Search the TORIKAI LAB Network

GoogleInSite

◆環境債務返済としての環境協力

先進工業国は、石炭・石油など化石燃料を大量消費し続けてきたために、長期間にわたって大気中に大量の二酸化炭素を排出し続けた。これは、毎年の二酸化炭素の排出というフローを長期間続けた結果の待機中の二酸化炭素の累積というストックである。つまり、ここ半世紀で、人類は大気中の二酸化炭素濃度を0.029%から0.033%に上昇させた。これが、先進工業国による環境債務累積であり、気候変動・地球温暖化を引き起こす原因となった。したがって、汚染者負担の原則にのっとれば、先進工業国は、累積させた環境債務を返済しなければならない。これが、先進工業国の開発途上国と「共通だが差異ある責任」を意識した環境協力である。


写真(上)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区のあるバランガイ・キャプテン(自治区長)に行政ホールでお話を伺った鳥飼ゼミ生たち。周囲にはスラムも広がるが、整ったホールで自治活動ができる。筆者撮影。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区のスラムと水上家屋。家屋は、トタン、木材、ビニールシート、ベットのスプリングなどでできている。マニラ市パヤタスのスカベンジャー(ゴミ拾い)世帯は、プラスチック、金属、段ボール、ガラスなどリサイクル可能な有価物を収集し、それを売却して生活している。その家庭用エネルギーの供給は、調理に使う木炭や廃材などバイオマスエネルギーが担っている。 筆者撮影。

マニラ国家首都圏(NCR:National Capital Region)のマニラ市トンド地区にある大規模なスラム街を訪問し、スカベンジャー(ゴミ拾い)世帯に聞き取り調査を行った。ここはバラック住宅が密集し、インファーマルセトラー(不正規居住者)が多数居住している。捨てられたトタン、ベニヤ、ビニールシート、釘、針金、ベットのスプリング、柵、鉄格子など廃材を材料として、バラックを建てて住んでいる最貧困層である。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区のスラムと排水路(河川)にかかる歩道橋の下でリサイクルするプラスチック製荷袋を洗浄している。河川の汚い水を使って選択しているのは、節水、節約のため。この作業を観測していたら、子供たちが集まってきた。ここに来る外国人もいないし、ここに降りる住民もスカベンジャーに限られるのに、日本人みたいのが下りてると。このような地区では、井戸はあっても水は汚染されており、飲料水とはならない。しかし、この川の水で洗いものはできる。筆者撮影。

マニラ首都圏トンド地区の河川の周りには、水上家屋も含めバラック住宅が密集している。そこでは、各家庭に水道は敷設されていない。この井戸水は、洗濯や食器洗いに使用するが、飲料はできない。日本では、食器や手洗いだけでなく、洗車するのにも、水洗トイレでも、飲料可能な水道水を大量に消費する。

マニラ首都圏ケソン市パヤタス廃棄物最終処分場の周囲には、たくさんのバラック住宅が密集している。水運びを契機に、住民のお宅にお邪魔してお話を伺った。正規の住宅賃借権ではないが、土地の持ち主に地代を支払ってバラック住宅に住んでいる。インフォーマルセットラー(不正規居住者)・スラム住民といっても、只で住まわせてもらっているとは限らない。

聞き取り調査の基本は、コミュニケ―ションで、双方向の情報のやり取りである。質問者の気持ちや考えをわかってもらう、どんな人物で、なぜこんなところに来ているのか。相手に、一番わかりやすいのは、質問者の抱いている好奇心である。この一日、午前から午後まで、歩き回っていれば、住民が挨拶してくれる、話しかけてくる。自己紹介して、何しに来たかのチャットが、フィールド調査の始まりである。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区のスラムと排水路(河川)にかかる歩道橋の下に降りて、河川を観測していたら、子供たちが集まってきた。ここに来る外国人もいないし、ここに降りる住民もスカベンジャーに限られるのに、日本人みたいのが下りてると。このような地区では、井戸はあっても水は汚染されており、飲料水とはならない。しかし、この川の水で荷袋の選択をしている。筆者撮影。

このトンド地区のバランガイには、縫製作業を待つプラスチック製麻荷袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、南京袋、Sako:タガログ語)の山がある。これは、荷袋の修理・リサイクルであり、ここに荷袋の製造工場があるのではない。住民の多くが、袋(サック)縫製作業を主な生業にしている。洗った荷袋にはほつれが多いので、ほぐしてミシンを使って手早く袋を縫い上げてゆく。

リサイクルしたPP(polypropylene)製サック(南京袋:woven polypropylene bags)をトライシクル(Tricycle)に積んで売却に行く。トライシクルに積んで売却に行くところを聞き取りもした。

リサイクルしたPP製サック(南京袋:woven polypropylene bags)を400枚を1台のトライシクルに積んで、売却に行く準備をしている。PP製サック(南京袋:woven polypropylene bags)を1人が1日200袋洗って100ペソから300ペソの収入となる。川で洗ったPP(polypropylene)製サック(南京袋)をミシンで縫う作業は1枚当たり2ペソの収入となる。リサイクルできたサックは、トライシクル1台にPP(polypropylene)製サック400個を積んだ。世界市場では、袋1kg当たりの価格は$0.10 USD Kg.から$0.30 USD Kg.である。


写真(右)2014年8月,フィリピン共和国ルソン島中部、マニラ首都圏マニラ市トンド地区、住民によるプラスチック製(PP加工)ジュート袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、南京袋、Sack)の縫製作業。このような麻荷袋(俗にドンゴロス (dungaree) 、Sack:タガログ語Sako)を縫製しリサイクルする作業が主な生業になっている。ミシンを使って手早く袋を縫い上げてゆく。

スラム住民への聞き取り・フィールド調査によって、生活の質(QOL)、ベーシックヒューマンニーズの充足、電気エネルギー、木質バイオマスエネルギーから「民活による循環型社会形成促進」の考察にまで、新しい発見と発想を得ることができる。

雑談:遠隔授業の危うさ

University & Education



◆外出禁止になって、遠隔授業の準備を始め、一日インターネットやパソコンを利用し授業準備をしていた。このインターネットがあるからこそ、遠隔授業で高等教育の単位を認定するといった暴挙あるいは斬新なオンライン教育を行うことができる。鳥飼行博研究室では、大学のオンライン講義を21世紀以降導入している。これは、俗にいうホームページやそこにある画像・論文などを閲覧して、作成したレポート課題を送信するというものである。自前のwebsiteの作成や運営には手間・時間・経費が掛かるが、それでも24-7いつでも、世界どこでもアクセスできるのは魅力である。そこで、2020年から導入されたオンライン授業でも、この方式を踏襲した。大学では独自のオンライン授業をシステムを整備して立ち上げたが、例外なくアクセス課題、アップロード課題などに起因する通信障害に襲われた。そこで、利用時間制限やアップロード制限がすくに導入された。幸い鳥飼行博研究室では、そのよう通信障害や制約は一切ない。そこで、オンライン授業、鳥飼行博研究室の言うところのバーチャルレクチャーは、順調に進んでいる。

このインターネットを通してホームページにアクセスすると、アクセスした閲覧者の情報が、ホームページ開設者、サーバーを管理するプラットホーム企業に流れているのは知っているであろう。このインターネット利用に伴う情報は、次のように4種類に分けることができる。

(1)入力情報:閲覧者の使用言語、検索した用語や入力した文書、ダウンロード・アップロードした写真・動画・音楽、アクセス日時
(2)ブラウザ情報:使用中のOS・ブラウザ、機材、機器、遷移元ホームページ
(3)通信接触情報:閲覧者のPCパソコンなど情報機器の個別識別コード、ホスト名ポート番号
(4)JavaScript情報: JavaScriptが取得したユーザーPCに関する設定日時。ブラウザのコード・バージョン・ディスプレイ画面・大きさ、位置情報(GPS)

例えば、識別コードはインターネットアクセスに必要な情報機材の数値化された固有名称のようなもので、電話をすれば、お互いの電話番号が接続して初めて連絡できるのと同じである。インターネットで情報を出せば、受けてはその情報を自分の窓口で受け取る。そこに書き込めば、相手がその窓口を知るのである。しかし、悪い奴ら自分の発信元を知られないように、他人に成りすまして入ってくるので厄介なのだ。こんな悪賢い人間は、大学にはまずいない。大学では教員もメールを登録し、玄関に表札を掲げている。顔見世も推奨事項なので、少し若い時のだがルールに従っている。学生も言われたとおりに、学番メールを使い、玄関から名前を名乗って入ってくる。まさに、大学は品行方正な高等教育の殿堂であり、まじめな講義の場である。これは遠隔授業の場合でも同じである。しかし、このことが遠隔授業、バーチャルレクチャーにあっては、大量の情報流出につながってくるのである。

コンピュータでは二進法で記述される。具体的にはコードは「0.0.0.0」から「255.255.255.255」までで、この組み合わせは40億個以上ある。しかし、インターネットの爆発的普及のために、全世界へ割り振り済みとなってしまい、その不足が続いている。大学でも毎年のように不要になった番号、使用中の番号を調査しているほどで、無駄な割り当てはしない。しかし、教職員も学生も番号への認識は深くはないので、返却される数は多くはなく、そのまま退蔵されているものが多い。

世界の一流企業、情報機関なおでは、プラットホーム企業から提供された情報を解析して、マーケティング、顧客動向、職業、政治思想、人種・宗教などを推測し、利用している機材から企業動向やテロの企てを察知して、先手を打っている様だ。この情報が、2010年の新型感染症の流行に伴って導入された遠隔授業でも、急速に増えている。全教職員の情報、学生の情報が、膨大に流れている。毎日のように、銅貨を使い、音声を使い、顔見世をしながら講義をして、質問をして情報を流しているが、それが集約され、マスデータとして、あるいは個人の特定に使用することもできるのである。情報起業は、このような情報伝達は、インターネット利用のシステム上必要不可欠であり、その情報取得は違法でも不正でもないとの主張を繰り返すのみであるが、遠隔授業によって、いままでは入手できなかった個人の顔情報から学生の年齢情報(1-4年生)まで簡単に手に入れた。全教職員、全学生の情報が、毎日のように伝達されている。

新型ウィルスの爆発的流行への対策として外出制限や学校休校の措置が強化され、遠隔授業や遠隔会議が、急速に導入され、それが世界の教育機関、企業に普及してきた。それに伴って、顔認識できる画像や動画が膨大な情報となり発信され、言語・言葉の情報量も急増した。インターネット利用者であれば、従来から、性別、年齢、嗜好、趣味、仕事、居住地、資格などに関する情報が抜き取られ、広告が送られてきていることを知っている。ホームページ管理者なら、頻繁に閲覧する利用者をある程度特定できることを知っている。しかし、遠隔授業によって、プラットホーム企業には、顔情報、音声情報も膨大に集積され、新たなビジネス展開に利用されるとともに、敵対者や危険人物のあぶり出しが容易になり、犯罪捜査やテロ作戦が一層活発になるであろう。放送事故も頻発しているが、誤った操作や、不正な手段によって、教職員・学生にとって、個人情報保護が危殆に瀕する事態に陥らないかが心配だ。

◆情報機関が行っている情報解析の方法は、個人情報を抜き取ろうとしているというよりも、同じコードが何回もアクセスすることで情報が増加し、閲覧画面、閲覧場所、使用言語、頻繁に用いる単語などの情報を集めて、個人やその職業、居住地、年齢、性別、行動を推測することである。反体制、軍事スパイ、危険思想、人権活動家、環境保護活動家など意外に簡単に識別できるであろう。遠隔授業は、毎日大量の情報が、学生、教職員からプラットホーム企業に流れており、それが蓄積されているのである。遠隔授業を充実しようと大学が契約したが、そのために教員氏名も役職も丸わかりになっていると思われる。教員の教えている時間から、その出席者の閲覧状況まで丸わかりになっていると推測できる。


Virtual Lecture Series鳥飼行博研究室やVirtual Classバーチャルクラス掲示もご覧ください。

「環境協力論」講義コンテンツ

Annual Report on Energy (Japan’s Energy White Paper)

「環境協力」授業の短冊レポートの作成には、教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部を入手していることが前提です。教科書ページを指定したレポートも課します。受講にテキスト必須です。入手しないと講義は理解できません。

 現代日本の視点では、再生可能エネルギーの開発を促進しようとして、風力発電、太陽光発電が伸長し、バイオマス発電も徐々に普及してきた。有史以来人類が世界で使用してきた薪や木炭は捨て去られてしまったが、スウェーデンは木質バイオマスを利用するバイオマス発電が興隆した。ヨーロッパ各地でこのバイオマス発電が普及しつつある。さらに、日本昔話「桃太郎」や南北格差の視点で、世界の再生可能エネルギーを見直すと、その歴史、利用者、普及した地域、エネルギーの効率性、クリーンさについて、新たな見識が得られる。中国、インド、フィリピンのようの開発途上国は、環境意識が低い、地球温暖化の取り組みをしていない、温暖化の主な原因となっているとする開発途上国環境脅威論が唱えられてきた。その主張は、学術的文献にあっても、次のようなもので、誤解とは言い切れない。

中国など開発途上国は、これまで地球温暖化対策を強化しようとする国際会議の場で、「われわれは開発途上国なので対象外」だと言い張っている。藤村幸義(2008)『老いはじめた中国』
「COP4(ブエノスアイレス会議): COP4は1998年(平成10年)11月にアルゼンチンのブエノスアイレスにおいて開催され、今後の国際交渉の道筋を定めた「ブエノスアイレス行動計画」が作成された。この会議では主要な論点として、排出量取引等の制度の具体化と同様に、途上国の参加問題が注目されていた。しかし、途上国の自主的約束を議題とするかどうかで会議は初日から紛糾し、結局この問題は議題から削除された。  このように途上国は、温室効果ガスの排出削減に関するコミットメントに参加することに従来と同様強力な反発を示したが、従来の一枚岩の対応が崩れ、一部の途上国が自主的約束に前向きな姿勢を見せるなど、変化の兆しも見えている。」環境省『平成11年版環境白書』

「地球環境問題の責任論: 開発途上国は、先進国が、産業革命以来、経済発展を追求するあまり、自然資源を過剰に消費し、また、大量の廃棄物を放出して環境に負荷を与えてきたと考え、こうした先進国にこそ、今日の環境問題の責任があると主張した。例えば、地球温暖化問題では、大気中の二酸化炭素濃度の上昇の大部分は先進国からの排出に起因するもので、その責任は先進国自らが取るべきものであり、地球温暖化を理由として、開発途上国の工業発展や、森林伐採を制約するのはおかしいというものである。こうした主張の背景には、開発途上国においては、貧困からの脱却が最優先の課題であり、また、それが環境問題への対策としても有効であるとする考え方がある。確かに、開発途上国においては、人口増加とそれにより加速される貧困により、生存のためにやむなく自然を犠牲にし、こうした自然環境の悪化がさらに貧困を加速するという悪循環があり、この悪循環からの脱却のために経済的な発展が必要となっている。
 他方、先進国からは、今日の地球環境問題は全世界共通の問題であり、温暖化やオゾン層の破壊などの地球環境の悪化の被害は、先進国、開発途上国の区別なく受けるのだから、先進国、開発途上国を問わず、地球環境問題に対して共通する責任があり、協力して取り組まなくてはならないと主張した。」環境省『平成5年版環境白書』

  2015年11月30日から12月13日にパリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)においては,パリ協定Paris Agreement)が採択され,2016年に発効した。これは、1997年の京都議定書Kyoto Protocol)に代わる,2020年以降に温室効果ガス排出を抑制するための国際的取り決めで、全ての国が参加、合意した。

パリ協定の合意内容

1)地球気温を2℃以下、1.5℃の上昇に抑えることを世界共通の長期目標として設定した。
2)世界全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新する。
3)世界全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告,レビューを受ける。
4)5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する(グローバル・ストックテイク)
5)先進工業国による気候変動安定化のための開発途上国への資金の供与と開発途上国による自主的な気候変動安定化のための資金を提供。
6)二国間クレジット制度(JCM)など気候変動安定化のための市場メカニズムの導入

開発途上国環境脅威論は、気候変動・地球温暖化の原因となるエネルギー消費の1点を見ても、温室効果ガスの排出、再生可能エネルギーの南北格差を踏まえていないが、パリ協定では、南北の一人当たりエネルギー消費と二酸化炭素排出量の格差に暗黙の裡に配慮して、気候変動への取り組みが合意されたといえる。

テキストの拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部「第9章 地球環境問題」から、気候変動、すなわち化石燃料消費などに起因する温室効果ガスの排出増加による地球温暖化の被害が、農業の不振による貧困者のベーシックニューマンニーズ(Basic Human Needs)の欠乏という大きな人権侵害を引き起こすことを学んだが、これは開発途上国でも将来利益のために、応益原則にのっとって環境協力に参加すべきであることを示している。
 
温室効果ガスには、メタン、一酸化二窒素、フロン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)類、六フッ化硫黄(SF6)もあるが、過半を占めているのは二酸化炭素(CO2)であり、これは、主に化石燃料の燃焼という枯渇性エネルギーの消費に伴うものである。同じエネルギー消費でも、自然エネルギー、バイオマスエネルギー、水力発電のように運用に際してCO2排出増加に繋がらない再生可能エネルギーもあるが、エネルギー消費の過半が石炭、石油、天然ガスという化石燃料の燃焼に使用されていることから、エネルギー消費の大きさが温室効果ガスの排出と正の相関関係を持っている。
 
これが、テキスト表9-1「一次エネルギー消費とCO2排出量の国際比較」(p.140)である。これを見れば、アメリカのエネルギー消費は多く、それに伴ってCO2排出量も多く、世界で最も地球温暖化を進めているのはアメリカである。中国のエネルギー消費も1993年には日本と同水準以上であり、一国のCO2排出量は日本よりも多い。2017年の時点では、世界第1位の中国92.5億トン(世界の28.2%)、第2位のアメリカ 47.6億トン(14.5%)、第3位インド 21.6億トン(6.6%)、第4位 ロシア 15.4億トン(4.7%)、第5位 日本 11.3億トン(3.4%)、第6位 ドイツ 0.7億トン(2.2%)と、先進工業国も新興開発途上国も大量の温室効果ガスを排出している。
 
そこで、地球温暖化を進めてい中国のような開発途上国も気候変動のための対策をとるべきであるということになる。また、気候変動の抑制は、農業への依存度が高い開発途上国の公民に多くの利益が存在する。つまり、応益原則にのっとれば、日本やEUだけでなく、アメリカ、中国、ロシアなど世界全てがグローバルな環境協力を進めて、CO2排出削減に取り組むべきである。

しかし、このような国家単位の環境分析は、人権として認められた持続可能な開発を目指す場合は、なじまない。そこでは、ベーシックニューマンニーズの充足に注目して、国民一人ひとりの問題として理解すべきで、一次エネルギー消費についても、一国レベルではなく、国民一人当たりのエネルギー消費の高低が問題になる。つまり、地球温暖化の要因は、国別二酸化炭素排出量ではなく、国民一人当たり排出量を削減することが重要な課題となる。
 
テキスト表9-4「一次エネルギー消費とCO2排出量の国際比較(2)」は、国別ではなく国民一人当たり一次エネルギー消費と一人当たりCO2排出量であるが、ここから見れば、一人当たりの温室効果への寄与度には、所得格差そのままに大きな格差が存在していることがわかる。
 


世界各国の一人当たりCO2排出量を、横断分析(クロスセクション)で見ると、途上社会と成熟社会では、大きな南北格差がある。また、時系列分析(タイムシリーズ)で見ると、途上社会では1960年の低い排出量から2014年の高い排出量に急増している一方で、EUは1990年の高い水準から若干減少し、アメリカや日本は1990年の高い水準からさらに高まっている。

さらに、温室効果の大きさは、毎年の排出量(フロー)が決めるものではなく、大気中の温室効果ガスの濃度(ストック)であり、開発途上国は、1970年代までは、アメリカ、日本、ドイツのような先進工業国と比較して、少ない温室効果ガスしか排出していないのであって、温暖化への寄与度は小さい。21世紀の急成長を背景に、エネルギー消費が急増し、温室効果ガス排出が増加した開発途上国はフローでは問題があるが、過去の累積年数から二酸化炭素のストックに注目すれば、先進工業国の温室効果への寄与は大きいのである。

環境協力とは、環境リーダーシップをとって、国際社会で冠たる地位を得るために行うものであろうか。それとも、過去の一人当たりエネルギー消費と二酸化炭素排出量の多さから、環境債務を累積させてきたことに注目し、その環境債務返済のために行うものであろうか。

批判的検討のレポートを書く

Report writing


講義コンテンツと教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』「第9章 地球環境問題」を読んで、地球温暖化の要因について、一人当たりエネルギー消費の南北格差に注目して、先進工業国が環境債務を累積させてきたことが、温室効果に大きく寄与していることを説明しなさい。

そして、環境債務の返済と応能原則に注目して、気候変動防止のための環境協力は、先進工業国が主に担うべきであることを説明しなさい。

1)レポートは、ワード(Word)作成、提出。
2)文字数は、1000文字以上2400文字以下。他サイトの引用は不可。
3)レポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
4)このバーチャルレクチャーのレポート課題はサンプルで、提出に及びません。実際の課題レポートは、授業支援システム(OpenLMS)に掲示されます。

連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1 
東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
Kanagawa,Japan259-1292
東海大への行き方|How to go Flag Counter

Thank you for visiting my web site. The online information includes research papers, over 8000 photos and posters published by government agencies and other organizations. The users, who transcribed thses materials from TORIKAI LAB, are requested to credit the owning instutution or to cite the URL of this site. This project is being carried out entirely by Torikai Yukihiro, who is web archive maintainer.
Copyright © 2020/6/15 Torikai Yukihiro All Rights Reserved.