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◆エネルギー原単位の引下げと産業構造の高度化

先進工業国は、石炭・石油など化石燃料を大量消費し続けてきたために、長期間にわたって大気中に大量の二酸化炭素を排出し続けた。これは、毎年の二酸化炭素の排出というフローを長期間続けた結果のストック累積である。そこで、累積させた環境債務を返済することは困難だが、次善の策として国民一人当たりの二酸化炭素排出を削減することを考えると、そのためにはエネルギー原単位の引下げが必要になる。つまり、エネルギーと所得の関係から、二酸化炭素排出を削減のための「省エネ」を実施するには、どのような手段があるのか、考えてみたい。


写真(上)2015年8月、フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏。鳥飼ゼミは恒例のフィリピン研修で、マニラ首都圏ケソン市ごみ処分場と周辺スラムを訪問し、縫製作業によって工芸品を製造し自力更生に努めている住民に聞き取り調査をした。筆者撮影。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏メトロマニラのケソン市(Quezon City)にある大規模な廃棄物最終処分場とスラム街を訪問した鳥飼ゼミナールは、民間非営利組織NPOのリカ・エンパワーメントセンター(LIKAH Enpowerment Center)の支援するリカ縫製作業所を訪問し、リカメンバーである縫製工やスタッフにお話を伺った。民間非営利組織NPOのリカ縫製作業所では、パスポートケースや小物入れなど刺繍入りなどをミシンや針仕事によって作成し、スラムの女性が収入を確保し、自立を図っている。 筆者撮影。

ケソン市パヤタスは、廃棄物最終処分場で有価物を集めるスカベンジャーらが暮らすスラム街。しかし、民間非営利組織NPOのリカ縫製作業所では、ミシンや針仕事によってスラムの女性が収入を確保し、自立することを目指している。自助努力を行っているのは、政府による社会保障も生活保護も不十分なためでもある。自ら仕事を生み出す「起業」が当たり前で、これが草の根民活といわれる所以である。


写真(右)2015年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏ケソン市パヤタス、民間非営利組織NPOのリカ(LIKHA)縫製作業所。ここでは、有価物のプラスチックや金属などを集めるスカベンジャー以外にもスラム住民が従事できる雇用を創出しようと、手工芸品の製造を行っている。日本では、アトリ・エリカと称して、リカメンバーなどの製造した刺繍や裁縫製品を販売している。アトリ・エリカの活動は、日本とフィリピンを結ぶフェアトレードに準じている。 筆者撮影。

ケソン市パヤタス低所得層住宅地にある民間非営利組織NPOリカの縫製作業所では、ミシンや針仕事によってスラムの女性が収入を確保し、自立できるように自助努力を行っている。スラムバラックが廃棄物最終処分場の周りにあるが、老人、女性、子供がたくさん住んでおり地域コミュニティが出来上がっている。


写真(右)2015年8月,フィリピン共和国ルソン島中部マニラ首都圏ケソン市、民間非営利組織NPOのリカ・エンパワーメントセンター(LIKHA Enpowerment Center)の支援する民間非営利組織NPOのリカ(Likha Livelihood Payatas)縫製作業所を訪問し、リカメンバーである縫製工やスタッフにお話を伺った。ここでは、スカベンジャー(特定種類の有価物を袋(サック)に集めて、ジャンクショップに運搬して買い取ってもらう)だけではなく、新たな雇用を創出し、女性の自立を目指している。筆者撮影。

フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏ケソン市パヤタスのスラムにある低所得層住宅地にある民間非営利組織NPOリカの縫製作業所では、ミシンや針仕事によって、パスポートケースや小物入れなど刺繍入りなどをミシンや針仕事によって作成し、スラムの女性が収入を得て自立できるように努めている。スラム街には、老人、女性、子供がたくさん住んでおり地域コミュニティが出来上がっている。


写真(右)2015年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏ケソン市パヤタス、民間非営利組織NPOのリカ(LIKHA)縫製作業所。ここでは、有価物のプラスチックや金属などを集めるスカベンジャー以外にもスラム住民が従事できる雇用を創出しようと、手工芸品の製造を行っている。日本では、アトリ・エリカと称して、リカメンバーなどの製造した刺繍や裁縫製品を販売している。アトリ・エリカの活動は、日本とフィリピンを結ぶフェアトレードに準じている。

フィリピン共和国マニラ首都圏に住む貧困者への聞き取りや現地フィールド調査によって、生活の質(QOL)の改善、ベーシックヒューマンニーズの充足といった福祉の課題だけではなく、フェアトレードというビジネスの課題、省エネ産業から「民活/労働集約産業によるエネルギー原単位引下げ」という環境の課題を考察することができた。フェアトレードと地球温暖化対策の統合という新しい発見と発想を得ることに繋がった。

Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。


「環境協力論」講義コンテンツ

Virtual lecture onLine

6月以降、テキスト入手可能ですから「環境協力」授業には、教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部を入手していることが前提です。教科書ページを指定したレポートも課します。5月中は、講義部分だけ教科書PDF化し開示するなど、受講に便宜を図りましたが、6・7月の授業にはテキスト必須です。手元にないと授業が理解できません。

2017年の時点では、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と、先進工業国も新興開発途上国も大量の温室効果ガスを排出している。
 
しかし、第一に、温室効果の大きさは、毎年の排出量(フロー)が決めるものではなく、大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)である。しかし、ストックのCO2を削減するには、CO2の貯蔵・吸収が必要であり、これは森林の炭素貯蔵機能(光合成を利用したCO2吸収)を活かしたり、地下の岩盤の炭素貯留空間に送気して閉じ込めたりするしかない。そこで、次善の策として、環境政策としてフローの一人当たりの二酸化炭素排出量(z)を削減することを考える。
 
また第二に、温室効果ガスの排出の大小は、ベーシックニューマンニーズの充足という人権の視点で見ると、国民一人ひとりの問題として理解すべきであり、一次エネルギー消費についても、一国レベルではなく、国民一人当たりのエネルギー消費の高低が問題になる。つまり、気候変動の根本的原因は、国民一人当たり排出量であるが、これを引き下げるために、エネルギー原単位の引下げが求められる。
 
テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第9章 地球環境問題」から、一人当たり二酸化炭素排出量(CO2/人)の要因を考えてみよう。二酸化炭素排出(CO2)は、化石燃料などエネルギー消費(Energy)によるので(CO2/Energy)となる。エネルギー消費は所得(GDP)に応じて増加するので(Energy/GDP)となる。そして、一般的にエネルギー原単位(エネルギー/GDP)が高いほど、二酸化炭素排出量も増加する。

(CO2/人)=(Energy/GDP)✖(CO2/Energy)✖(GDP/人)

この式を書換て、一人当たり二酸化炭素排出量(CO2/人)=z、(Energy/GDP)=α、(CO2/Energy)=β、一人当たり所得(GDP/人)=y、と置き換えて簡単化すると、次式が得られる。ここで、αは、1単位の所得を生み出す商品生産に必要なエネルギー消費量であり、エネルギー原単位と呼ばれるものである。エネルギー原単位のαは、エネルギー効率の逆数、エネルギー非効率の指数でもある。

z=α・β・y

この因果関係を示す式からわかることは、一人当たり二酸化炭素排出量を削減するには、エネルギー原単位(α)、エネルギー消費当たりの二酸化炭素排出(CO2/Energy)=β、一人当たり所得(GDP/人)=yの減少の三つの手段しかない。
ここで、エネルギー原単位(α)は、1単位の所得を生み出す商品生産に必要なエネルギー消費量であるから、αは、エネルギー効率の逆数、エネルギー非効率の指数でもある。したがって、z=α・β・y、という因果関係から、エネルギー原単位(α)を引き下げれば、一人当たり二酸化炭素排出量(z)を引き下げることができる。

一般的にエネルギー原単位が高ければ、エネルギー消費が大きい割には生み出される所得が低く、経済成長を実現しようとすれば、大量のエネルギー消費を伴い、二酸化炭素排出量も増加する。
対照的に、エネルギー原単位が低ければ、少ない消費で後学の所得を生み出すことができるので、経済成長に伴う二酸化炭素排出は少なくて済む。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第9章 地球環境問題」「表9-6 日本の製造業のエネルギー原単位の動向」からみると、エネルギー原単位の値は、部門によって異なる。製鉄・化学のような素材産業よりも、繊維・機械・電子のような加工組立産業のほうがエネルギー原単位は低い。また、非製造業の情報・金融のようなサービス産業やサービス業のような労働集約的産業もエネルギー原単位が低い。商品で言えば、量販される低価格商品よりも少量生産の高級ブランド品のほうが、エネルギー原単位が低い。

つまり、付加価値の大きな産業のエネルギー原単位は低い場合が多く、産業政策でいう産業構造の高度化が、二酸化炭素排出削減に繋がり、間接的な気候変動防止のための環境政策となっている。経済と環境は強く関連しているのであって、経済優先の考えを改めないと、地球温暖化を防止することはできないという市民の意識改・環境教育重視の環境政策には限界がある。

批判的検討のレポートを書く

Report writing

地球温暖化の要因について、一人当たりエネルギー消費の南北格差に注目して、先進工業国が環境債務を累積させたことが気候変動に大きく寄与していることを学んだ。そして、環境債務の返済と応能原則に注目して、気候変動防止のための環境協力は、先進工業国が主に担うべきであるが理解できたと思う。

講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』「第9章 地球環境問題」を読んで、地球温暖化の要因について、環境債務に繋がる一人当たり二酸化炭素排出量の要因を、エネルギー原単位、エネルギー消費当たり二酸化炭素排出量、一人当たり所得に基づいて、簡単な因果関係を表す式によって分析せよ。

また、産業別のエネルギー原単位の高低に注目して、二酸化炭素排出削減につながるエネルギー原単位の引下げのための政策を考察せよ。

1)レポートは、今週の課題と先週の課題を一つにまとめて、ワード(Word)作成し、学番メールの添付ファイルで提出。
2)文字数は、1000文字以上2400文字以下。他サイトの引用は不可。
3)レポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
4)レポート提出時の件名には「percapita」に続けて、学番、学生氏名を明記。 例「percapita 9BHK3200 山田花子」
5)レポート受付予定期間:2020-07-01 12:00から2020-07-06 23:55

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境協力論」「開発経済学」「環境政策I/II」 は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、経済学的に分析する授業です。俗説とは異なる議論を展開し、批判的検討能力を身につけます。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1 
東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
Kanagawa,Japan259-1292
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