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◆「環境政策I」森林を利用したバイオマス文明:鳥飼行博研究室


写真(右)2015年8月,フィリピン共和国ルソン島北部、カリンガ州山村の棚田での稲穂の刈り入れ作業:2006年3月,中国南部、貴州省黎平県、山村からさらに山道を婦人たちが連れ立って牛を連れて登ってゆく。筆者撮影。

貴州省の面積は18万平方キロで日本の半分、2010年人口は4000万人、省内生産(GDP)は4550億元(全国26位)、1人当たりGDPは1万2000元と全国最下位の31位である。雲南省のように鉱業・観光業が盛んなわけではないし、産地が多く水田の拡張も難しい。



写真(右)2006年3月,中国南部、貴州省黎平県、棚田が広がる山村から、石段を上がる。いつ作られた石段なのか。筆者撮影。

棚田の畦道とは別に、山林に上る石段があるが、この石段は昔からあるという。たまに崩れたり、歪んだりするので補修するらしい。日常的なことは、記録として控えておくこわけではないので、うろ覚えである。聞き取りしても正確にはわからない。質問者に同情して、納得しやすいように、たまには喜ばせるように話してくれたりする。いつ、何人でどのように補修したのか、厳格にはよくわからないが、概要はわかる。

このような実情を無視して、アンケートを配り、多数の標本を集めて、分析しようとする学者も少なくない。質問者は、対面していないのに真面目に回答するのか。質問者はなぜこんなことを聞くのか。質問者はどんな人間なのか。この回答をどうするつもりなのか。個人情報をほんとに守ってくれるのか。こんな心配があるのが普通であろう。アンケートの根本問題は、正直に正確に回答してくれたのか、面倒だからいい加減に回答したのかである。

聞き取り調査の基本は、コミュニケ―ションで、双方向の情報のやり取りである。質問者の気持ちや考えをわかってもらう、どんな人物で、なぜこんなところに来ているのか。相手に、一番わかりやすいのは、質問者の抱いている好奇心である。この一日、午前から午後まで、この一組に同行させてもらうのがフィールド調査である。この一組と出会うにも数日かかっている。



写真(右)2006年3月,中国南部、貴州省黎平県、山村からさらに山道を婦人たちが連れ立って山林のふもとに着いた。彼女たちの持っている道具はどのように使うのか。こんなことを考えながら同行させてもらった。視界が開けているのはここまで、山林になると雑木林や背の高い草に囲まれる。筆者撮影。

石段を上るとき、彼らは仕事に入っている。これは重要な仕事で、日本の『エネルギー白書』を書いている官僚やそれを糧に学びをしている大学生にもよく知らないことだ。牛は、脇道の草を食む。何の仕事なのか、どのような仕事なのか考えてもらいたい。同行しながら聞き取りはできるが、相手は働きながらなので、ほどほどにしてついていく。周囲の棚田や里山の眺め、軽装で上るのは楽しいし、帰りは下りだから楽だ。これは、外の人間の発想だ。実は上りより下りのほうが大変なのだ。バイオマス文明は、このような着想から生まれた。


雑談:大学教育の課題

University & Education

◆大学が最高学府ということは,その社会的意義は学生の学力向上によって,人間が本来持つ能力を十分に発揮できるようにすること,すなわち人間開発,人材育成を進めることに第一の社会的意義があると考えられます。友達作り,アルバイト経験も大学時代には大切なことですが,これは学問と並行して行われたり,経験したりするものでしょう。

◆日本では,進学率向上から大卒も珍しくはありませんが,世界ではこのような大学教育を受けられる人々は多くはありません。世界人口65億人のうち,人口比でいえば80%以上の人々は,大学教育を受けたくともその資金も機会も持っていないのです。今後ももてない人々なのです。大卒はグローバルに見れば,まさにエリートですし,世界の人々からも社会に貢献できるエリートたることを期待されています。したがって,世界大学競争では,大学たるからには高い学問を実につける必要があり,そのような優秀な学生を世界に送ることが大学の社会的責任と考えられます。

ところで,現段階では,国際的な日本の高等学校の学力は上位にあります。OECD生徒の学習到達度調査(PISA),すなわち調査対象母集団を「高等学校本科全日制学科」の1年生(15歳)、約140万人と定義し、その学力を調査すると,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーは,上位1位あるいは2位グループに属してます(→OECD2000年PISA)。

◆しかし,これは,15歳の学力であり,日本の大学卒業時の学力は,依然と比して大いに低下しているというのが多くの大学人,社会人の認識です。

◆学生や学生の保護者におもねるような大学や大学人は,短期的には支持されるでしょうが,学生の学力を高めないままに卒業生を送り出す大学は,教育を忘れているといって過言ではありません。当然,社会的にも支持できない高等教育機関ということになります。世界大学大学競争を踏まえ,研究も教育もどちらも熱意をもって取り組む大学こそが,世界の大学評価に耐えることができるのです。



◆私学は独自の教育理念,経営理念で大学を運営してよいのしょうが,それでも公的支援を背景にしていることを忘れてはいけません。大学に社会的意義がある以上,私学であっても公的な支援は当然のこととも考えられます。実際,日本の私立大学は,国庫から莫大な補助金を受け,さらに課税面でも企業や勤労者以上に税制上の優遇措置を受けて運営されているます。

◆私立大学への2004年の公的助成金としては,
?私立大学経常経費補助 3263億円
?私立大学教育研究装置施設整備費補助168億円
?私立大学研究設備整備費補助72億円 
に達しています。(→補助金)。

◆私立大学への税制上の優遇措置としては,非課税となる税目として,
?国税として, 法人税,所得税、登録免許税 ,
?地方税として, 住民税、事業税、事業所税(収益事業に係るものを除く),不動産取得税、固定資産税、特別土地保有税、都市計画税(目的外不動産を除く)
と,税制上の優遇措置が広範に認められています。
学校法人の法人税の非課税措置は,非収益事業に限定されますが,収益事業あっても,税率は22%,みなし寄附金の繰り入れ率50%(当該金額が年200万円未満の場合は200万円)であり,一般企業の法人税(30%)よりも低率です。(→税制上の優遇)。 

◆私学と言えども公的な支援ナシに経営は立ち行かないのであって,公的支援を受けている以上,公的な役割として優位な学生を育て上げる義務が私立大学にも課せられているはずです。簡単化すれば,学力を高め,優位な人材を育成することが大学の第一義的な課題であるといってよいでしょう。


◆本来,研究や教育が充実してこそ,入学希望者や教員の評価も高まるはずですが,これは完全情報という状況について当てはまることです。 不完全情報の下では,大学の研究教育が充実しているように見える,という外観を整えることが有利ですから,「大学」の内実が伴わなくなるかもしれません。たくさんの学生・留学生を受け入れながら教育を放棄し,学費集めに専念する「大学」は,本当の大学とはいえません。ありあわせの講義・大学教授を見栄えよい科目名称をつけて並べる「カリキュラム」は,本当のカリキュラムとはいえません。受講した学生が、落胆する授業の多くは、学生人気に迎合した内容の無い、あるいは内容の伴わない名目だけの「つまらない授業」だからです。このような授業は改革する必要がありますが、これは大学改革・教授改革にもつながるはずです。

◆社会人の方や学生諸君は,大学の心理状況や教職員の内面・本音は見えにくいようです。マスメディアで取り上げられているように「教育も重視した大学に転換するために,大学教授の意識改革を図る」「魅力ある授業を提供する」という改革の主張には大いに賛同できます。また、このような世論、学生の意向を背景に大学改革が行われているのも事実です。しかし、魅力ある大学作りがうわべで終わってしまうと、これは膨大な国民の資金負担を受けている大学としては,堕落ということです。 教員の見識や学識を引き下げざるを得ないような状況,学費さえ支払ってくれれば学力低下を容認するような状況,このような大学教育を阻害する状況が当たり前になったら,日本の大学の存在意義や魅力は低下してしまいます。「大学教授のための大学」「大学のための大学」ではいけないのであって,大学生き残りを優先し,競争原理を導入した教育であっても,安易な商業主義に堕してしまっては,有意義な大学教育環境、興味ある授業を提供することはできません。世界大学大学競争を踏まえて,研究も教育もどちらにスタッフ,資金を投入し,設備を充実させ,適切なプログラムを組むことで,その大学の評価が高まることになるのです。

◆安易な商業主義,儲け主義に出してしまわない効果的な大学改革のための一番のポイントは,教育研究を充実させるために,卒業生の評価,父母の評価,卒業生を受け入れた会社・社会の評価を取り入れることです。世界の大学と積極的に競争して行くことです。卒業生は,大学の資産でもあり,大学教育の結果の表れでもあります。世界で活躍する卒業生の能力向上,社会貢献,生産活動,創作活動などは,いわば本人の努力・才能と大学の教育理念の賜物です。その評価こそが,大学教授や授業の評価に繋がり,充実した教育を支えた研究研鑽の評価にも関連してきます。(2008年鳥飼行博記述のまま、変更・追加・削除なしに掲載)


丸川珠代環境相 第3次安倍改造内閣が発足 就任会見(2015/10/07)
「安倍晋三首相は7日、内閣を改造し、皇居での閣僚認証式を経て第3次安倍改造内閣が発足した。改造人事では19人の閣僚のうち10人を交代させ、女性は1減の3人になった。初入閣は9人。丸川環境相は、東京電力福島第1原発事故や地球温暖化問題など山積する課題に「全力で取り組む」と意気込んだ」KyodoNews


スマートシティの鳥飼行博研究室や電脳掲示板(?)ブログ掲示もご覧ください。

「環境政策I」講義コンテンツ

Environmental Cooperation



鳥飼行博研究室の左バナー・ボタン「研究業績」には、授業の課題となるレポートを作成するための資料がありますので、まず読んで、それから短冊レポート作成に進んでください。

   鳥飼行博研究室の左側にある研究業績の中ほど「紀要論文」にリンクがはってある下記指定の「紀要論文」を読んで、レポートを作成しなさい。
鳥飼行博(2018)「バイオマスエネルギーの人間開発論 : フィリピンを事例としたローカルコモンズの意義」Biomass Energy in Human Economies
『東海大学紀要. 教養学部』Journal of the School of Humanities and Culture, Tokai University 第 48週, pp.171-231, 2018-03-30 [本文を見る]でダウンロード
 
環境白書では、次世代の人々のためにも、地球温暖化対策を一層強化し、生物多様性の保全、廃棄物の発生抑制など課題に取り組むとして、「人類生存の基盤」地球環境の保全を念頭に、持続可能な開発を目指す「グリーン経済」を推進するとした。東日本大震災への対応を「グリーン復興」とも呼んでいる。このような「グリーン」の使い方は、植物や森林あるいは自然のみどりの意味であり、エネルギーでは石炭・石油のような枯渇性エネルギーでなく、再生可能エネルギーのことである。特に、植物や森林あるいは自然のみどりを中心と考えれば、「グリーン・エネルギー」と命名することもできる。
 
太陽光、風力など自然エネルギーは「グリーン・エネルギー」に含まれないとすれば、「グリーン・エネルギー」の中核は、バイオマス・エネルギーである。拙著でも明らかにしているように、現在世界の再生可能エネルギーの7 割近くは、グリーン・エネルギーであるが、行政も御用学者も世界の再生可能エネルギーに関心がないのか、情報と知識の不足が露呈しているのか、グレーン・エネルギーというより、「クリーン・エネルギー」という造語を使っている。これに対比されるのが、エネルギー形態を三分類して、液体=LNG、固体=石炭、液体=石油、という認識の中でうまれた「従来型のエネルギー」という表現である。
 
再生可能エネルギーについての発想を「コペルニクス的に転回する」とは大げさだが、「コロンブスの卵」という格言に従えば、世界の再生可能エネルギーの大半は、森林・里山・みどりがもたらす「グリーン・エネルギー」であり、人類が太古から利用してきた「伝統的エネルギー」である。
 

 『環境白書』巻頭、環境大臣が示した「グリーン経済」は、決まりきった概念のようにみえるが、「みどり」が意味する「伝統的エネルギー」や木質バイオマスについて思いが至っていない。白書では、生物多様性、森林の保全を述べていても、エネルギーと無関係な課題であるかのように感じてしまう。「グリーン経済」の意味が問われるところであろう。
グローバルとローカルの双方の視点にあって、大切なことは、木質バイオマスを中心とした森林・里山の再生可能エネルギー供給源としても重要性を再認識することである。そして、それを供給してきたローカルコモンズとしての里井、山林、森林を「グリーン経済」の枠組みで正当に評価することである。

基本的な問題は、森林・里山と文明の関係がどのようなものだったのかを理解しないと、世界の森林保全を論じることも、再生可能エネルギーを推進することもできないということであろう。ガス、電気、石炭、石油など新たに利用が始まり、その後大幅に消費が増えた化石燃料、枯渇性エネルギーの課題は、グリーン・エネルギーとの対比で明瞭になる。野生生物種の保護や余暇レジャー・余暇を過ごす観光資源として森林を扱うだけではなく、バイオマスを育む森林を見直してみることが批判的検討として有益である。

『環境白書』は、巻頭の環境大臣のことばの中でも、地球温暖化対策を強化し,生物多様性の保全、廃棄物の発生抑制にも取り組むとして、「地球環境は人類生存の基盤となるもの」との歴史的・文明論的認識を示している。「環境保全と経済活動とを融合させる」「持続可能な環境と経済発展の同時達成を目指す」といことが「グリーン経済を推進すること」になり、問題解決に繋がると主張している。しかし、環境白書の言うグリーン経済とは、文明創造の中で果たしてきた伝統的エネルギーの重要性、その供給源としての森林・里山・木質バイオマスの意義について理解がない。森林は、みどりにして、同時に「人類生存の基盤となる」エネルギーを供給してきた「グリーン経済」の基盤といえる。

「環境政策I」レポート課題サンプル

Report writing



5月中旬以降、テキスト入手可能になりますから「環境政策I/II」授業の短冊レポートの作成には、教科書拙著『開発と環境の経済学―人間開発論の視点から』東海大学出版部を入手していることが前提です。教科書ページを指定したレポートも課します。受講にテキスト必須です。入手しないと講義は理解できません。

この講義コンテンツを全て閲覧し、manabaレポートで開示される課題で短冊(レポート)を作成し、manaba経由で提出してください。

1)レポートは、ワード作成、添付ファイルでmanabaレポート提出機能で送信。
2)文字数は、1200文字以上3000文字以下。他サイトの引用は不可。
3)レポート本文には,ふさわしい題名,学番,学生氏名を明記。
4)レポート提出題名の欄(件名)には「bio 」に続け学番、学生氏名を明記。
  例「bio 12B1100099C 鈴木太郎」
条件を満たさないレポートは、未整理となるので採点できません。 誤送信、添付忘れ、誤字・脱字などあっても、1回だけの提出で、出し直しはできません。 不備な場合は、書き直し・再提出をしてもらうかもしれません。

<短冊レポート課題>
manabaのレポートを参照。

短冊課題サンプル
みどりが人類の進化や文明の創造に果たしてきた役割を説明し、バイオマス文明の視点から環境省のグリーン経済の認識を批判的に検討しなさい。そして、「みどり」の「グリーン経済」をどのように理解すべきかを述べなさい。

東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程

TorikaiLab, Tokai University

大学での講義「環境政策I」「環境政策II」「開発経済学」「環境協力論」は、持続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、分析する授業です。俗説とは異なる議論も展開しています。

当研究室へのご訪問ありがとうございます。論文,データ,写真等を引用する際は,URLなど出所を記載してください。ご意見,ご質問をお寄せ下さる時には,ご氏名,ご所属,ご連絡先を明記してくださいますようお願い申し上げます。 連絡先: torikai@tokai-u.jp
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1 
東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程
鳥飼 行博 TORIKAI Yukihiro
HK,Toka University,4-1-1 Kitakaname,Hiratuka
Kanagawa,Japan259-1292
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