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◆エネルギー消費当たりCO2排出量の削減


写真(上)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、元差廃棄物最終処分場のスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)。鳥飼ゼミは恒例のフィリピン研修で、マニラ市ごみ処分場跡地スモーキーマウンテンと周辺スラムを訪問し、自力更生に努めている住民に聞き取り調査をした。


写真(右)2016年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、元差廃棄物最終処分場のスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)のふもとに集められた廃材。建築廃材のような柱や梁、廃棄された家具の木製家具などが集積されている。これらの木製バイオマスは、木炭の原料である。木炭は伝統的なバイオマスエネルギーであり、貧困者が新たな雇用を創出するなかで、選択されたものである。筆者撮影。

マニラ市トンド地区には、廃棄物最終処分場で有価物を集めるスカベンジャーらが暮らすスラム街がある。彼らスラム住民は収入を確保し、自立するために生業についている。自助努力を行っているのは、政府による社会保障も生活保護も不十分なためでもある。自ら仕事を生み出す「起業」が当たり前で、これが草の根民活といわれる所以である。


写真(右)2016年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、元差廃棄物最終処分場のスモーキーマウンテン(Smokey Mountain)のふもとに集められた廃材。これを原料として、木炭づくりが行われている。木炭は伝統的な再生可能エネルギーであり、貧困者が新たな雇用を創出するなかで、選択されたものである。筆者撮影。

スモーキーンマウンテンの上に住む住民たちは、貧しい不法居住者あるいは不正規居住者(インフォーマルセットラー)であるが、政府の援助を受けることはできないため、廃棄物集積場跡地でカモテ(サツマイモ)、サトウキビ、バナナ、レモングラスを栽培し、自家消費したり、それらを下町の市場に運搬・売却して生計を立てている。


写真(右)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)に住んでいる貧しい不法居住者あるいは不正規居住者(インフォーマルセットラー)。この元のごみ山の上て150世帯以上が居住している。

フィリピン共和国マニラ首都圏に住む貧困者への聞き取りや現地フィールド調査によって、生活の質(QOL)の改善、ベーシックヒューマンニーズの充足といった福祉の課題だけではなく、バイオマスエネルギー生産という「民活/労働集約作業による伝統的エネルギー普及によるCO2排出削減」という環境の課題を考察することができた。貧困解消と地球温暖化対策の統合という新しい発見と発想を得ることに繋がった。


写真(右)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)における炭(ウリン)づくり。廃棄物の山に穴を掘って切った木を入れ、空間を作り火をつける。それから土を被せていぶる。スモーキーマウンテン上で行われている非正規居住者「インフォーマルセトラー」による炭焼き。筆者撮影。

フィリピンマニラ市北方に位置するスモーキーマウンテンでは、廃棄物処分場を農地化し営農する農家が居住しているが、それだけではなく、廃材を活用して木炭というバイオマスエネルギーを生産する住民も住んでいた。貧困者にとっては、新たな雇用を創出し、女性の自立を進めるのが常識であり、自ら仕事を生み出す「起業」が行われている。これが草の根民活といわれる所以である。


写真(右)2012年8月、フィrピン共和国マニラ首都圏マニラ市、スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)における炭(ウリン)づくり。廃棄物の山に穴を掘って切った木を入れ、空間を作り火をつける。それから土を被せていぶる。筆者撮影。

スモーキー・マウンテン(Smokey Mountain)の名称は、ごみ処分場の自然発火が引き起す燻り煙が立ち上る様子から名付けられた。現在は、新規のごみ投棄はされていな。ごみ山は1995年に閉鎖されることになり、ごみが運ばれないまま、20年以上がたった。そこで、今では元ごみ山に住む非正規居住者「インフォーマルセトラー」が多数ある。彼らは、生業としてイモ類(カモテ、カモテカホイ)、サトウキビの栽培をし、炭焼きをしている。フィリピンでは、個人による炭焼きが盛んだが、日本に残っているような常置された石・レンガなどで作られた炭焼き窯を使うことをしない。庭先に穴を掘って臨時窯を作り焼く「伏焼き」である。


写真(右)2012年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)における炭(ウリン)づくりをしていた世帯。建築廃材・家具、ビニールシート、段ボールなどを材料にしたバラック家屋を建て住んでいる。木炭生産のためには、廃材を集めて、それを廃棄物の山に穴を掘った臨時窯に埋めて、火をつける。そこに送気・吸気のための煙突を付ける。それから土を被せて、燻って不完全燃料させ二日間ほどで真黒な炭とする。これが、常置の炭焼き窯を必要としない「伏焼き」である。筆者撮影。


写真(右)2016年8月、フィリピン共和国マニラ首都圏マニラ市、スモーキーマウンテン(Smokey Mountain)における炭(ウリン)で調理をする貧困世帯。電気・ガスのインフラが未整備であれば、毎日の調理には、木質バイオマスを使用するのが習わしである。これは、伝統的なバイオマスエネルギーでもあり、再生可能エネルギーでもある。スモーキーマウンテンでは、常置の炭焼き窯を必要としない「伏焼き」で木炭づくりが行われ、木炭による調理が行われている。筆者撮影。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室アジア写真集やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。


「環境政策II」講義コンテンツ

Virtual lecture onLine

2017年の年間CO2排出量(フロー)は、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と続いている。
 
ここで、第一に、温室効果は、大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)に依存するが、ストックのCO2濃度(ストック)の環境累積を削減するには、CO2の貯蔵・吸収しなくてはならない。これは森林の炭素貯蔵機能(光合成を利用したCO2吸収)を活かしたり、地下の岩盤の炭素貯留空間に送気・封印という方法がある。しかし、これが困難であるために、次善の策として、フローのエネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量(β)を削減することを考える。
 
換言すれば、国民一人当たり排出量を減らすために、二酸化炭素排出の多いエネルギーを、二酸化炭素排出が少ないエネルギーで代替することが求められる。これが「エネルギー代替」が必要である。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第9章 地球環境問題」から、一人当たり二酸化炭素排出量(CO2/人)の要因を考えてみよう。二酸化炭素排出(CO2)は、化石燃料などエネルギー消費(Energy)によるので(CO2/Energy)となる。

(CO2/人)=(Energy/GDP)✖(CO2/Energy)✖(GDP/人)

この式を書換て、一人当たり二酸化炭素排出量(CO2/人)=z、(Energy/GDP)=α、(CO2/Energy)=β、一人当たり所得(GDP/人)=y、と置き換えて簡単化すると、次式が得られる。

z=α・β・y

この因果関係を示す式から、一人当たり二酸化炭素排出量を削減するための手段は、エネルギー原単位(α)、エネルギー消費当たりの二酸化炭素排出(CO2/Energy)=β、一人当たり所得(GDP/人)=yの減少の三つである。

したがって、z=α・β・y、という因果関係から、エネルギー消費当たりCO2排出量(β)を引き下げれば、一人当たり二酸化炭素排出量(z)が低下することになる。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第9章 地球環境問題」「表9-8 運輸部門のエネルギー原単位」からみると、輸送に伴うエネルギー消費・二酸化炭素排出量の値は、輸送手段によって異なる。

自動車(乗用車・バス・トラック)、鉄道・航空機・船舶について、1人を1キロあるいは貨物1トンを1キロ運搬するのに必要なエネルギー(カロリー)を比較すると、大量輸送機関・公共交通では低いが、個別輸送・高速輸送では高くなる傾向にある。つまり、国民1人当たり二酸化炭素排出量を削減するには、個別輸送・高速輸送から大量輸送・公共交通に輸送手段を代替することである。

ここで、二酸化炭素排出が少ないエネルギーは、新エネルギーとかクリーンエネルギーとか呼ばれる。しかし、これは、バイオマス・エネルギーの大半が、薪・木炭という木質バイオマスであり、これを直接燃料している開発途上国の貧困者のエネルギー利用をみれば、適切な表現ではない。人類が有史以来使用していた火は、薪であり、木炭だったのであり、これは「新エネルギー」ではない。また、薪や木炭を直接燃焼すれば煤煙、灰、燃え殻が発生し、利用場所が汚れるので「クリーンエネルギー」でもない。

ところで、化石燃料の二酸化炭素排出量を見ると、同じカロリーを生み出す石炭、石油、天然ガスについて、CO2排出量もこの順に少なくなる。また、自然エネルギーバイオマスエネルギーという再生可能エネルギーを開発、普及し、それを化石燃料に代替することで、βが低下し、二酸化炭素排出量を抑制できる。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第10章 持続可能な開発のための環境政策」「表10-1 電源別CO2排出量と発電コスト」からみると、発電に伴う二酸化炭素排出量の値は、発電方法によって異なる。

発電に伴う二酸化炭素排出量を定量化するには、LCALife Cycle Assessmentライフサイクルアセスメント)が必要になる。

LCALife Cycle Assessmentライフサイクルアセスメント)とは、資源の採掘から、製造、運搬・流通、使用・消費、廃棄・再生という製品のライフサイクル全般をを対象に、各段階で資源エネルギーの投入・消費量と温室効果ガスなどの排出量を計測し、数値・定量化する分析方法である。

批判的検討のレポートを書く

Report writing

地球温暖化の要因について、環境債務になる国民一人当たり二酸化炭素排出量の要因を、エネルギー原単位α、エネルギー消費当たり二酸化炭素排出量β、一人当たり所得yに基づいて表した簡単な因果関係式z=α・β・y、の因果関係式を得た。

講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』「第9章 地球環境問題」で、産業別のエネルギー原単位(α)の高低に注目して、二酸化炭素排出削減のために、エネルギー原単位を引下げる政策を、産業部門、省エネ技術に注目して考察せよ。

さらに、教科書拙著『開発と環境の経済学』「第10章 持続可能な開発のための環境政策」で、運輸部門のエネルギー消費(CO2排出量)(β)と電源別エネルギー生産(消費)当たりCO2排出量(β)の高低に注目して、国民1人当たり二酸化炭素排出削減のために、エネルギー消費当たりCO2排出量(β)を引下げる政策を考察せよ。

1)レポートは、今週の課題と先週の課題を一つにまとめて、ワード(Word)作成し、manabaで提出。
2)文字数は、1000文字以上2400文字以下。他サイトの引用は不可。
3)レポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
4)レポート提出時の件名には「wind」に続けて、学番、学生氏名を明記。 例「wind 10B1200092E 山田花子」

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境協力論」「開発経済学」「環境政策I/II」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

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鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
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