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◆インセンティブ型環境政策としての環境税・炭素税の有効性

港
写真(上)2014年5月、川崎市川崎区浮島町にある浮島太陽光発電所(メガソーラー)を訪問し、フィールド調査をした鳥飼行博ゼミナール。

    火力
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた天然ガス発電所。川崎市川崎区東扇島東京電力東扇島火力発電所は、出力200万kWの液化天然ガス(LNG)火力発電で、一号機は1987年9月、二号機は1991年3月に運転開始。


東京電力株式会社プレスリリース「 鹿島火力発電所2号機および東扇島火力発電所2号機の運転停止」によれば、2014年(平成26年)4月22日、鹿島石油火力発電所2号機(茨城県神栖市東和田9番地)出力60万kW、東京電力東扇島LNG火力発電所の2号機100万kWは、蒸気漏洩の疑いがあることから、4月に発電を停止している。両プラントのボイラーを点検し、原因を究明するとともに、補修作業を実施する予定。川崎市 川崎区浮島町には、2011年8月10日に運転を開始した東京電力株式会社の日本最大級メガソーラー「浮島太陽光発電所」(最大出力7,000kW)がある。

風力
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた風食発電所。川崎区扇島1−2東扇島東公園埋め立て地にあるJX日鉱日石エネルギー(株)扇島風力発電所。2014年5月撮影。
 旧新日本石油のニュースリリースによれば、旧川崎製油所に設置されたこの風力発電所は、石油火力発電所と比較して、年間約2000トンのCO2削減に相当するという。JX日鉱日石エネルギーは、2003年度より特定規模電気事業者(PPS)として電気小売事業に参入、この風力発電所で発電する電力は全量を需要家向けに販売する。この風力発電設備は「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」の設備認定を受けている。
神奈川の川崎市川崎区扇島1−2東扇島東公園(埋め立て地)にあるJX日鉱日石エネルギー(株)扇島風力発電所を見ながら、環境ビジネスについて考えた。電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)(2012年「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」制定により発展的に解消)に元で、2009年9月着工、2011年2月完成、同年3月運転開始。製造元日本製鋼所(工事:清水建設)、定格出力1,990kW(風力発電設備1基)、発電量300万kWh/年、風車高さ123m(タワー部分) 。

ごみ発電所3
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町のごみ発電所。浮島処理センターは、処理能力900t/24時間、NKK日本鋼管フェルント式往復動階段火格子(300t/24h)3基、強制通風、煙突は高さ47.5m、頂上口径1.3m×3、ろ過式集じん器装備。ごみピット、鉄筋コンクリート製角型ピット(容量2,400t)、灰ピット、鉄筋コンクリート製角型ピット(容量780立方メートル)。 給じんクレーン2基、灰クレーン1基、非常用クレーン1基を装備。助燃装置として、先混合形ガスバーナー炉1基(都市ガス使用)を装備。排水処理は、活性汚泥処理、化学処理、循環利用を実施。余熱利用設備として、発電設備出力1万2,500kwの廃棄物発電を実施し、余剰電力は売電。また、各室暖房、浴場給湯、洗濯工場に熱供給。
 ろ過式集じん器は、排ガス中の飛灰(ダスト分)を円筒状のろ布に付着させて除去。HCI、SOx、水銀、ダイオキシン類などの排ガス中の有害成分を除去するために消石灰や活性炭等を使用する場合は、ろ過式集じん器の手前に噴霧する。有害ガスと反応・吸着した薬剤は、飛灰とともにろ過式集じん器で捕集、除去する。

パネル2
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた太陽光発電所。川崎市川崎区浮島町にある東京電力・川崎市の共同事業の浮島太陽光発電所は、太陽電池で発電した直流電力をPCS(パワーコンディショナー)で交流電力に変換。電力用変圧器で交流66,000 V に昇圧して、当社系統へ電力を供給。

川崎市の現状」には、「川崎市の人口は、現在140 万人に達しており、今後も増加し2030 年には150 万人を超えると推計されています。また、全国で減少の続く生産年齢人口についても、川崎市では今後も増加が続き、2025 年にピーク(101.3 万人)を迎えることが予想されます。川崎市の人口増加率は大都市の中でも高く、9 年連続で1 位となっています。人口増加要因として、社会増加比率が他の大都市と比較しても著しく高いことに加え、自然増加比率も大都市中1 位となっています。また、出生率、婚姻率も大都市中1 位となっています。一方、2015(平成27)年をピークに年少人口は減少することが見込まれており、老年人口も増加してきていることから、今後、高齢化が急速に進展することが予想されます。川崎市は、前述したとおり、産業都市としての性格を有する一方、昼夜間人口比率をみると87.1%と大都市の中で最も低くなっており、ベッドタウンとしての性格も有しています。また、我が国全体では労働力人口は減少傾向にありますが、川崎市では労働力人口は増加傾向にあります。また、労働力率は大都市中1位となっています。」とある。

パネル3
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた東京電力・川崎市の共同事業、浮島太陽光発電所。

川崎市の製造業の状況」には、「川崎市は戦前・戦後を通じて京浜工業地帯の 中核として、日本経済の発展を支えてきた工業都市であり、現在でも鉄鋼、石油、化学、電機、情報通信等の大企業の主要生産拠点が数多く立地しているほか、優れた技術を持つ多くの中小企業が集積しています。直近10 年間の製造業の推移をみると、全国、川崎市ともに事業所数、従業者数は減少傾向にあります。1999(平成11)年から2009(平成21)年にかけて、事業所数は全国、川崎市ともに3割の減少となっています。一方、従業者数は、全国では17.5%の減少となっていますが、川崎市では41.2%減少しており、全国に比べて川崎市の減少率が大きくなっています。事業所数や従業者数が減少する一方、製造品出荷額等は全国、川崎市ともに2003(平成15)年以降増加傾向にありましたが、2009(平成21)年には世界金融危機の影響を受け、大きく減少してお り、特に川崎市では全国に比べて減少率が大きくなっています。また、産業別内訳をみると、事業所数では一般機械、金属製品等の加工組立型が2/3 を占めますが、製造品出荷額等では石油、化学、鉄鋼等素材型が2/3 を占めています。一方、知識集約型・高付加価値型の産業構造への転換に伴い、市内に立地する事業所の性格も生産拠点から研究開発拠点へと変化してきています。また、臨海部は石油精製、発電所、ガス等のエネルギー関連施設が立地しており、首都圏のエネルギー供給拠点となっています。さらに、川崎市内には多くの外資系企業や中小企業庁が選ぶものづくり300 社が立地しています」とある。

屋上パネル1
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた浮島太陽光発電所。川崎市川崎区浮島にある「かわさきエコ暮らし未来館」屋上から、東京電力・川崎市の共同事業、浮島太陽光発電所を見学した鳥飼ゼミ3・4年生。2011年8月10日に運転を開始した東京電力株式会社の日本最大級メガソーラー「浮島太陽光発電所」の最大出力は7,000kW。

2012年7月、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法再生可能エネルギー特別措置法)の導入により、RPS法は廃止された。しかし、再生可能エネルギー特別措置法附則第12条により、廃止前の電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(第4条から第8条、 第9条第4項及び第5項、第10条から第12条)は、その効力を有するとされた。

屋上ぱねる2
写真(右)2014年5月、川崎市川崎区浮島町からみた浮島太陽光発電所。川崎市川崎区浮島にある「かわさきエコ暮らし未来館」屋上から、東京電力・川崎市の共同事業の浮島太陽光発電所を見学。敷地面積23万 ?(川崎市所有)で、これは東京ドーム 2.3 個分(東京ドーム面積 約47,000m2)に相当する。

川崎市川崎区浮島にあるかわさきエコ暮らし未来館屋上から、東京電力・川崎市の共同事業、浮島太陽光発電所を見学した鳥飼ゼミ3・4年生。川崎市川崎区には、ゼロエミッション工業団地もある。

屋上ぱねる2
写真(右)2016年5月、川崎市川崎区浮島町からみた浮島太陽光発電所。川崎市川崎区浮島にある「かわさきエコ暮らし未来館」浮島処理センター資源化施設屋上。
川崎市川崎区の浮島資源化施設屋上にある太陽電池モジュール。太陽電池素子はセルと呼ばれ太陽電池の基本単位。セルを複数枚数配列して、表面を樹脂や強化ガラスで保護したパッケージをモジュールと呼ぶ。いわゆる「太陽電池パネル」「太陽光パネル」である。太陽電池モジュール(パネル)を複数枚並べて接続したものは、専門的には「アレイ」と称されるが、これも一般的には「太陽光パネル」と総称される。

川崎市川崎区浮島資源処理センター資源化施設屋上にあるパワーコンディショナー(太陽電池コンデショナー)。パワーコンディショナー(Power Conditioning System)は、太陽電池モジュール(太陽電池パネル)から流れる「直流電流」を一般家庭で用いられている「交流電流」に変換する機械。太陽光発電システムや家庭用燃料電池を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換するインバータの一種である。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室アジア写真集やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。

「環境協力」講義コンテンツ

Virtual lecture onLine

2017年の年間CO2排出量(フロー)は、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と続いている。
大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)二酸化炭素排出削減は、不可能である。そこで、次善の策として、フローの国民一人当たり排出量削減の方法を考察した。
 
第一に、エネルギー原単位(Energy/GDP)の引下げ、とくにそのための産業構造高度化を検討した。第二に、LCAで計測して温室効果ガス排出の少ないエネルギー(CO2/Energy)を開発・普及するというエネルギー選択を検討した。これは、フローのエネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量(β)を削減することを意味する。

しかし、実は、再生可能エネルギーの開発・普及だけでは、不可能である。化石燃料を従来どおり消費し続けていれば、いくら再生可能エネルギーの消費が増えても、CO2の排出は減少しない。再生可能エネルギーを開発して、それを化石燃料に置き換えるエネルギー代替が必要である。つまり、CO2排出削減のためには、石炭・石油・天然ガスという化石燃料の消費を減少させなくてはならないのである。

換言すれば、二酸化炭素排出の多い化石燃料など枯渇性エネルギーを、二酸化炭素排出が少ないエネルギーに変更・代替することが求められる。これが「エネルギー代替」が必要である。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、地球温暖化対策税の一環として、炭素税(Carbon Tax)を考えてみよう。これは、二酸化炭素排出(CO2)するエネルギーに対して、排出する炭素(CO2)に応じて税金を課する方式で、広義の環境税である。課税額は、化石燃料などエネルギー消費(Energy)によるので、石炭・石油・天然ガスにの順にCO2排出が多いので、税額もこの順に高くなる。

二酸化炭素の排出量に応じて、化石燃料にt%の課税をすると仮定しよう。すると、石炭に対しt%課税すれば、税抜き価格の石炭価格がPとすれば、税込みの石炭価格は(1+t)Pと課税分だけ高くなる。

他方、風力発電や太陽光発電の発電コストは、分散型の小型発電所のために、一般化できるわけでではないが、火力発電に比較して高額である。例えば、資源エネルギーの推計のように、石炭火力発電のコストを1kWh(キロワット時)当たり10円とするなら、風力発電・太陽光発電の発電コストは1kWh(キロワット時)当たり30円程度はかかるであろう。例えば、火力発電の価格(発電コスト)をp、再生可能エネルギー発電の価格(発電コスト)をqとすると、現在の市場の価格体系の下では、次の関係が成り立っている。

p<q

例えば、火力発電が10円、再生可能エネルギー発電が30円という価格差があれば、この環境負荷型価格体系の下では、火力発電が普及することになる。つまり、このような価格体系の下では、二酸化炭素を大量排出する火力発電のコスト(p)は割安で、二酸化炭素排出の少ない再生可能エネルギーは、発電コスト(q)が高いために、普及することは難しく、環境プロパガンダとして、宣伝的に導入される程度にとどまってしまう。その理由は、地球市民の環境意識が低いからではなく、意識改革によっても、節約意識が強く作用して、発電コストの上で、経済合理的に行動する消費者・生産者は、相対的に割安な火力発電を選択してしまうからである。つまり、世界の市場動向を踏まえれば、資源エネルギー価格は、環境負荷型の価格体系の下にあり、そのために「地球に優しい」環境調和型エネルギーは選択されないのである。

そこで、環境調和型エネルギーのほうが割安になるような環境調和型価格体系に変更するような環境政策が求められることになる。これは、経済的インセンティブを活かすために、化石燃料を使う火力は発電の価格(p)を環境税・炭素税(t)を価格に比例して賦課して引上げ、再生可能エネルギー発電の価格(q)に環境補助金(s)を価格に比例して交付して相対的に低下させることである。つまり、炭素税tと環境補助金sを使って、価格体系を環境調和型に変更する「インセンティブ型環境政策」が有効であると考えられる。

(1+t)p>(1ーs)q

このような環境税を賦課した後の税込みの価格体系は、環境調和型エネルギーのほうが、環境負荷型エネルギーよりも割安になり、価格が逆転する。そこで、経済合理的に「勘定」を優先して行動する消費者・生産者でも、割安のエネルギーとして、再生可能エネルギー発電を採用するのである。炭素税によって環境調和型価格体系が形成できれば、市民の意識改革や環境重視の経営をしていなくとも、もったいないという節約意識、価格競争力を強化たいという経営意欲の下で、結果として、再生可能エネルギーが選択される傾向が生まれるのである。これは「意図せざる環境保全」の一つである。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」から、ごみ有料化、バージン資源課税も含めて、環境調和型の価格体系を形成する環境税の有効性を検討してもらいたい。

批判的検討のレポートを書く

Report writing

講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』から、地球温暖化の要因について、環境債務になる国民一人当たり二酸化炭素排出量の要因を、エネルギー原単位α、エネルギー消費当たり二酸化炭素排出量β、一人当たり所得yに基づいて表した簡単な因果関係式z=α・β・y、の因果関係式を得た。

そこで、教科書拙著『開発と環境の経済学』で、運輸部門のエネルギー消費(CO2排出量)と電源別エネルギー生産(消費)当たりCO2排出量(β)の高低に注目して、国民1人当たり二酸化炭素排出削減のために、エネルギー消費当たりCO2排出量(β)を引下げる政策を考察せよ。

さらに、インセンティブ型環境政策として、環境税・炭素税の有効性を、簡単な式を使って説明し、発電コストを踏まえて環境調和型価格体系を形成する重要性を、環境意識、勘定という単語を使って述べよ。

1)「まとめレポート」をワード(word)で作成、ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
2)まとめレポートの文字数は、1000文字以上、2400文字以下。他サイトの引用は不可。
3)このレポート課題はサンプルなので提出には及びません。実際の課題レポートは、授業支援システム(OpenLMS)に掲載。

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境協力論」「開発経済学」「環境政策I/II」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
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東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
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