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◆地球温暖化防止のための環境政策を考える

炭焼き
写真(上)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市トンド地区スモーキーマウンテン、インフォーマルセトラーによる炭焼き。毎年、鳥飼ゼミナールはスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)を調査しに訪問している。木炭(ウリン)づくりのために、廃棄物の山に穴を掘って切った木を入れ、空間を作り火をつける。それから土を被せていぶる。スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)で炭を作っていた非正規居住者「インフォーマルセトラー」の家屋(バラック)。スモーキーマウンテンの廃棄物集積場所跡にある。

スモーキーマウンテン

Smokey Mountain 2015


廃材
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)のごみ山には廃材が積まれている。最終処分場は、ごみ投棄は終了し、閉鎖されている。2014年ごろには、周囲がコンクリ壁で覆われており、立ち入り禁止となっている。許可申請の出し方が分かっても、危険な場所であり、まず立ち入り許可は得ることはできない。だからと言って、無断侵入、不法侵入は犯罪であり、すべきではない。

フィリピン政府による社会保障も生活保護ガイドも不十分であっても、家族は働き工夫して生活している。

コンクリの壁ゼミ生
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)。このごみ山近くで廃材の買い取り、木炭を製造する業者がある。トンド地区の住民は、廃材を彼らのところに運んで売却する。荷車いっぱいで100-200ペソになる。

「スクオッターの生活実践 ―― マニラの貧困世界のダイナミズム 石岡丈昇」には、次のようにある。
「スクオッターは行政サービスからは取り残されたエリアである。選挙を控えた地元政治家が集票のために道路を整備するなどを除けば、生活基盤整備が施されることはまずない。たとえば熱帯特有の強い雨が降った際には、多くの家屋が床上浸水になる。また、台風の時期には、家ごと吹き飛ばされるケースも少なくない。スクオッターは、インフラ整備の面では、脆弱な場所なのである。」

「だが、スクオッターの内部を歩いてみると、そこでは脆弱な貧困地域というイメージを覆す数々の生活の機微に触れることができる。インフラ整備が施されないため、住民は自ら生活空間を創出する。排水路を整備し、街灯を設営し、祭りを開催し、固有の生活を創造していくのだ。たしかに貧しくはあるが、そこに息づく自前性・自律性の力は相当のものだ。ここでは、そうしたスクオッターのおびたただしい生活実践を紹介していこう。スクオッター住民の生活実践を見てみると、そこが社会的周辺地域ではなく、危機を生き延びる叡智の集積する先進地域であることが読み取れるはずだ。」
廃材集め1
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)。ここは、マニラ北港近くのごみ捨て場で、2年前までは炭焼きがなされていた。しかし、2013年以降は、危険なためか廃止された。現在、スモーキーマウンテンの隣で、炭焼きの原料を買取する業者がトラックでやってくる。

スモーキマウンテンに住む貧困者も、焜炉(調理用ストーブ)を使っていた。フィリピンでは、中層以下の世帯で、料理や給湯には焜炉(こんろ)調理用ストーブを使うのがふつう。燃料は薪炭。
 パヤタスのスラム街では、炭をまとめ買いし、それを小さな袋に分けて売る木炭販売世帯がある。パヤタスの調理では焜炉(こんろ)調理用ストーブが主流。燃料は薪と薪から焼かれた木炭(ウリン)である。

廃材集め2
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテン下では、炭焼きをする業者が、廃材を買い取っている。トラックで廃材を、パガニバンに運んで、炭を焼いているという。

 木質バイオマスは、酸素を供給しながら燃焼させれば灰になるが、窯に入れて不十分な空気の中で蒸し焼きにすれば、水分がすべて蒸発し炭素化して木炭に変わる。これが炭焼きだが、実際は火を起こすのではなく、酸素を遮断して高熱で燃焼させる。ただし、炭焼き窯の内部を高温にするためには、初期時点では焚口で火を起こして高熱を送り込み、その後に口を塞いで酸素を遮断して、数百度にまで窯の内部の温度を上げる。ただし、窯を高温に保ち続ける必要上、酸素を完全に遮断することはなく、僅かに供給しつける必要がある。炭焼きは、1日から2日間で完了する。

低所得層住宅地では、政府による社会保障生活保護も不十分であれば、貧しい住民の中には、やむを得ず不法占拠者となる場合もある。しかし、彼らを循環型社会の一員と見なすことも可能である。

カモテの葉を袋
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテン下で、カモテの葉を袋(サック)に入れて、市場に売りに行く住民に出会った。

都市貧困地区 スモーキーマウンテンには、次のようにある。
「フィリピンのゴミ処理場では、ゴミを焼却せず、ゴミ捨て場に投棄(野積み)されます。一日にマニラ首都圏から出るゴミの総重量は約6,000トンと言われ、それらのゴミを受け入れる捨て場は、マニラ首都圏内に複数あります。 私たちが支援する「スモーキーマウンテン」は、マニラ首都圏マニラ市トンド地区に位置しています。多くの住人は収入を得るために、ゴミの中からリサイクル可能なゴミ(鉄、銅、プラスチックなど)を拾います。一日の収入は70〜150ペソ(約150〜320円)と大変少なく、苦しい生活を強いられています。 2012年度現在、約6,500人もの人々がスモーキーマウンテンに暮らしていると言われています。スモーキーマウンテンと呼ばれ始めた由来は、自然発火したゴミの山から煙が立つ様子からです。」
マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテンの上にあるスラム地区。もともと、廃棄物の山で住民はいなかったが、畑作を営む不法占拠者がここに住居を建築した。それが恒常的な居住地となり、住居も次第に増え、構造的にもしっかりしたものに変化した。

廃材集め3
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市スモーキーマウンテンは、マニラ北港近くのごみ捨て場で、炭焼きの原料となる廃材を買取り、トラックで運搬する業者。マニラ市にあるスモーキーマウンテン下にいる業者は、荷車1台分の廃材を150ペソから250ペソで買ってくれる。

不用のものとして廃棄された材木・木質バイオマスをリサイクルすることは、循環型社会の形成に繋がる。木炭は、バイオマスエネルギーであり、再生可能可能エネルギーであるから、化石燃料とエネルギー代替すれば、地球温暖化防止・気候変動安定化にも寄与ができる。スラムといえば、貧困、汚い、社会の恥と考えられ貶められている場合が多いが、循環型社会・持続可能な社会の形成に寄与する可能性があるともいえる。批判的検討を進めることで、一般に広まっている皮相的な見解や御用学者の偏った見解を改め、そこから新しい着想が生まれるかもしれない。

廃材集め4
写真(右)2015年8月、フィリピン共和国、マニラ首都圏マニラ市にあるスモーキーマウンテンで、炭焼きの原料となる廃材を買取り、トラックで運搬する業者。

 1950年代から使われていたマニラ北港近くの廃棄物捨て場は、1980年代には「スモーキーマウンテン」と呼ばれるほど巨大なごみ山となり、ごみが燃える煙が立ち上るようになった。フィリピン政府は、世界のメディアによって貧困の象徴とされ報道される続けることに危惧し、1994年にごみ投棄を停止するとした。そして、ごみから有価物を回収するために住み込んでいるスラム住民の立ちんぼ気を開始した。しかし、ごみ処分が中止されてから30年が経過、再びこの「スモーキーマウンテン」に住む人々が増えている。もとのごみ山が堆肥化し、カモテなどイモ栽培が可能で、廃材を用いた木炭づくり・炭焼きも行われているのであって、これは循環型社会の視点からも評価できる。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室アジア写真集やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。


「環境協力」講義コンテンツ

Virtual lecture onLine

2017年の年間CO2排出量(フロー)は、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と続いている。
大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)二酸化炭素排出削減は、不可能である。そこで、次善の策として、フローの国民一人当たり排出量削減の方法を考察した。
 
第一に、エネルギー原単位(Energy/GDP)の引下げ、とくにそのための産業構造高度化を検討した。第二に、LCAで計測して温室効果ガス排出の少ないエネルギー(CO2/Energy)を開発・普及するというエネルギー選択を検討した。これは、フローのエネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量(β)を削減することを意味する。

しかし、実は再生可能エネルギーの開発・普及だけでは、不可能である。化石燃料を従来どおり消費し続けていれば、いくら再生可能エネルギーの消費が増えても、CO2の排出は減少しない。再生可能エネルギーを開発して、それを化石燃料に置き換えるエネルギー代替が必要である。つまり、CO2排出削減のためには、石炭・石油・天然ガスという化石燃料の消費を減少させなくてはならないのである。

換言すれば、二酸化炭素排出の多い化石燃料など枯渇性エネルギーを、二酸化炭素排出が少ないエネルギーに変更・代替することが求められる。つまり、再生可能エネルギーの開発と並んで、化石燃料消費を減少させるようなエネルギー代替が必要である。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、地球温暖化対策税の一環として、炭素税(Carbon Tax)を考えてみよう。これは、二酸化炭素排出(CO2)するエネルギーに対して、排出する炭素(CO2)に応じて税金を課する方式で、広義の環境税である。課税額は、化石燃料などエネルギー消費(Energy)によるので、石炭・石油・天然ガスにの順にCO2排出が多いので、税額もこの順に高くすればよい。

二酸化炭素の排出量に応じて、化石燃料にt%の課税をすると仮定しよう。すると、石炭に対しt%課税すれば、税抜き価格の石炭価格がPとすれば、税込みの石炭価格は(1+t)Pと課税分だけ高くなる。

他方、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギー発電のコストは、分散型の小型発電所のために、一般化できる輪でではないが、火力発電に比較して高額である。例えば、資源エネルギーの推計のように、石炭火力発電のコストを1kWh(キロワット時)当たり10円とするなら、風力発電・太陽光発電の発電コストは1kWh(キロワット時)当たり30円程度はかかるであろう。例えば、火力発電の価格(発電コスト)をp、再生可能エネルギー発電の価格(発電コスト)をqとすると、現在の市場の価格体系の下では、次の関係が成り立っている。

p<q

例えば、1kWh当たりの発電コストは、石炭・重油、液化天然ガス(LNG)を燃焼する火力発電では10円、風力発電など再生可能エネルギー発電では30円から45円という価格差があり、再生可能エネルギー発電は、「地球に優しい」という利点はあっても、経済合理的な活動のためには、選択されない。発電コストの安い火力発電は、開発途上国でも幅広く採用されているのである。つまり、グローバルな経済活動を踏まえれば、国際的にも環境負荷型価格体系が成立しており、その下での経済合理的活動によって、経費の割安な火力発電が普及しているのである。

つまり、環境負荷型価格体系が成立しているグローバルマーケットでは、環境負荷の大きな火力発電がコスト(p)が割安なために選択され、二酸化炭素を大量に排出しているといえる。風力発電、太陽光発電のような二酸化炭素排出の少ない再生可能エネルギー発電は、発電コスト(q)が高くなり、経済合理的な活動では選択されない傾向がある。企業や政府が、宣伝活動の一環、環境プロパガンダとして、再生可能エネルギー発電を導入することはあっても、それが経済活動を支えることはない。また、消費者も、政府・自治体の補助金や再生可能エネルギー買い取り制度がなければ、太陽光発電や風力発電を行うことは、コストの上から難しい。換言すれば、環境意識があっても、環境負荷型価格体系の下では、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替は進展しないといえる。

消費者・地球市民は意識改革を経て環境意識が高いが、節約意識も強く、発電コストの上で、経済合理的活動として、割安な火力発電が選択される。つまり、グローバル市場において、化石燃料の価格が安く、再生可能エネルギーの価格が高価であるという環境負荷型価格体系が存在している以上、資源エネルギーは環境負荷の大きな化石燃料が普及することになる。地球市民が育成されたとしても、環境意識だけでは、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替が行われず、「地球に優しい・環境調和型エネルギー」は普及するのが難しいといえる。

そこで、環境調和型エネルギーのほうが割安になるような環境調和型価格体系に変更するような環境政策が求められることになる。これは、経済インセンティブを活かすために、化石燃料を使う火力は発電の価格(p)を環境税・炭素税(t)を賦課して引上げ、再生可能エネルギー発電の価格(q)に環境補助金(s)を交付して相対的に低下させることである。つまり、炭素税tと環境補助金sを使って、価格体系を環境調和型に変更する「インセンティブ型環境政策」が有効であると考えられる。

(1+t)p>(1ーs)q

このような環境税を賦課した後の税込みの価格体系は、環境調和型エネルギーのほうが、環境負荷型エネルギーよりも割安になる。そこで、経済合理的に行動する消費者・生産者は、割安のエネルギーとして、再生可能エネルギー発電を採用するのである。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、「環境調和型の価格体系」を形成し、消費者・企業の経済合理的な活動が、再生可能エネルギーの開発普及、枯渇性エネルギー消費抑制に結び付く環境税の有効性を理解してもらいたい。化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー代替の手段としての炭素税に注目していただきたいのである。

そのうえで、鳥飼行博研究室左バナーボタンの公開論文、国立情報学研究所 鳥飼行博 掲載論文一覧「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を熟読してもらいたい。
さらに、鳥飼行博研究室左バナーボタンの研究業績、紀要論文「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を引用して、気候変動安定化のための環境税をまとめてもらいたい。

批判的検討のレポートサンプル

Report writing

講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』から、地球温暖化の要因について、環境債務になる国民一人当たり二酸化炭素排出量の要因を、エネルギー原単位α、エネルギー消費当たり二酸化炭素排出量β、一人当たり所得yに基づいて表した簡単な因果関係式z=α・β・y、の因果関係式を得た。

そこで、教科書「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、インセンティブ型環境政策として、環境税・炭素税の有効性を、簡単な式を使って説明し、発電コストを踏まえて環境調和型価格体系を形成する重要性を、環境意識、勘定という単語を使って述べよ。

さらに、鳥飼行博研究室左バナーボタンの公開論文、国立情報学研究所 鳥飼行博 掲載論文一覧「再生可能エネルギーの開発 : 地球温暖化対策の一環として」を引用して、気候変動安定化のための環境政策をまとめてもらいたい。

◆このレポートは、サンプルですので、実際の課題はmanaba「レポート」を参照。

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境協力論」「開発経済学」「環境政策I/II」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
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東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
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