作業は、近代的製鉄所とは異なり、労働集約的技術に依拠しているが、金属を加工に熱エネルギーを利用するのは同じである。

写真(右):2013年8月,フィリピン共和国ルソン島中央部、マニラ首都圏ケソン市カのスラム、ビニールシートや板でつくったバラックの家屋の片隅に、囲炉裏ふうの調理場がある。ここでは、廃材や木炭を用いて熱エネルギーを起こし、それによって調理をしている。調理に熱エネルギーが利用できなければ、人々の生活はどうなるだろう。筆者撮影。
開発途上国のスラム居住者は、教育水準が低い、未熟練だと悪く言われるが、バイオマスを重要なエネルギーとしている利用している点は忘れられている。「商業的エネルギー」という認識があれば、電気・ガスをエネルギーとして利用するには、支払いが必要だと思い当たるが、木質バイオマスなら、廃材ならただである。節約、もったいないの意識が高い貧困者は、少ないエネルギー利用で調理を済ませたい。これがエネルギー利用効率の向上である。都市のスラムにあっても、農村同様、バイオマス・エネルギーが利用されている。


雑談: 大学における研究と教育

University & Education



◆二十年前の大学の授業出席率は低かったのは本当です。普段から授業に出ていた学生は,試験日に今までに倍する学生が履修していたことを知ることになったものでした。しかし,そんなことはたいしたことではありません。出てこない学生が多ければ,普段授業に出ている学生は密な授業を期待できるからです。しかし,最近十年,私の授業の出席率は80-100%です。どういうわけか,履修している学生は,授業に出てきます。演習は10-13名ですから当然です。しかし,30-50名のミクロ経済学も,70-150名以上の環境協力論,開発経済学,財政学,人間学も,同じように出席率は良いのです。

◆大学では1年間の間に,長期休業だけでなく,土日など休みもあります。そこで,大学生は,年間120-160日間くらいしか大学の授業を受けていないのです。遊ぶ時間,バイトをする時間はたくさんあります。となれば,授業を休んでバイトをして稼ぐよりも,授業を出ない1日で失う学費のほうが高くなります。
(追記:学費100万円、3-4年で年間100日授業なら1日当たり1万円もかかりますから、バイトで儲けたのではなく、機会費用を考慮すれば大損失でしょう。だだし、大学も教員も学生出席せず「業績」悪化しても当面の収入は変わりません。先生が欠席している学生にも優しいのは当たり前ではありませんか。)
大学で友達を作ることは大切だし,授業以外にもサークル活動など有意義な時間はあります。しかし,友達作り,サークルが主眼なら,大学の学費を支払う意味は低下してしまいます。勉強しながら,友達と遊び,サークルを楽しむ,さらにその先に行けば,勉強も楽しく,充実してきます。このような経験をすることが出来れば,就職進路などおのずと決まってきます。

◆大学の勉強の広い意味がわかれば,大学の授業が,人生の糧になったり,生活を豊かにしてくれることがわかります。授業には,「金のためは生きる」「出世するために働く」ような学生は少ないので,なにか有意義なことをしたいと思っている学生は,それならばと,授業にでてくるのです。当たり障りのない話ばかりしている講義からは,学生が離れてしまいます。インパクトが無いからです。浅学な教授からは,学生は授業を受けたがりません。得るものが無いからです。何か有意義なことを求めてくる学生に,ふさわしいものを提供するのが授業の役割です。授業の内容が,全ての人に有意義なものかというと違うでしょう。でも,東海大学教養学部人間環境学科では,選択はもちろん,必修科目でも,複数の教授を選ぶことが出来ます。授業ガイダンスに出席し,授業1回ごとの内容の書いてあるシラバスを読んで,オフィスアワーに直接,教授に会って話しをっ聞けばよいのです。情報公開の下で,教授や友人と相談しながら授業を選択できるのです。

◆現在の日本の大学では、テロなど治安や病気などのリスクから、開発途上国における学生の活動には安全対策や活動の制約を設けています。授業の一環であれば、夏休みであろうと海外であろうと、大学の責任が問われるからです。さらに、大学あるいは学部学科の教育方針・活動方針に沿ったものかどうかも、活動を公認し、あるいは支援する際の重要な要素になります。
他方、このような制約にもかかわらず、学生たちの自由な発想、自主性、ボランティア精神を育むには、学問や政治の権威、分野・専門性など、既存の固定概念に囚われないことが重要だと多くの教員、学生、そして社会人が考えるようになりました。日本の高等教育の中で、次のような課題も鳥飼ゼミでは検討しています。
「(期待されている)NPOが不正行為の温床となる」
「(遅れているとされる)開発途上国の技術・ワザが持続可能な社会の形成に資する」
「(社会問題とされる)ニート増加が失業問題を緩和する」
「(年金崩壊の原因とされる)少子高齢化が、母子保健・児童教育の質を向上し、昼間居住人口の安定化から地域コミュニティを再生する」
新たな側面にも注目し、大学で勉強することで、視野が広がり、知識を深め、能力を向上できます。既存の大学の枠組みは、新しい発想を伸ばし、積極性を養うには狭すぎる、という意味で、大学のあるいは学問のグローバリゼーションが進展することが大切だと思います。

魅力があり好奇心を満たしてくれる授業,自己実現・自己鍛錬や社会貢献に結びく教育,最先端の学風を体得できる大学,面白くあっても努力を要する勉強,このような大学教育を支えるに足るだけの学識を持ち研究業績を積んだ教員の維持,こういった研究教育の充実が,大学生・保護者とそれを受け入れる世界にとって,最大の利点になると私は考えます。大学の社会的責任とは,能力ある学生を世界に供給することです。優秀な研究を世界に発信することです。この教育と研究こそが,最高学府の存在理由といえるでしょう。

<大学改革>とは、世界大学競争の中にあって,卒業生の大学評価,卒業生の父母の大学評価,卒業生を受け入れた会社・社会あるいは世界の大学評価を取り入れることができるように,大学外の声を虚心坦懐に注意深く聞く。そして,より有意な卒業生を送り出すことができるように,カリキュラム,授業計画,研究成果の還元の仕方を見直すこと,それらを支援できる大学予算の配分,スタッフ配置を行うことが重要であると考えます。卒業生は,大学の資産でもありますが,社会的にも重要な資産です。本人の努力・才能を伸ばし,発揮させることこそが,高等教育の目標です。世界大学大学競争に突入して,研究も教育もどちらも切磋琢磨し,大学教授と大学の評価を高めることが,大学の社会的責任を果たすことにつながると考えます。つまり,大学の教育・研究も,卒業生というヒトを見据えて行うべきであると結論できます。 学生あるいは社会の皆さんはどのようにお考えですか。(2008年鳥飼行博記述のまま、変更・追加・削除なしに掲載)



小沢環境大臣からのご挨拶 :(2009/11/19公開)「環境省公式チャンネル」の開設にあたり、小沢環境大臣からのご挨拶。
講義では、環境白書と環境大臣を俎上にのせましたが、環境問題を研究する教授や環境政策を学ぶ大学生は、環境大臣の講話を聴いたことがあるでしょうか。環境行政責任者の話を必ず一度は、虚心坦懐に聞くべきだと思います。



環境相に原田義昭氏 第4次安倍改造内閣が発足(2018/10/02公開)
「第4次安倍改造内閣は2日午後、皇居での認証式を終えて発足し、環境相には原田義昭衆院議員(74)が就任した。」KyodoNews
環境白書の巻頭にある環境大臣のことばには、格別の重みがあることを講義て指摘しましたが、環境大臣の所信表明演説や就任会見の演説を聞いたことがないまま大学教授が環境行政を講じたり、大学生が環境問題の卒論を書いたりしていいのでしょうか、心配です。やはり、環境行政の最高責任者の話をしっかり聞いて、彼らのリーダーシップ・見識・熱意・知性を踏まえたうえで、実際の環境政策を考えることが大切です。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室写真館やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。

「バイオマス文明論」講義コンテンツ

Annual Report on Energy (Japan’s Energy White Paper)


鳥飼行博研究室の左バナー・ボタン「研究業績」には、授業の課題となるレポートを作成するための資料がありますので、まず読んで、それから短冊レポート作成に進んでください。

   鳥飼行博研究室の左側にある公開論文の「紀要論文」にリンクがはってある下記指定の「紀要論文」を読んで、レポートを作成しなさい。
鳥飼行博(2018)「バイオマスエネルギーの人間開発論 : フィリピンを事例としたローカルコモンズの意義」Biomass Energy in Human Economies
『東海大学紀要. 教養学部』Journal of the School of Humanities and Culture, Tokai University 第 48週, pp.171-231, 2018-03-30 [本文を見る]でダウンロード
 
日本政府が再生可能エネルギーの導入を一層進めることを決めた。しかし、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーとは,太陽光、風力、バイオマスを由来とする自然由来の電気エネルギーやバイオ液体燃料であるかのような認識、すなわち『エネルギー白書』でも繰り返し述べられた見解が成立するとすれば、現在世界の再生可能エネルギーの7 割近くについて、どのように説明するつもりであろうか。行政も御用学者も世界の再生可能エネルギーに関心がないのか、情報と知識の不足が露呈しているのか。つまり、エネルギー形態を三分類して、液体=LNG、固体=石炭、液体=石油、という認識の中にとどまっているだけでは、世界の再生可能エネルギーについて理解することはできない。発想を「コペルニクス的に転回する」とは大げさだが、「コロンブスの卵」という格言がまさに当てはまる。
 
 『エネルギー白書』「第1章 明治維新後のエネルギーをめぐる我が国の歴史」に記載された明治時代のエネルギーは、ガス灯、石炭火力蒸気機関、石油利用発電など現在でも常識的な話であろう。しかし、そのような限定的なエネルギー利用だけを念頭においても、世界の再生可能エネルギーに通じるところが少ない。
グローバルとローカルの双方の視点にあって、大切なことは、固形バイオマスを中心とした再生可能エネルギーを再認識することである。基本的な問題は、エネルギーと文明の関係がどのようなものだったのかを無視して、世界のエネルギーを論じることも、再生可能エネルギーを推進することもできないということだ。ガス、電気、石炭、石油など新たに利用が始まり、その後大幅に消費が増えたエネルギーだけに注目するのは、現代日本の視点では当然かもしれないが、「伝統的エネルギー」を見直してみる必要がある。

「現代日本」の視点では、伝統的エネルギー利用は、重要性を持たないかもしれないが、太古から人類が世界に拡散する中で、常に利用していたエネルギーに思いを馳せてみよう。初等教育でも、人間は火を使う動物だ、道具をつかうと習った。中等教育でも、調理することであごの筋肉・頭蓋骨が変化し脳が巨大化したと習った。21世紀の現代でも、エネルギー利用について、歴史的連続性を意識すると面白い。

鳥飼担当科目の課題レポート

Report writing


鳥飼担当の当授業の課題レポートの作成には、教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部を入手していることが前提です。教科書ページを指定したレポートも課します。受講にテキスト必須です。入手しないと講義は理解できません。

この講義コンテンツを全て閲覧し、鳥飼行博研究室の左側にある公開論文の「紀要論文」にリンクがはってある上記指定の「紀要論文」鳥飼行博(2018)「バイオマスエネルギーの人間開発論 : フィリピンを事例としたローカルコモンズの意義」を読んで、manabaレポートで開示される課題で短冊(レポート)を作成し、提出のこと。

1)レポートは、ワード作成、添付ファイルでレポート提出機能で送信。
2)文字数は、1200文字以上2800文字以下。他サイトの引用は不可。
3)レポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
4)レポート提出時、メール件名は「human」に続けて学番、学生氏名を明記のこと。


<短冊レポート課題サンプル>
manabaのレポート参照。

短冊課題の事例
『エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)』 では、明治時期の日本で化石燃料のエネルギー利用は限定的であり、生活・経済ではまだ重要な役割を果たしていないかのように記述している。このような経済産業省 資源エネルギー庁の誤解に対して、バイオマス文明の視点から批判的検討を加えなさい。

東海大学HK社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境政策I/II」「開発経済学」「環境協力論」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1 
東海大学HK社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
Kanagawa,Japan259-1292
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